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「なめんなぁ!」
その瞬間、うりの前にアカムが立ちふさがった。見えない壁に阻まれて、銃弾がオレンジの火花となって飛び散る。
「お前らは、いつもいつも――」
アカムは奥歯を、ぎりりと噛んだ。
「人を過小評価しすぎなんだよ!」
アカムの後頭部が閃光を放つ。うりは光の中に赤子の姿を見た。
戦闘ヘリコプターがミサイルを発射した。
真っ白な光がミサイルを飲み込むや、砂塵が、ぐん、と外側へ
押し広がって、見えない壁の境界が、うりにもはっきりと見えた。
見えない壁は、帝國ホテルタワーを破壊しながら膨れて、戦闘ヘリコプターを飲み込んだ。発射音も、ローター音も、ホテルが崩れる音も、なにもかもが消えた。
◆◆◆
激しく動揺するAH-1Sコブラのコクピットで、新野は自分の推測が外れたことを知った。赤鉄アカムのバリアー能力に制限などなかったのだ。
新野が最後に感じたのは単純な疑問だった。
(ならばなぜ、赤鉄アカムは限定的にしか能力を使っていなかったのか。はじめから、守るべき全てを包んでバリアーを張ればいいではないか)
AH-1Sコブラは、数十メートル押し出されて爆発四散した。新野勝巳は、それ以上考察する間もなく、東京上空で焼け死んだ。
◆◆◆
うりは足もとを見た。どのくらいの高さだろうか――ふたりは、かなり高いビルを下に見る高度にいた。真下に真黒な穴があって、所々で赤や青の炎が上がっている。かつて銀座の街だった場所だ。
うりは、アカムの右腕に抱かれていた。
「……やっちまった……銀座……壊して……うまく……いかなかった……」
アカムの首が、がくりと落ちた。
「――アカム!? 落ちてるよ! アカム!」
うりが頬を叩いても、効果が無い。
空を飛ぶ力を失って、ふたりの体が落下をはじめる。アカムの腕がゆるみ、体が離れそうになる。うりは、アカムの体をしっかり抱きしめた。
重い頭が重力に引かれて下を向く。耳元で、ひょうひょうと風が鳴り、黒い地面が、みるみる近づいてくる。
「アカム!」
ふたりは、もはや照らすもののない闇の中を奈落へと落ちていった。




