表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勘違い~Another~

作者: 瑞穂

 小さい頃から自分が周りの皆と違うってことは分かっていた。保育園で同い年の子達がテレビに出てくるヒーローや、アニメのキャラクターの話で盛り上がっていても、僕は輪の中に入れなかった。興味が無いとかじゃないんだ。ただそこで輪の中に入っても一緒になって盛り上がることができないということを知っていたから、僕は眺めることしかできなかった。

 ずれていたんだ。皆が好きなのは活躍するヒーローや、強いキャラクターだけど、僕が見ていたのはヒーローがやられる姿や、強キャラに倒される雑魚キャラだったんだ。色々なやられ方をする彼等に、僕は想像を膨らませていた。

 小学校に上がると、ただひたすらに教師を観察した。行動や発言が気になっていたわけではないんだけど、毎日観ているとその人の性格がだんだんと分かってきて、色々なパターンでその人が迎える「最期」を想像するのが、僕には何よりも時間を短く感じさせた。

 中学生になると、映画やアニメを見るようになったけど、その理由は当時周りにいた人が全員、僕の中で「最期」を迎えてしまったからというだけであって、創り物であるそれらは正直物足りなく、何を見てもつまらなかった。

 高校に入ると、よくヘッドフォンを持って近所で有名な自殺スポットに出掛けた。そこで陽気な音楽を聴きながらただただ時が過ぎるのを待つのは、人道に反しているようで案外悪くなかったけど、自分がいるせいで帰っていく人が居るのを知った時からは、そこがギリギリ見えるくらいのところから人が空に身を放り投げるのを眺めていた。人生で一番生き生きしていたと思うよ。


 そんなある日、僕はスポットからの帰り道に、後ろから頭を強く殴られた。気がついた頃にはこの何もない部屋にいたわけなんだけど、その後に覆面を被った人物が行った説明を聞いて、今日という日の幸せさを感じた。

 簡単にいうと、この部屋で「生き残り戦」をやるらしい。しかも人を減らすのは参加者が行えるという。僕の胸は高鳴った。でもその高鳴りは、「人を殺せる」という興奮からのものではないとすぐに分かった。僕は、「夢が叶う」ということからくるある種の恐怖から、心拍数を上げていたのだ。

 夢が叶うことの何が恐怖か分からない人もいるかもしれないけど、一つのことに夢中になってきた人からしたら、それが叶うことによって失われる目標と、その先にある空白を考えると怖いってものだよ。


「私、臆病だから目の前で人が死ぬのに耐えられないと思うんだよね。だから犠牲を出すんだったら、私からにしてくれないかな。」

 恐怖と興奮が落ち着き、心身の疲労から部屋の隅で俯いていた僕が「生き残り戦」が始まっていることに気づいた頃、ちょうど一人の女子高生がそう言った。

 そうか、彼女は今死にたいのか。

 そう思った瞬間、疲労を忘れたかのように勢いよく動き出した僕は、床に落ちていたナイフを拾って彼女の首元まで持っていった。一瞬、彼女と目があった。だが、僕の腕は止まらなかった。初めての感触とともに、目の前が赤く染まった。

 しばらくして、覆面の人物が、動かなくなった女子高生と血濡れたナイフを回収していった。僕はそれを眺めながら、快楽に溺れていた。


 それからも僕は、投票で犠牲者が決まる度に、目の前に赤い噴水をつくりだし水を浴びた。でもそれが五回目を超えた辺りからは、胸の高鳴りを感じなくなっていた。というか、正直に言うと初めの一回以外は、快感というほどでもなかったんだ。そう、あの一回だけが特別だったんだ。


 ふと、女子高生の目を思い出した。僕に殺された人達が皆、死ぬ間際は恐怖に怯えた目をしていたにもかかわらず、彼女の目だけはまっすぐに僕を見ていた。その目が、僕には美しく感じた。その瞳が、僕は恋しく感じた。まったく呆れるよ。まさか自分で殺した女の子に、人生で初めての恋をするなんて。


 僕は、この部屋で沢山の人を殺してきた。意地が悪そうな壮年の男性から、僕より少し年上の金髪大学生まで、犠牲者の容姿や性格はバラバラだったけど、その殆どが絶望の色を浮かべ最期を遂げていった。

 気がつくとこの部屋には僕を含めて二人だけになっていた。早いものだ。このどちらかが死ねば、もう片方は解放となる。

 もう一人の「生き残り」が、緊張と恐怖で濁った目を僕の方に向けていた。当たり前だ。目の前にいるのは、この場で人を殺し続けてきた殺人鬼なのだから。でも、安心してよ。夢を失った僕は、新たな夢を見つけたんだ。

 この場で絶望せずに死ぬのはこれで二人目になるな。恋というのは本当に面白いよ。今までは何とも思わなかった「二人だけ」という響きが堪らなく嬉しく感じるんだ。例えそれが、どんなことだったとしても。

「どうか、ご幸せに。」

 それだけ言うと、僕は自分の首にナイフを突きつけた。自分が最初に殺したのは一人の女子高生で、自分が最後に殺すことになるのはその彼女を愛した男。それだけでいい。目の前が今度は自分の血で赤く染まると考えると、胸が忘れていた高鳴りを思い出した。そしてその高鳴りが頂点に達した時、僕はゆっくりと自分の腕を動かした。そう、僕が新しく見つけた夢というのは、愛する人が死んだ今、その人ともう一度会うために自分も死ぬこと。そして死んだ先で、彼女を永遠と、






彼女を永遠と、殺し続けるんだ。

最近、よくサイコパスと言われて否定しつつも喜んでいたり、サイコパスぶっていたりする人が居ると思うんですけど、そういう人達って本質的に人として普通の人より劣っていると思うんですよね。まあ恐らくは、漫画やアニメの影響で中二病の延長線みたいなものだと思うので、そんなに気にする必要もないと思いますが、不快に思われるのは間違いないので、もしこの文を読んで下さっている人の中で該当する人がいたとしたら今すぐにでもその行動は辞めることをおすすめします。因みに、上記で、「頭がおかしい」ではなく、「人より劣っている」と書いた理由としては、前者で書くと、人と違うという優越感に浸る人が中二病の方には少なくないかなと思ったので書き方を変えさせていただきました。とまあ一部の人の話は置いておいて、今回は既作である「勘違い」の別視点物語として著させていただきました。主人公の男子高生の夢は、この先どうなっていってしまうんでしょうかね。何はともあれ二人は死んでしまいましたが、何かしらハッピーエンドチックな結末が続いているといいですね。今作も少しでも楽しんで読んでいただけたのなら光栄に思います。では。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ