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「仙息が乱れているぞ」
ハンオウ〈韓応〉は遠話で年少の黒衣に話しかけた。年少の黒衣が驚いて身をふるわせる。やはり、目の前で展開する光景に心をうばわれて集中を欠いていたようだ。
「師兄(兄弟子)、あれはなんですか?」
年少の黒衣が遠話をかえした。
ジンイエ〈金夜〉の後頭部が七色の光を発している。まるで虹の円盤だ。
「普通の背光とはちがう。頂門開だ。蓮花座が開くぞ」
「教えていただいてません」
「陽神を呼ぶ準備だ。大規模な方術のための魂の座だよ。体の外で陽気を大きくするんだ。内側でやったら、体が耐えられないからな」
円盤のかがやきが、中心に向かってねじれながら収束をはじめる。やがて、ハンオウの言葉通り、頭頂付近にかがやく蓮の花があらわれた。美しく瑞々しい光の花。切なさすら感じさせる、その繊細な造形――年少の黒衣は言葉を失っている。
「あれが蓮花座だ。これほど鮮明に描くとは、さすがは花皇。よく見ておけよ。この先は俺もめったに見ない」
ハンオウの解説が年少の黒衣にとどいたかどうか。
蕾がひらいて、なにか光るもの――小さな人型があらわれた。赤子だった。
「陽神だ――巨大な方術がくるぞ。インチュアン〈銀川〉め、最後まで見ているつもりか!?」
ハンオウは年少の黒衣のすぐ後ろまで来た。
「神……なのか?」
年少の黒衣が声を出した。
「なにを言っている? ただの陽気のかたまりだ」
そう遠話を送り、ハンオウは失策に気付いた。これほど影響を受けるとは思わなかった。この任務に連れて来るのは、まだ早かったのだ。
「スイル、もどれ!」
ハンオウは危険をおかして声を出した。肩をつかんで体をゆする。年少の黒衣は完全に気をうばわれて恍惚状態だ。
「もう見るな!」
ジンイエが頭頂部に赤子を保持したまま、一歩また一歩と歩をすすめる。赤子は目をとじ、両手をにぎりしめて眠っている。




