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伝えたい夢

 スマホの目覚ましのアラームが鳴る。

 今は4月。

 まだ寒いけれど、必死にベッドから這い出る。

 

 目覚ましのアラームを止め、テレビのニュース番組を見ながら朝食を取る。

 その後、化粧や着替えをして、朝の支度を終えた。

 アパートの部屋を出る。


 部屋に鍵を掛ける。

 車にキーを差す。

 エンジンが掛かる。

 

 中古のあまり性能が良くない車だけれど、今はこれが相棒だ。

 エンジンがかかる音は好きだ。

 自分の中のスイッチを仕事モードに切り替えてくれる。

 サイドブレーキを解除し、ギアをドライブにし、駐車場から出る。

 そのまま道に出て、アクセルを踏み込む。


 足に力を入れるのと同時に、今日の分の気合も入れる。

 向かう場所は児童相談所。


 

 一日の仕事が終わる。

 今日は書類の作成と、家庭への立ち入り調査をした。

 帰り道、車を運転しながら、今日の仕事や現状について考える。

 

 私が児童相談所で働くことを夢見たあの頃と比較して、日本の虐待は減っていない。

 それどころか、増えている。


 その原因は、過疎化などによる地域との繋がりの減少、核家族化など様々で、単一の原因とは言えない。

 児童相談所では日々増える虐待に追われ、個々のケースに十分な対応が取れないでいた。

 本当はもっと一つ一つ丁寧に当たって行きたいが、緊急のケースが増えてきているのだ。

 

 児童相談所に勤めて、3年が経とうとしている。

 私はもう、新人とは言えない。

 私や職場の仲間たちのおかげで救えた命は多い。

 だけど、救えなかった命もある。

 

 初めて親に殺された子供を見た日は、帰った後涙が止まらなかった。

 自分の不甲斐なさ、救えなかった子供への申し訳なさ。

 様々な思いが交錯して、涙になった。

 死ぬまで行かなくても、殴られた衝撃で脳に重い障害を負った子供もいる。

 

 全ての子供を救えないことはわかっていた。

 それでも、救いたいと願った。

 そのために、大学では必死に勉強やバイトをしたし、今でも勉強している。

 だけど、足りない。

 私の力だけでは、多くを変えられない。

 私は自分の無力さに、悔しい思いを抱えていた。

 

 何か……何かないだろうか。

 現状を大きく変える、きっかけが。

 待っているだけではだめなのは、わかっている。

 でも、日々の仕事に追われ、大きな視点で見ることができてないように思う。



 家に帰ると、スマホに着信があった。

 恵理子先生からだ。

 仕事上必要なので、今はメッセージアプリも入れてある。

 アプリを起動する。

 

 施設に来て欲しいと、メッセージが来ていた。

 今からでは遅いので、次の休日に行きますと返した。

 明日も仕事だ。

 化粧を落とし、お風呂に入って夕食を取り、少しくつろいでからベッドに入る。

 明日の仕事の段取りをイメージしながら、眠りに落ちた。



 そして、次の休日。

 車で施設に行く。

 車窓からは懐かしい景色が見える。

 施設の駐車場には、知っている車があった。

 ちょうど、その車から一人の男が降りてくる。

 私も駐車して、車を降りる。


「タカ、久しぶり」

「真奈、久しぶりだな」


 私達は再会を喜ぶ。

 タカは自分の夢を叶え、小学校の教師になった。

 あれから、私達は同じ大学に進学したけれど、付き合う訳でもなく仲間という感覚が強かった。

 結局、付き合わずに卒業して、今はお互い仕事に没頭している。

 

 タカは日々の疲れからか、少しやつれている。

 積もる話もあるけれど、とりあえず施設内に入る。



「真奈さん!」


 中に入ると、早速駆け寄って来る女の子がいる。


「愛ちゃん、久しぶりだね」

「お久しぶりです、来てくれてありがとうございます」


 愛ちゃんは今や高校生だ。

 施設を出てからも、何度か愛ちゃんには会いに行ったけれど、働きだしてからはあまり時間が取れなかった。

 懸念されていた学習の遅れは克服し、今や優等生の位置にいるそうだ。


「今日はどうされたんですか?」

「うん、恵理子先生に呼ばれてね。それじゃあ、行ってくるね」


 私達は一旦愛ちゃんと別れ、職員室へ行く。

 職員室に入ると、恵理子先生が迎えてくれる。


「久しぶり、真奈ちゃん、孝幸君」

「お久しぶりです」


 2人で挨拶する。


「今日はね、これを渡したくて呼んだの」


 恵理子先生は手紙を私達に渡す。

 これは、そうだ。

 25歳の自分への手紙だ。


 17歳の自分から届いたメッセージは、頑張れ。


 うん、頑張っているよ。

 17歳の私、児童相談所で働くことができているよ。

 だけど、迷っているんだ。

 このまま、続けても虐待が減る気がしないんだ。

 私の力は私が思っているより、ずっと小さくて弱いんだ。

 

 どうすればいいんだろう。

 17歳の私に聞いても、答えは返って来ない。

 頑張るしかないんだ。



 私は愛ちゃんの部屋に行く。

 愛ちゃんの部屋には、愛ちゃんの他に2人の子供がいる。

 私達の時は、高校生は2人部屋だったけれど、増えたのだ。

 

 これも、虐待の件数が増えていることと、関りがあるのだろう。

 愛ちゃんと2人で話がしたいので、他の子には一旦部屋を出てもらった。

 ふと、愛ちゃんの机に目をやると、水族館や修学旅行で私が買ったお土産がまだあった。


「まだ、使ってくれているんだね。ありがとう。嬉しいよ」

「はい、大切にしています」


 愛ちゃんは以前にもまして可愛くなった。


「学校はどう? 彼氏とかいるの?」

「いや、それは……職員さんには内緒ですよ」


 愛ちゃんは恥ずかしそうに赤くなりながら、こっそり教えてくれた。


「いいね、そういうの。将来の夢とか決まっているの?」

「はい。私、児童養護施設で働きたいんです」


 そっか、形は違えど自分を同じような経験をした人を助けたいという思いは、みんな持つものなんだ。


「うん、頑張って。応援するから」

「ありがとうございます」


 成長した愛ちゃんの姿を見て、私がしたことは間違っていなかったと思った。


「真奈さんは児童相談所で働いているんですよね?」

「うん、そうだよ」

「大変ですか?」


 正直、大変だ。

 だけど、後悔はしていないし、投げ出したくなったことはない。

 自分で選んだし、間違っていないと思っているから。


「大変だよ。でも、やりがいはあるよ」

「大事ですよね、やりがいって」

「愛ちゃんも働きだしたらわかるよ。バイトはしている?」

「はい、しています」

「偉い偉い。ちゃんとお金貯めとくんだよ」


 それから、大学生活や一人暮らしするにあたってのアドバイスをした。

 愛ちゃんはメモを取りながら、真剣に聞いてくれた。


「ところで、京子さんとは連絡付つきました?」

「ううん、それが全然……」

「そうですか」


 大学2年の夏休み、京ちゃんと連絡が取れなくなった。

 私と麻紀とタカは急いで京ちゃんの家に行ったけれど、もぬけの殻だった。

 それ以来、様々な方法で探したけれど、未だに連絡すらつかない。


「無事でいてくれるといいんですけど」

「そうだね、うん」


 どこで何をしているんだろう。



 タカと共に施設を出る。


「これから、暇か?」

「うん、少しなら。午後は麻紀と会う約束があるの。後、北里さんとも。北里さんっていうのは、知り合いのケースワーカーさんだよ」

「そうか。じゃあ、昼飯一緒にどうだ?」

「うん、いいよ」


 タカの提案で一緒に昼食を取ることになった。

 車に乗り込み、施設を出た。



 近所のファミレスに入る。


「この前はありがとうな」

「うん、良かったよ。タカが早めに気付いてくれて」


 少し前、タカのクラスに被虐待児がいることにタカが気付き、各種機関などが素早く連携して、大事には至らなかった。

 私もこの件には関わっている。


「仕事、そっちも大変?」

「ああ、教師って思ってたより大変だ。だけど、頑張らないとな」


 心を病んで辞めてしまう教師も多いと聞く。

 同じ子供と関わる仕事である以上、無関係とは言えない。

 タカみたいな頑張り屋は、心を病みやすいのではないだろうか。


「ねえ、タカ。虐待をなくすのって、無理なのかな?」

「真奈、諦めたらだめだ。でも、確かに真奈個人の力だけじゃ難しいだろうな。もっと、大きな力が必要だろうな」

「政治家になって国や法律を変えるくらいのことをしないと、だめなのかな」


 現実的じゃない。

 それに、虐待をの罪を重くしたら、減るかもしれないけれどそれでいいのだろうか。

 余計、子育てが窮屈になったり、監視社会になったりしないだろうか。


「難しいけれど、何とかしたいよな」


 2人で考えたけれど、良い案は出なかった。


「タカ、両親は見つかった?」


 話題を変えることにした。


「いや、見つかっていないんだ。手は尽くしているんだけどな。何せ昔のことだ。恵理子先生とかにも協力してもらっているんだけどな」

「そっか……」

「やっぱり、会いたいよ。それで、ちゃんと夢を叶えて前を向いて生きているって伝えたいんだ。俺を捨てたのは事実だけれど、産んでくれたのも事実だしな」


 タカはちゃんと、大人になれた。

 親に復讐すると言って、自分を嫌っていたタカはもういない。

 注文した料理が運ばれてきたので、とりあえず食べることにした。

 外食は久しぶりだ。



 ファミレスを出る。


「じゃあ、真奈。また今度」

「うん、じゃあね。また」


 タカは自分の車で去って行った。

 私も車に乗り込み、麻紀の家に行く。



 麻紀は実家を出て、大学時代から付き合っている彼氏と同棲している。

 なので、実際には家ではなく、アパートだ。

 アパートの駐車場に車を停め、部屋の前まで行きインターホンを鳴らす。

 麻紀がドアを開けてくれた。


「真奈! 久しぶりだね」

「うん、久しぶり」


 早速部屋に上げてもらう。



 なかなか広い部屋だけれど、物が少し散乱している。

 麻紀と彼氏さんは、片付けるのが苦手なのだろう。


「彼氏さんは?」

「今、出掛けているよ。まあ、座ってよ」


 座布団に座る。

 そして、思い出話に花が咲く。


「で、真奈は孝幸君とどうなの?」

「別に何もないけど」

「ええ~」

「お互い、仕事が大事だからね」

「そんなんじゃ、あっという間におばあさんになっちゃうよ」

「そうかなあ……」


 確かに、この年で彼氏が一度もできたことがない、というのは世間的に見ておかしいのかもしれない。

 麻紀の言う通り、油断しているとあっという間に年を取ってしまうだろう。


 そして、私はセックスをしたくない。

 理由は虐待の傷跡を見られてしまうからだ。

 いつか、傷跡を見せることができる相手に出会えたら、幸せだと思う。

 そのためにも、今は仕事を頑張り、夢を叶える。


「私ね、真奈が羨ましかったんだ」


 ふと、麻紀がぽつりと言った。


「どういうこと?」

「孝之君と仲が良くて、羨ましかった。嫉妬していたんだ、本当は」


 なんと返事をしたらいいのだろうか。


「言ったかもしれないけれど、友達である真奈が大切だったし、それに初恋って実らないしね」

「初恋だったんだ……」

「うん」


 なんというか、悪いことをした気分だ。

 でも、今麻紀には彼氏がいるし、吹っ切れたのかな。


「私は友達って一生ものだと思っているし、真奈や京ちゃんもそう思ってくれていたら嬉しいな」

「うん、思っているよ」

「ありがとう」


 こういう話ができるのって、素敵だと思う。

 ふと、机のペン立てに目をやる。

 修学旅行で買ったシャーペンがあった。


「麻紀も使っているんだね、それ」

「真奈は?」

「私も、使っているよ。職場でね」


 お互い、自然と笑顔になる。

 たった一本のシャーペンだけれど、絆を感じた、

 そして、ここにはいないもう1人の大切な友達の顔が浮かぶ。


「ところで、真奈は京ちゃんから連絡あった?」

「ううん、ないよ」

「どこにいるんだろうね? 心配だよ……」


 麻紀はさっきまでの楽しい様子から一転、暗くなる。


「うん、根気よく探すしかないよ」


 京ちゃん、会いたいよ。



 今日の最後は、北里さんと会う約束がある。

 約束の時間の15分前に喫茶店に入り、待つ。

 読書をしていると、北里さんが店に入って来た。


「真奈ちゃん、お待たせ」

「お久しぶりです、北里さん」


 北里さんとは、働きだしてからも交流がある。

 仕事の相談に乗ってもらうことが度々あり、助けてもらっている。

 北里さんにはお世話になりっぱなしだ。


「それで、相談って?」

「最近、悩んでいるんです」


 私は今、仕事で悩んでいることを正直に話した。

 私の力不足で、救えない子供が多くいること。

 何か変わる方法が欲しいこと。


「そうね、私も悩んでいるの。真奈ちゃんと同じようにね。私の方が経験が長いから言わせてもらうけれど、真奈ちゃんはまだ、3年でしょ? もっと時間を掛けて経験を積むべきよ」

「でも、そうしている間にも、救えない命はどんどん増えていきます」

「それは、わかるわ。でも、焦りは禁物よ。真奈ちゃんには救えない命がある。でも、ちゃんと救える命もあるし、救ってきた命もあるってことを、忘れないで欲しいの。真奈ちゃんはよくやっているわ。すごいと思う。だから、今は目の前のことに全力で取り組むべきよ」

「はい……」


 今、自分が職場で抱えているケースを、疎かにしたいわけではない。

 疎かにするようなことは、絶対にしない。

 でも、やはり変わりたい。

 前へ進みたい。

 現状維持ではなく、向上。



 翌日。

 出勤すると、上司に呼ばれたので席に行く。


「今度、子供の虐待に関する講演があるんだけれど、片井さんも行ってみたらどうかしら? 講演者は海外で色々勉強してきた人らしいんだけれど、片井さんと同い年よ。偶然ね」


 上司は講演に関する資料を渡してくる。

 東京なので、少し遠いが行ってみる価値はあるだろう。

 それに、海外の取り組みに興味がある。

 講演者の顔写真と名前を見る。


「え……」


 見た瞬間、衝撃が全身を駆け抜けた。


「どうしたの?」


 上司が不思議そうにこちらを見ている。


「いえ……、この人は」



 次の日曜日。

 私は講演会場にいた。

 講演者の控室に通してもらう。

 私の名前を出したら、あっさりと案内してくれた。

 

 心臓が高鳴る。

 この部屋にいるんだ。

 ノックした後、ドアを開ける。


「京ちゃん!」


 開けた瞬間、名前を呼んだ。

 京ちゃんはゆっくりと、こちらを見る。

 京ちゃんは見違えるほど綺麗になっていた。


「真奈ちゃん」


 私は京ちゃんに駆け寄る。

 そして抱き着いた。


「会いたかった……」

「うん」


 京ちゃんは優しく受け止めてくれる。


「どうして連絡くれなかったの?」

「忙しかったのと、真奈ちゃんを驚かせたくて」


 すごく驚いたよ。

 話したいことが沢山あるよ。


「ごめんね、真奈ちゃん。そろそろ時間だから。講演の後で」

「うん」


 私と京ちゃんは部屋を出る。



 会場に行き、席に座る。

 会場は広いけれど、8割ほど席が埋まっていた。

 時間になりアナウンスがされ、京ちゃんが入って来る。

 その歩き方は堂々としたもので、緊張を感じさせない。

 人前で話すことに慣れているのだろう。

 自己紹介から始まり、京ちゃんの生い立ちや今まで海外で学んできたことを京ちゃんは話した。


「虐待の疑いがある場合、通告を怠ると法律で罰せられる国もあります。日本でもぜひ、導入すべきという意見もあります。ですが、親や周りの人にとって息苦しい監視社会になったり、通告者の保護という観点から、整備には時間がかかります」


 私も海外の虐待に対する取り組みは勉強してきた。

 日本が遅れている所はもちろんあるし、そこは直して行かないといけないと思う。

 海外とは宗教や文化、治安の違いなどがあるため一概には言えないが、日本は子供や子育てする親に厳しいと言える。

 実地研修を長く行った京ちゃんの話は、どれも興味深かった。


「最後に私の友達……いえ、親友の話をします」


 そして語られたのは、1人の虐待されていた女の子が夢を見つけ、叶える話。

 その子はいろいろなことを経験して、沢山泣いて、それでも前へ進んだ。

 夢はまだ叶えている途中だけれど、今日も子供たちのために生きる。


 講演は終わり、拍手が沸き起こる。

 私は控室へ急いだ。

 


 控室には講演を終えたばかりの京ちゃんがいた。


「京ちゃん、すごかったよ」

「うん、ありがとう」


 聞きたいことは山ほどある。


「でも、いつの間に海外へ行ってたの?」

「真奈ちゃんたちが大学生の頃かな。お母さんの体調が急に悪くなって、そのまま……」


 京ちゃんは両親を失って、どれほど悲しんだのだろう。

 その時、傍にいてあげられなかったのが悔やまれる。


「それから、仕事を沢山して、お金を貯めて海外へ行ったの。前からの夢だったしね」


 京ちゃんは海外留学が夢だと語っていた。

 でも、何の勉強をするかは言ってなかった。

 まさか、これだったとは。


「すごいよ、京ちゃん。夢を叶えたんだね」

「うん、あとね」


 京ちゃんはスマホの画面を私に見せる。

 そこには、幼い子供が笑顔で写っていた。


「え、もしかして」

「うん、私の子供だよ」

「すごいじゃん! 旦那さんは優しくて健康な人?」

「よく覚えているね。さすが真奈ちゃん。ちなみに、結婚式はまだしてないから、必ずみんなを呼ぶね」

 

 どんどん京ちゃんが遠くへ行ってしまうような感じがする。

 いつの間にか、妻になってそのうえ母親になっていた京ちゃん。


「それとね、今日は真奈ちゃんにお願いがあるんだ」

「何? 何でも言ってよ」

「実は……」


 京ちゃんが語ったのは、大きな夢。

 この国から児童虐待をなくすため、新しい団体を立ち上げ、政府に提言していくこと。

 それは、とても難しいことだけれど、不可能には思えなかった。

 なぜなら、話している京ちゃんの表情がとても輝いていたからだ。


「まだまだ、勉強中だけれどね。それで、やっぱり児童相談所で働いている人や、過去に虐待を受けた人の声も絶対必要になると思うの。それで」

「うん、わかったよ。協力する」

「早いね、真奈ちゃん」

「だって、京ちゃんの頼みだよ。断るわけないじゃん」

「……ありがとう」


 私が求めていた、大きな力はこれだ。

 この国を変えるような、大きな力。

 今はまだ小さいけれど、これからどんどん大きくなる。


「さて、この後どうするの?」


 私は京ちゃんに聞く。


「え?」

「まず、麻紀やタカに会いに行かないとね。後、施設にも行かないと。ずっと京ちゃんのことを探していたんだから、みんな」

「うん、そうだね」


 私達は控室を出た。



 様々な再会の後、京ちゃんと一旦別れて、私は自分のアパートの部屋に帰った。

 久しぶりに大事に保管してある、あの手紙を取り出す。


 将来の夢は見つかりましたか?


 うん、また見つかったよ。

 今度は京ちゃんと一緒に叶えるんだ。

 この国から、児童虐待をなくす。


 後、子供が欲しい。


 

 これが17歳の私に、いや16歳の私に伝えたい夢なんだ。

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