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ステイホーム  作者: ソロ歌
1章
2/6

1話 それぞれの思い

「行ってきます!」

「おう」

 部屋の扉を開け、飛び出て行く「柿野(かきの) 絢香(あやか)」を上手な作り笑顔で送り出す「佐々(ささき) 東生(とうせい)

 あの日から、絢香を家に置くことになった東生は深いため息をつき、ゆっくりリビングに歩いて行く。

 別に絢香が嫌いなわけでも、一人でいたいわけでもない。

 ただ怖かった。自分が本当にあの子を養って行けるのか。本当にあの子は僕と暮らしていて楽しいのか。

 リビングのソファに深く座り、再びため息をつく。

 心配だけが巡り巡って自分を苦しめて行く。

「学校。行くか」

 大学四年生で、就活準備を始めようとしている時に起こった、絢香の件。

 忙しい東生には、首を絞めるような事件だった。

 ソファに置いておいた肩掛けバッグを持ち、立ち上がる。

 立ち上がったと同時に、あの日からの一週間を思い出してしまう。思い出すと同時に開かれたままの、絢香の部屋に目がいってしまう。

 一人暮らしの割には部屋数が多い家を買ってしまったと、後悔していたほどだったのでいくらでも部屋はあった。まぁ、その家のおかげで、お金に苦しんでいるのかもしれないが。

「はぁ〜」

 自分にも嫌気がさして、またため息をつく。

 この一週間、あの子とはあまり話していない。話す機会もない。

 毎朝の行って来ます。帰って来ておかえり。あとは、ほぼ自分の部屋でゆっくりと過ごす。

「今日は話してみるか。たわいもない話し………って!何言ってんだ僕」

 かっこよく決めた自分のセリフに、我に帰り赤面してしまう。

「……っあ!!もうこんな時間じゃん!急がないと!!」

 考え事をしているうちに時は過ぎており、このまま行くと学校に遅刻してしまう。

 急いで玄関を飛び出ると、忙しなく東生は登校ルートに着く。

 春の心地よい風が、東生の背中を押していた。


next


「おはよ!」

 学校に着いた絢香は、同級生である「齋藤(さいとう) 伽耶(かや)」に早速絡まれる。

「あ、おはよ。朝から元気だね」

「まぁね!元気が一番だよ!」

 伽耶に皮肉気味の言葉を浴びせ、絢香は席に着いた。しかし、伽耶は絢香の気持ちも汲み取らずに淡々と答える。

「あやちゃん元気ないね。どうしたの?」

 伽耶の一言に絢香は考える。

 本当にどうしたのだろう。朝からイライラして皮肉も浴びせて。いつもの自分じゃないみたいに。

「ちょっと具合悪いから一人にしてくれない?」

「え?うん。わかった」

 少し悲しそうに歩いて行く伽耶の背中を絢香は冷たく見守った。伽耶は身長が低い上にツインテールなので、絢香には少し幼く映る。

 伽耶が席に着いたのを確認すると、絢香は席に伏せた。

 なぜ、今日はこんなに暗いのだろう。もう、お父さんの死も受け入れて、今は東生さんと楽しく暮らしているのに。

 あれ?楽しく?

 この時初めて絢香はこの一週間、東生とろくな話をしていない事に気付いた。

 暗い原因はこれかもな。

 絢香は自分にガッカリして、さらに気持ちが凹んだ。

「今日は東生さんと話そうかな」

「東生さんって誰?」

 小さい声の独り言のはずが、聞こえていたらしく、クラスの友達に声をかけられる。

「なっ!なんでもない!」

「ホントかな〜?」

 クラスの友達に茶化されながらも、絢香は思う。

 多分、誤解されてるんだろうな。と。

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