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「畜生……畜生……」
うりの頬に、アカムの涙が、ぽたぽたと垂れる。
「駄目だった……結局……なにもできなかった……」
部屋は闇に満たされ、アカムとうりだけが、ぼんやりと光っている。
アカムの右半身が、めきめきと音を立てて、狂った変貌を繰り返す。人の姿を留める左半身まで侵されていく。
――うりを守って。
庭で聞いた声がした。
「駄目だったんだよ……」
――うり…守って。
うりが、うっすらと目をひらく。
「うり、聞こえるか。うり!?」
反応がない。瞳に生気はなく、ガラス玉のようだ。
アカムは必死に言った。
「あなたが好きです。愛してます。会いに来てくれて、ありがとう。救われたんです。それで、できたら、俺と……」
うりの目が閉じた。いったん閉じてしまうと、最初から開いてなどいなかったかのようだ。
「うり?……ごめん、ごめんな……」
ふたたび、目がひらいた。アカムは鼻と鼻をつけて覗き込んだ。
――うり…………。
「……え?……それは、ないだろう? そんな……」
獣のように嗚咽する。
「だって、あんまりじゃないか。こんな……お前は……お前は……」
アカムは、うりの頬にそっと触れた。うりの上に倒れ込み、それきり、ふたりは動かなかった。




