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勇者と魔王迷子になる

突然目の前が真っ暗になった事は覚えている。

おそらく魔王との戦いで互いの一撃がぶつかり合い意識を失ったのだろう。


でも目が覚めたら太陽が昇っているというのはどういう事だろうか…

起き上がって辺りを見てみると木々で覆われているおり、地面の一部に綺麗な花が咲いており俺の頭には土の感触が残っている

昼寝から起きたような感覚だった。

多分森の中だろうと推測を立てた。


真っ先に思い浮かんだのは魔王の魔法だと疑った。


「とりあえず少し歩いてみるか…」

このままじっとしても仕方がないと森の中に入ら事にした。


空間に閉じ込められただのどこか果ての果てまで飛ばされたのだといろいろ考えながらゆっくりと歩いていった。

歩いて行くとまた花が咲いている場所に来た。


「もしかして迷ったのか?」

少し焦りを感じてると花の所に何か黒い何かがある事に気付いた

なんだろうと気になって近付いてみると黒い何かは倒れている人であると気づいた

「おい、大丈夫か!」

急いで駆け寄ると髪の長い黒髪の女性が仰向けで倒れていた。

目を瞑っていたが顔は綺麗に整っており美しいという言葉がぴったりと当てはまる。

それ故に気になったのは服装だ。

その服装は女性が着るには禍々しいものだった

「大丈夫か!しっかりしろ!」

女性の体を揺らしながら呼びかけると女性はゆっくりと目を開けた。

その目は真紅の目をしており思わず見惚れてしまった。

その瞬間強く突き飛ばされた。

「ぎゃあ!」

情けない声を上げる

突き飛ばされた事に少し腹が立ったが急に男が近寄ってきたらびっくりするだろうと納得した。

すると女性が声を発する

「己勇者め!寝込みを襲うとは卑怯なり!」

「待て待て!俺は助けようとしてだなー」

「勇者が魔王である私を助けるはずないだろう!」

この発言を聞いた瞬間頭が真っ白になった。

あまりの静けさに時が止まったのかと勘違いするほどだ。

勇者…魔王…ということわ…

「お前魔王か!!」

めちゃくちゃびっくりした。

「今頃気づいたのか間抜けめ!」

魔王がプルプルしながら返事を返す。

「いや女だと思わなかったからさぁ」

気づかないのも無理ないわ、あの時仮面してたし、声も何か低かったし、何より魔王のオーラを感じないものしかし…

「お前が魔王と言うならばここで決着をつけようか」

俺は剣を構える。魔王もそれに答えて

「その通りだ…行くぞ勇者よ!」

魔王が右手を前に出し空間から鎌を出す。

さっきの戦いの続きということか…

しかし空間から鎌を出した瞬間地面にドシンと落ちた。

魔王はそれを拾おうとするが持ち上がらない。

「おい何してんだ」

「うるさいわね!重くて持ち上がらないのよ!」

何かおかしいなと思いつつ様子をみると魔王は鎌を空間にしまった

諦めやがったなこいつ…

「武器なんか使うまでもないわ!これで倒してあげる!」

魔王の掌から魔力の塊を出しそれを俺に照準を合わせていく

「喰らえ!勇者!」

塊が俺に向かって放って来たが非常に遅く威力もない為簡単に弾き飛ばせた。

魔王の方を見てみると膝に手をついてゼェゼェ言っている。

嘘だろもうバテたの、魔王城での俺の絶望感を返せよ。いや返されても困るけど

何故か急に魔法の力が弱まっているがこれはチャンスには違いない。

「まだよ!まだ諦めないわ!私は魔王としての使命があるのよ!勇者何かに屈しないわ!」

この魔王の叫びに俺は思わず自分を重ねてしまった。

これまで人類のために戦い続けてきたからこそ、この叫びは嫌という程痛感してくる。

魔王にとって勇者とは自分達の平和を脅かす悪だということを理解した。

だからといって今までの行いが無かった事にはならない。

俺は葛藤を抱えたまま剣を収めた。

「なっ!?貴様!私を愚弄するか!」

魔王の怒りはもっともだ。今の俺の行いは戦うに値しないと言っているようなものだ

「ちげーよ、お前には転移魔法また使ってくれないと困るからだよ」

とは言いつつも実際の気持ちは半々といったところだ。どこかで魔王と話す必要があると直感した。ところが魔王は

「知らないわよ!アンタが使ったんじゃないの!?」

「え?」

「勇者の魔法か何か知らないけどこんな辺境に転移されて魔力が弱まって魔法が使えないからしてやられたって感じだわ」

「いや俺使ってないよ」

「は?」

これには勇者と魔王は困惑した。

要は二人とも迷子になったという事かな

二人はとりあえず状況を整理した。

「つまりね勇者」

「はい」

「私達がこう…お互いの一撃がぶつかったわけでー」

「うんうん」

「次元の裂け目みたいなのができてその中に入ってー」

「ほー」

「私達はどっかの地に飛ばされたという事ね」

「なるほどー」

と相槌を打ちながら聞いていたが一つの疑問が浮かぶ。

「それなら何でお前の魔力が無くなってるんだ」

「そこなのよねー」

魔力というのは特殊な訓練を積むと自身の血液みたいに流れ出す、それを体内留めたり体外に放出したりする事を魔法という。また魔力、魔法は地の利の影響も大きい。例えば水の多い場所で水系統の魔法を使うと効果が大きい。湿度や温度、その土地の環境によって魔力、魔法が使えないという事もある。

「言っておくけど勇者アンタもほとんど魔力を感じないからね」

「えっまじで!」

「試しに何かやってみたら」

魔王に言われた通りに魔法を出してみる勇者

「でぇい!」

思い切りやってみたが全然出ない。

「あっはっはっは!ちょーおもろいんですけどーそれも私に言われるまで気づかないってやっぱ間抜けよねー」

魔王が高笑いしながら罵倒してくる。

いいもん、俺はこれまでの培ってきた剣術とか経験値あるもん

「つーかここどこだよ」

話を切り替えるようになってしまったが重要な事だ。

魔法が使えないこの辺境の地を離れなきゃならない。

「知らないわよ、とりあえずこの森から出ないとね」魔王の言葉に「そうだな」と返す。

森を抜ければここがどこだか少しはわかるかもしれない

「とりあえずこっちの方向に行ってみるか」

「はぁ!?何で勇者と一緒に行かないと行けないのよ!」

「いや勇者としては魔王を放置するわけにはいかないし…」

「ならアンタが私についてくればいいじゃない」

というやりとりを繰り返しながら森を抜ける事にした勇者と魔王


しぶしぶ魔王についていく事にした俺だが意外にも魔王が森の道に慣れている事に気付いた。

「意外に歩き慣れているんだな」

「詮索のつもり?」

「別に…ただ気になっただけだ」

別に答えなくてもいいと言ったが魔王は喋ってくれた

「昔は山に暮らしていた事があってね、けもの道は毎日のように通っていたから」

「本当に意外だな。てっきり魔王城に最初から住んでいるもんだと思ってた」

「違うわよ。魔王というのはあくまでただの称号よ、魔王軍の中から優秀な者を魔王となるの…いろいろな種族がいるから大変なのよね」

いろいろな種族とは人間以外、いわゆる亜人種を指している。

その亜人種の連合隊を人々は魔王軍と呼んでいた。

「今度はアタシが質問する番ね。そうね…アンタは何で勇者になったの?」

「勇者もただの称号だよ。どれだけの功績を挙げたとかそういうの」

「アタシ達の仲間を殺して得た称号ってことね」

「お前も似たような者だろう」

先ほどまでの空気とは一変して、すぐに険悪な雰囲気になった。

だが少しの睨み合いが終わった後に魔王が

「今言うことじゃなかったわね」

ごめんと一言謝って来た。驚きが顔に出ていたのか何よと魔王が聞いてきた

「魔王が謝るのは意外だった」

魔王は少し照れてフンっと前を向いた。

それよりも俺はどうしても聞きたい事があるので聞いてみた。

「お前さ、魔王城と口調変わってない?」

そっちが素なの?っと聞いてみると

また魔王が照れた様子で

「そうよ」っと答えた。

「アタシ魔王らしくしないといけないなぁと思ってさ、口調を変えたり、声を低くしたりしてね!仮面を外すなんてもってのほかだわ!」

あまりにかわいい理由だったので少し笑いそうになった。

「威厳って大事やん」

我慢できなかった。思いっきり吹き出してしまった。

「人が真剣に話してるのに笑うってアンタどういう教育してるのよ」

「いやいや!あの魔王様がそんな事に悩んでるってまあ爆笑もんだろ!」

「そんな事って何よーーー!!」

「あ、あそこから出れるんじゃないか」

木々の途切れが見えたので俺たちは急いでそこに向かった。

森を抜けた先は見渡す限りの草原で辺りには何もない。

俺達は一つの不安がよぎる

「「帰れるかなぁ」」

勇者と魔王は迷子になった


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