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アカムとうり 悪の魔王ともうすぐ死ぬ子  作者: 佐藤いふみ
         4節 うりの冒険
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 時間はもどって、同じ日の午前9時半。赤鉄アカムは、蜂蜜と生姜を入れたホットミルクを飲みながら、新人アナウンサーの胸をさわっていた。上智大学の美人コンテストで優勝し、CXTVに入社したばかりの才媛だ。


 キングサイズのベッドには、ほかに2人、ティーンズ雑誌の読者モデルからトップに駆けあがった20代人気モデルと、いま最も人気のあるアイドルグループの中心メンバーが裸で眠っている。


 アカムは、それぞれに美しい3人の肢体を眺めて満足感にひたった。金か、権力か、美を持っている男にしか味わえない、この優越感――。


 TVやネットで、美女と浮き名を流す俳優や芸人のゴシップや、枕営業の噂を目にするたびに、胸を掻きむしりたいほどの嫉妬にかられてきた。自分には絶対に手の届かない世界を見せつけてくる奴らを、苦しめ、壊してしまいたかった。


(最高だ。金や権力があっても幸せにはなれない、とかいうけど、嘘っぱちじゃないか)


 女の体ってのは、どうしてこうも綺麗なんだろう。と、しみじみ思う。


(背が高くても低くても、スレンダーでもグラマーでも、それぞれに美しい。その美しい女体の中でも、日本中の男たちが憧れている体を好きにした。まかり間違って恋愛できたとしても、いちどに3人はあり得ない。遊びでするのは、楽しいなあ。ずっと昔から、力のある男は、こうして遊んでたんだな)


 飲み終えたカップをサイドテーブルに置き、背中側から腕をまわして新人アナウンサーを抱きおこす。むにゃむにゃとむずがるのを強引に立たせてシャワールームに向かう。


 30分後、タオルで頭を拭きながら、裸のアカムがベッドルームにもどってきた。シャワールームで騒いだせいか、モデルとアイドルが目を覚ましている。


 アイドルを手で呼び、腰を抱く。モデルも呼び寄せて、キスをする。このモデルとはキスの相性が合う。そのまま、2人と遊んだ。


 終わった頃、新人アナウンサーがシャワーからもどってきた。アイドルとモデルが入れかわりでシャワーを浴びにいく。


 そのあいだに、ルームサービスで朝食をたのんだ。全員が揃い、朝食がくると、アカムだけガウンを着て、女は裸のままで食べた。


 帰り際、3人は笑顔だった。それなりの額の小切手を渡したせいだろう。だれも抵抗しなかったので、穏便な一夜になった。


 アカムの部屋にやってくる女が、いつも従順というわけではない。一昨日きた女優は、物を投げ、叫び、さんざん刃向かってきた。わめきちらすのを押さえつけて、めちゃくちゃにするのも、それはそれで楽しかった。


 3人を送りだすと、さっそく、アカムはつぎを考えだした。ハーフタレントにしようか、それとも、美人声優のかわいい声で鳴かせようか。10代のころにあこがれた芸能人を服従させるのもいい。相手に恋人がいようが、旦那がいようが、関係ない。だれになにをしても、だれもアカムを止められないのだから。


 アカムは、大きくのびをして窓際に向かった。水差しから水をついで飲み、一面のガラス窓から外をながめる。


 青空のもと、東京は、いつも通りの昼時を迎えようとしていた。建ちならぶビル群が人跡未踏の岩山のようにも、林立する蟻塚のようにも見える。


(東京だって、アマゾンの森林地帯と同じだ)


 人間も大きな目で見れば自然の一部なのだから、人間の作ったものも自然の一部で、つまり、この景色だって自然だろう。


「……くだらね」


 アカムは自分の思いつきを鼻で笑った。


(――なんだ?)


 何気なく視線を足もとにむけると、なにやら白いもやのようなものが見えた。帝國ホテルの正面玄関あたりだ。煙の中で、ときおり、ちいさな光がひらめく。黒く見える人の頭が、いつになく活発に動き回っていた。白いバンの前でバンドが演奏しているようだが、彼らが騒ぎを起こしているのだろうか。


 普段は、機動隊と自衛隊がつくる警戒線があって、その線に張りつくように報道陣や野次馬が並んでいる。上から見ると、わりと整然としているのだが、今日はずいぶんと騒がしい。


 アカムはひやかしに外に出ることにした。服を着るためにウォークインクローゼットに入る。広すぎるクローゼットには、つい最近、代官山で買い揃えた服がならんでいた。ジーンズとロングTシャツと薄いデニム地のシャツを選ぶ。


 ふたたび地上を見下ろすと、すぐ足もとで、女の子が機動隊員にリンチされていた。


 アカムは屋上に出て、直接、地上に降りた。

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