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アカムとうり 悪の魔王ともうすぐ死ぬ子  作者: 佐藤いふみ
第2章 悪の魔王 1節 峨眉山の戦い
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「仙息が乱れているぞ」


 ハンオウ〈韓応〉は遠話で年少の黒衣ヘイイーに話しかけた。年少の黒衣ヘイイーが驚いて身をふるわせる。やはり、目の前で展開する光景に心をうばわれて集中を欠いていたようだ。


師兄シシォン(兄弟子)、あれはなんですか?」


 年少の黒衣ヘイイーが遠話をかえした。


 ジンイエ〈金夜〉の後頭部が七色の光を発している。まるで虹の円盤だ。


「普通の背光とはちがう。頂門開ちょうもんかいだ。蓮花座れんかざが開くぞ」


「教えていただいてません」


陽神ようしんを呼ぶ準備だ。大規模な方術のための魂の座だよ。体の外で陽気を大きくするんだ。内側でやったら、体が耐えられないからな」


 円盤のかがやきが、中心に向かってねじれながら収束をはじめる。やがて、ハンオウの言葉通り、頭頂付近にかがやく蓮の花があらわれた。美しく瑞々しい光の花。切なさすら感じさせる、その繊細な造形――年少の黒衣ヘイイーは言葉を失っている。


「あれが蓮花座だ。これほど鮮明に描くとは、さすがは花皇。よく見ておけよ。この先は俺もめったに見ない」


 ハンオウの解説が年少の黒衣ヘイイーにとどいたかどうか。


 蕾がひらいて、なにか光るもの――小さな人型があらわれた。赤子だった。


 挿絵(By みてみん)


「陽神だ――巨大な方術がくるぞ。インチュアン〈銀川〉め、最後まで見ているつもりか!?」


 ハンオウは年少の黒衣ヘイイーのすぐ後ろまで来た。


「神……なのか?」


 年少の黒衣ヘイイーが声を出した。


「なにを言っている? ただの陽気のかたまりだ」


 そう遠話を送り、ハンオウは失策に気付いた。これほど影響を受けるとは思わなかった。この任務に連れて来るのは、まだ早かったのだ。


「スイル、もどれ!」


 ハンオウは危険をおかして声を出した。肩をつかんで体をゆする。年少の黒衣ヘイイーは完全に気をうばわれて恍惚状態だ。


「もう見るな!」


 ジンイエが頭頂部に赤子を保持したまま、一歩また一歩と歩をすすめる。赤子は目をとじ、両手をにぎりしめて眠っている。

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