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アカムとうり 悪の魔王ともうすぐ死ぬ子  作者: 佐藤いふみ
         3節 名古屋TV塔の戦い
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 妻の両親には連絡がついて、無事が確認できた。


 吉田はすぐに家を出て、1時間後の20時半すぎには、品川駅へ向かうワンボックスカーの中にいた。


 隣にディレクター、その隣に音声担当、助手席にカメラマン。運転はカメラアシスタントだ。赤鉄アカムを取材したメンバーだった。


「20時47分。それが駄目なら57分の、のぞみで行こう」


 ディレクターが携帯端末を見ながら言った。


「チケットは取れるの?」と、吉田が訊いた。


「もう両方押さえました」


 運転席からカメラアシスタントが答えた。


「しかし、よく集まりましたよね、俺ら」と、カメラマン。


 吉田が局につくと、ほかの4人が機材を準備している最中だった。ディレクターは、そのとき、いままさに吉田に電話しようとしていた。


「だれも集合をかけてないからね」と、ディレクターが言った。


「偶然じゃあない」


 吉田の言葉に、4人はうなずいた。


 吉田は、さびしそうな娘の顔を頭からふりはらった。


(ごめんよ。パパは、どうしても自分で確かめたいんだ)


 事情を話すと、妻は呆れ顔でおにぎりを握ってくれた。仕事に対する吉田の思いを理解してくれる妻に、吉田はいつも感謝している。


(そういえば、最近、家族サービスをしてないな。帰ったら遊園地にでも連れて行こう)


 吉田の胸ポケットの携帯端末がふるえた。電話にでた吉田は、話しながら、なんども自分の顔を撫でた。




 5分後、車は五反田をすぎてソニー通りを南下していた。


「止めてくれ」


 運転席と助手席のあいだに身を乗り出して、吉田が言った。


「はい?」


 カメラアシスタントが頓狂な声を上げる。


「すまんが、急用ができた」


「なに言ってんの、吉田ちゃん!?」


 ディレクターが眉を、ぎゅっとよせて言った。


「うしろを開けてくれ。荷物を取る」


 淡々という吉田の顔色を見て、ディレクターは路肩に車を寄せるように、カメラアシスタントにいった。


「さっきの電話?」


 ディレクターの問いかけには答えず、吉田は車からおりた。ディレクターも車から出てついてくる。


「すまん、言えないんだ」


「言えないじゃ、納得できないよ」


 バックドアを跳ね上げる。荷台には、中継に必要な機材がひと通りそろっている。機材は、揺れてぶつかったり、倒れたりしないように、ゴムバンドで固定されている。


「電話、だれからだったの?」


 ディレクターが訊いた。


「機材を動かしたいから、手伝ってくれ」


 吉田が車中に声をかけると、カメラマンとカメラアシスタントがおりてきた。音声担当もつづく。


「吉田ちゃん!」


 ディレクターが大きな声を出す。


「わかったよ。説明するから、待っててくれ。手帳を取ってくる」


 吉田は4人の眼を順番に見ながら言って、車中にもどった。


 直後、吉田を待つクルーたちの目の前で、バックドアを開けたまま、ワンボックスカーが走り出した。



   ◆◆◆



 ディレクターが携帯端末でタクシーを呼んで、4人は仕方なくTV局にもどった。


 あれから、吉田になんども電話したが、不在着信のアナウンスが流れるだけだった。


 上司に報告にいったディレクターを、カメラマンと音声担当とカメラアシスタントは、もう30分も待っている。


 カメラマンが最後の煙草を取り出したとき、ディレクターが帰ってきた。ディレクターは、つめよる3人を目で制してTVをつけた。3人は画面を見てすぐ、吉田の事情を察した。


 TVでは赤鉄アカムが、名古屋を攻撃したのは自分だ、と気だるそうに話していた。


「この画、流してるの、吉田ちゃんが持ってった機材だって」と、ディレクターが言った。

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