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全力でダッシュしていた。


城を出たらまさかの森だった。

本当なら城を出た後は町に着いて、

異世界のアイテム、スマホ等を何処かで換金してそれで日銭を稼ぎつつ、冒険者になるというのがテンプレなのだが、

なかなかテンプレ通りには行かない様だ。

森の中を歩くなんて危険極まりないので、

勢い良く城を飛び出ておいて少し恥ずかしかったが、

兵士さんに、


「町はどちらですか?」


と聞くと、

塀を伝って行っても町に行けると教えてくれた。

町の入り口はここから丁度反対側に有るとそうだ。


やばくね?


辺りは明るいがうっそうとしていて、いつ魔物が出てもおかしくない雰囲気だ!

いや!

出るだろう!絶対に出る!

じゃあ引き返すかというと、

そんな気にはならなかった。

出来るだけ音を立てないようにして前へ進む。


しかし、ほどなくして、魔物と遭遇する事になった。


その魔物は僕の進行方向に現れた。

参ったな。

その魔物は緑色の体で、

120センチぐらいの身長。

それが2体居る。


うん、ゴブリンっぽい。


しかし、

せめて後ろから現れてくれたらな。

右手には高い壁、

正面には魔物。

左は深い森に包まれている。

正直、

戦うのが当たり前なんだろうけど、

ゴブリンの装備は、

短剣、盾。

僕の装備は。

学生服のみ。

さて、勝てるだろうか?


否!


勝てる筈が無い!

だって、武器!武器がなきゃ!

それに虫すら殺した事がないのに、、、。


重心を落として、

いつでも走り出せる様に体制を整えて、

上着を脱ぐと、左手に巻き付けた。

ゴブリンの持つ短剣は錆びてるし、

そんなに切れ味は良くないはず!


ジリジリと近付くゴブリンに向かって走り出す!

そして。

ゴブリンが俺に向けて短剣を降り下ろしてくる!


予想通りの動き!


左手でその短剣を払うとそのまま一目散に走り抜けた。


でも、

思いの外、ゴブリンがしつこい!

僕の方が身長も長いから走り出したらあっという間に突き放せると思ったが甘かった!

ゴブリンも全力で僕を追いかけて来る!


しかも!

僕が物音をたてて森の中を走ってるせいか、

だんだん他の魔物も集まってくる!!

や、ヤバイ!


誰か!た、た、助けてぇ~!、


そんな声を上げたいけれど、そんな余裕は無くって、ひたすら全力で走る。

こんな所で死んでたまるか!

何としてでも生きてやる!

転生ものじゃなくて、

召喚ものだったが、

いつかは来てみたかった異世界だ!

何としてでも満喫して見せる!!


だからこんな所では死ねない!!

だけど、足にだんだん力が入らなくなってきた!


や、ヤバイ!


死、死ぬ!


後ろからはゴブリン舘が追ってくる!

しかし、その時進行方向に人影が!

やった!

助かる?!


その人影が俺達の存在に気付いて叫ぶ!


「なっ?!オーク!!」


なにぃ!

俺を追いかけて来てるのはオークだったのか!!


しかし、何でも良い!

プレイヤーキラーみたいな真似になってしまったが、

後ろのオーク達はこの人に任せよう!


そしてその人は剣を抜いて!

何故か俺に向かって振りかぶった!!


「えぇ~!なんでぇ~!!」



「はっはっは!悪かっな、まさか人間だとは思わなくってよ!!」


この人は城壁の周りを警備している憲兵さんだった。

そして、全く失礼な話だが、


「いやぁ~。だってよ、オークかと思ってよ!」


そう言って僕の大きな団子っ鼻を指差した。

憲兵さんがこっちを見て『オーク!』と言ったがそれは俺の後ろのゴブリンじゃ無くて僕の事だったのだ。

勘弁してほしい。

間違いで殺される所だった、

間違いで降り下ろされた剣は僕の学生服を切り裂き、

左手は血まみれになった。

それで僕が、


『痛ってぇ~!』


と、言うと。

あれ?言葉を喋ってる?ってなって、

ポーションを使って貰うことが出来た。

みるみるうちに傷がふさがり、

痛みも無くなった。


「んで?こんな所で何やってたんだ?」


憲兵さんが、地面を転がるゴブリンを捌きながら聞いてきた。

やべ、何て言お。

テンプレだと、記憶が無い系が一般的か?

でもな、


「いや、ちょっと異世界から召喚されまして」


良い人な様なので正直に言ってみる。


「へぇ、そうかい!!そりゃ珍しいな!」


あっさり認めたな、、、。

割とあるあるなのか?


「僕みたいのは多いんですか?」


「いや、そんな事ねぇよ。ただ、今日城の中で異世界人を召喚するって話しててな。もしかしたらお前さん、それに巻き込まれたかもしれねぇな」


まぁ、その召喚の結果が僕なんですけどね。


「でも、今の話を信じちゃって良いんですか?もしかしたら僕が只の不審者だったら?」


「あぁ、大丈夫さ。審判のスキルを持った奴がいる。そいつに見せりゃあ一発だ」


へぇ。便利だな。


「ではもしかしてそこまで連れていってもらえるんですか?」


「おおよ!あ当たり前だ。それが俺の仕事だからな」


助かった。町の入り口までどれぐらいあるかはわからないが、一人で入り口を目指す気にはならない。

それから憲兵さんはゴブリン達からの剥ぎ取りを終えて立ち上がる。

憲兵さんの後を付いて行くことにした。


「しかし、なかなか大したものだったぞ?」


「何がですか?」


「俺はお前さんの腕を切り落とすつもりで剣を降り下ろしたのだがな、何か剣の心得はあるのか?」


「いや、そんな事とは無縁の世界から来まして」


「へぇ、そうかい。ちなみに種族は人間で良いのか?」


「そうですね。人間です」


「へぇ、ドワーフとのハーフとか、そういう訳じゃあ無いんだよな?」


「そうですね」


親族にドワーフが居るとか聞いたことが無い。


「へぇ、まぁいいや。調べて貰えば分かる」


信じてないのかよ!!


とりあえず心の中で突っ込んでおいた。

しかし、驚きだな。

さっきからこうして言葉でやり取りしているが、

全然不具合を感じない。

初めて聞く言葉なのにメチャメチャ耳に馴染んでるし。


「ちなみにすみません。この世界に来たときにこの世界の言葉と文字を理解出来るようにして貰ったのですが、文字が書けるのって有利だったりします?」


「おう!有利だぞ?仕事には困らねぇだろうな」


おお、テンプレテンプレ!

とりあえずなんとかこっちの世界でも生活は出来そうだな。


「でも、まぁ。出来たら上を目指せよ?」


「何でですか?」


「異世界人は召喚されると特別な『(チート)』を授かるそうじゃねぇか。折角だから、戦闘系の力を授かったのならそれを生かしてくれると国としても一国民としてもありがてぇがな」


あぁ。『力(残念)』ね、、、。


『ラブホテル』で何が出来るって、

間違いない、利用方法は一つ。

そして、それは俺には確実に使えない(涙)。

そうなるとレンタルになるが、、、。

あぁ、凹む。

ほんとしょうもない。


「まぁ、仕事は色々あるからよ、、、」


何かを察した憲兵さんが慰めてくれた。


「それより、召喚されたなら、神様に会ったんだろ?どうだった?スッゲェ綺麗だって言うじゃねぇか」


「会いましたよ」


これも俺のテンションを下げるトーク内容だ。


「ど、どうだった?」


「ええ。なんかエロい感じのボン、キュ、ボンでした」


この表現は異世界でも使うことが出来たが、


「あれ?おかしいな?神様の胸はペッタンこって話しだったがな」


「そうなんですか?めっちゃデカかったですよ?」


「へぇ、じゃあ神様も何千年とかけて、胸もやっと大きくなったのかねぇ」


なんて憲兵さんは言っている。

神様が聞いてたらキレないかな?

まあいいか、あんな奴。




《???視点》


『どうだ?』


『はい、無事神の加護を分散させ、奴を孤立させる事が出来ましたが、全てが思い通りにはなりませんでした。結局奴にも『チート』が与えられてしまい』


『そうか、奴はどんなスキルを得た?』


『でも、かなり発動させる事は難しそうなスキルでしたが』


『では?』


『まずまずといった所ではないかと』


『そうだな、また次の報告を待つとするよ』


この言葉を最後に交信を切った。

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