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アカムとうり 悪の魔王ともうすぐ死ぬ子  作者: 佐藤いふみ
第5章 アカムとうり 1節 最後の戦い
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 東京の夜空を白い影が舞う。人か、否、人にしては手足が長すぎるし、それらは鞭のように柔らかくしなっている。長い手足を使って高層ビルを避けたり、逆に利用して加速しては夜空を急ぐ。


「やっぱり、あんたは残っているべきじゃんね」と、白い影が言った。相手は胸に抱えた黒革の繋ぎを着た女だ。


「インチュアン〈銀川〉が呼んでる」


 女の声は弱々しく、消え入りそうだ。


「呼んでるのは、インチュアンじゃないさ」


 世界に誇るメガシティ東京の夜景。右前方に、ぽっかりとあいた穴は六本木だ。六本木ヒルズ周辺が広範囲に壊滅して、街の灯が極端に少ない。世間では赤鉄アカムの仕業とされているが、このふたりは真相を知っている。


 その暗がりの向こうで光が閃く。遅れて、爆風と地を揺るがす轟音がやってくる。衝撃波が首都高速2号線を歪め、恵比寿のウェスティンホテルの一部を破壊する。風と砂塵は、ふたりの前方数メートルで左右に分かれた。


「はじまったじゃんね」と、白い影が言った。


「目的を確認したい」


「ラオオーメイ〈老峨眉〉の殺害と、広成子丹の奪取もしくは解放、でいいじゃんね」


「赤鉄アカムも殺す」


「結果的に、そうなるかもね。でも、まずは様子を見て共倒れを待つじゃんね。先走るのは駄目。それが連れて行く条件だよ」


 白い影の胸で小さな坊主頭がうなずく。額に三角の形が見える。


「排毒は、できるんだね」


 もう一度、三角が頷いた。


「あたしには方術は使えないからさ。魔法円で補強することは、できると思う。動きを封じられればだけどね。うまくやるじゃんね」


 目前に高層ビルが迫る。鏡面になった一面の窓ガラスに、夜景を背負って飛ぶ、ふたりが映る。


 白い影・カラマは思った。


(この娘は、だいぶ消耗してる。難しいかもしれない。けれど、この娘の命は、この娘のものじゃんね)


 カラマは笑みを漏らし、触腕を伸ばしてビルの角に引っ掛けて大きくしならせた。額に三角を持つ黒い革繋ぎの女・スイ〈錘〉は、触手に包まれてカラマに身を任せている。


 前方、白金辺りで、また爆発が起こった。五反田近辺まで数キロにわたって街が破壊され、瓦礫が飛び散る。あちこちで、かなりの炎が上がっている。ふたりは高層ビルを巻いてスピードを上げ、爆心地へ向かった。

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