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「ハァ~イ!召喚される前の貴方と、これから個人面談を始めまぁす!」
スッゲー軽い声を聞いて目を覚ますと、
そこには黒田さんに似た、エロい系女子がいた。
やべ。
たまらんな。
はち切れんばかりのボディ!
今にもはだけそうなラフな衣服!
なんてテンションを上げてると、
ソッコーでテンションを下げられた。
「え?キモ!なんで?なんでおっさんがいるの?」
おっさんと言われたら、それはもう間違いなく僕の事ですよね?
「若い、ピチピチの高校生達をを召喚したつもりなのに、、、」
何やら俺の存在は想定外の様だ。
でも、このままではいけない、反撃を試みる事にする。
「いや、俺も高校生ですよ」
「うそでしよ?」
目の前の美女はそう言いながら、ラフな衣服を押さえる。
めっちゃ警戒されてんじゃん!
くそ!
予想通り!だが歯痒い!
「まぁ、いいや、不本意だけど、ルール通り貴方にも一つ『チート』をあげる。貴方に恵んでやる『力』は貴方の心に左右された物だから注意しろ。どんなんスキルでも、その根源にはお前の心がある。だからもしも、キモいお前が得すスキルは『幼女、拉致、監禁』その辺のスキルだろうな。うわ、最悪。死んだら?」
おいおい!話ながらドンドン口が悪くなってるぞ?
良いのか?それで?!
「じゃあ」
と言いながら、その女の人が鼻をほじりながら、
俺に向けて息を吹き掛けた(かなり遠くから)。
その瞬間、頭の中に声が響く!
『ユニークスキル、『ラブホテル』を習得しました』
その時、大きな笑い声を女の人が出した。
「ヒャッヒャッヒャ!」
何?この人。
「ブ!ブサイクなのに!スキルが『ラブホテル』なんて!!ヒャッヒャッヒャ!!」
あまりにも笑う物だから僕はイラッとして、
「何がおかしいんですか?」
と聞いた。
「だって!貴方のスキル!貴方のスキルは、女の人とエッチをすればするほどステータスが上がるんですって!!凄いわよ!このスキルを使えば貴方の強さはうなぎ登り!留まることを知らないわ!!!
で?!どう?!!女の人とエッチは出来そう?!」
鏡を見るまでも無く、
自分の顔が真っ赤になっているのが分かった。
下品なその女はずっと笑っていた。
それからしばらくしてその女の笑いが収まると、
異世界に召喚された際の注意事項?
等を説明し、最後に、
「精々頑張ってね~」
と言った。
自称神様の教えてくれた注意点はこちら、
・僕達は異世界に召喚された。
・普通なら異世界の言葉は理解出来ないが、スキルで言葉と文字は分かるようにしてある。
・ステータスオープンと念じると、自分のステータスが分かる。
・収得したスキルはそのスキルをイメージして念じれば使える。
・魔物がいるから殺されないように注意すること。
・死んたら生き返られないから注意すること。
・どう足掻いても元の世界には戻れないということ。
自分の残念なスキルと相まって、
やるせない気持ちで異世界へと旅立った。
・
目の前を覆う白いもやが徐々に晴れていく。
周りには、
沢山の人が立っているのが分かる。
クラスメイトだ。
俺は自分の獲得したスキルにすっかり意気消沈してしまった。
それに反してクラスメイト達は貰ったスキルで盛り上がっている。
『竜騎士』なんてスキルや、『双刀の覇者』なんてスキル。
『聖者のハープ』なんてスキルも、あるみたいだ。
どれも良い感じのスキルで、
聞いてるだけで涙が出るぐらい羨ましい。
僕はファンタジー系の小説が好きで、
割と読むことが多かったのだが、
まさかこんな結果になるとは。
やっぱり召喚ものはダメだよ、、
どうせなら転生したかった、、、。
「スゲェ!!」
突然大きな声がして、
そっちの方を見ると、
そこには新田荒太君がいた。
どうやら鑑定系の能力を授かったようだ。
そして、空城君を中心にして輪が出来きる。
「困ったな、、、。なんで分かったんだい?」
空城君はそうドヤ顔で言った。
空城君のスキルは、
『時空ヲスベルモノ』
という物だったのだが、
問題は空城君の称号だった。
彼の称号が、
『勇者』
だったのだ。
それが分かると女子が歓声を上げて、
いつもモテモテな彼はいつも以上にモテモテになっていた。
その様子を僕はため息混じりに見ていると、
黒田さんが、
「田中は?田中はどんなスキルだったの?」
と、聞いてきた。
思わず背筋が氷る!
『皆様!申し訳ありません!私からお話させて頂いても宜しいですか?』
よく通る綺麗な声がした。
注目が自分以外へ移ってホッとする。
声がした方を見ると、見慣れない衣服の人達がいて。
その人達は白い服に身を包んで、頭の上からも白いフードを被っている。
その中の一人が一人が一歩前に出ると、
「私がこの国の王女、エマ・タレンティ・スダロキアと申します」
そう言って頭を深く下げて言った。
フードがハラリとずれ落ちると、綺麗な顔が顕になった。
長いブロンドの髪の毛で西洋風の顔だ。
モデルさんみたいだな。
「この国を救って頂く為にこの世界にお呼びしました。本当はお一人のみの召喚の予定だったのですが申し訳ありません。なぜかこんなにも沢山の方を呼び出してしまいまして、、、」
なるほどな、誤召喚ものか。
テンプレテンプレ。
まぁ、おもに間違いは俺だな。
そうすると本当なら、空城君だけが召喚される予定だったのかな?
「ちょっと待ってくれ!」
はい、これ来た。
空城君だ。
「僕は良い!しかし、他の皆は元の世界に戻してもらえないだろうか!!」
はい、イケメンコメント頂きましたぁ。
「それが、、、。申し訳ありません、、、」
まぁ、これもテンプレだな。
しかし、これだから召喚ものはダメなんだよ、、、。
転生ものにしておけば良いものを、、。
今からでも良いから僕は転生させて貰いたいけど。
「そうか、、、」
「戦闘は強要しませんし、皆様の安全は保証しますので、どうか、どうかお許しください!」
「分かりました。しかたありません!良いでしょう!!」
おい!!
勝手に許しちゃって良いのかよ!!
それはダメだろう!
俺はそう思うのだが、
誰かが何か言うわけでもない。
状況に頭が付いていっていないのかな?
テンプレだと、落ち着いている俺のほうがおかしいのかもしれないな。
しかし、それから空城君がとんでもない事を言った。
「それに、皆。大丈夫だよな?困っているみたいなんだ、皆で何とかしてあげよう!!」
この言葉に僕は慌ててしまった、
それは違うだろうと。
そして、流石に誰かが言わなければと思って、
「ちょっと待て!それは個別に回答する事だろう?勝手に決めて良い問題ではない、強要していい事じゃない!許す許さないも、空城君が勝手に決めていいわけがない!!」
僕がそう言うと、皆の目が僕に集まる。
「はぁ」
空城君は大きくため息を付いた。
「本当に君は情けないな。君だって神様から『力』を授かったんだろう?その力を誰かの為に使おうとは思わないのかい?」
「論点をすり替えてんじゃねぇよ!何をどうするかは人それぞれなんだよ!何をどうするのか、お前が勝手に決めて良いわけがない!」
僕がそう言うと、滅多に反論しない僕が反論したのが気に入らなかったのだろう。
空城君の顔が真っ赤になって黙ってしまった。
その代わりに黒田さんが口を開いた。
「うるさいわね、田中のくせに。空城君は勇者なのよ?そんなもの、何とかなるに決まってるじゃない。本当に貴方は臆病なのね。それとも、貴方が授かった『力』が外れだったとか?」
余計な事を言われてしまった。
新田君が一歩前に出て俺を見る、
「あははは!マジかよ!スゲーな!」
案の定笑いだした。
「こいつのスキルは『ラブホテル』だってよ!」
クラスメイトの顔が『えっ?』って感じになる。
その瞬間に新田君はたたみかけた。
「こいつのスキル『ラブホテル』は女を連れ込んで、セッ◯スすると能力が上がるんだとさ!!」
「それは、、、。ちょっと無理じゃない?」
黒田さんが遠慮がちに言う。
「しかも、「力」は当人の心に左右されるって神様が言ってたけど、、、」
この瞬間、皆が俺を見る目が変わった。
「まじかよ?!あり得ねぇな、キモいぞ?お前」
「だから空城君に文句を言ってたんだな」
「納得だ、そりゃ戦えねぇだろうよ」
「まぁ、いいじゃん。お前は後方でオナ◯ーでもしてろよ!」
皆にバカにされ、いたたまれなくなる。
彩香さんは、
「何かの間違いよ!そんな事言うなんて可笑しい!」
と、言ってくれ、
王女のエマさんも、
「落ち着いてください!」
と、言ってくれたが、
僕を罵倒する声は止まなかった。
僕は必死に涙を堪えながら走り出した、
これ以上この場所には居られなかった。
・
くそ!くそ!くそ!
何でこんな事を言われなきゃいけないんだよ!
男が女の子に興味があって何が悪い!
むしろ当たり前じゃないか!
オナヌーなんて!
高校生の三大義務の内の一つだぞ!!
大体の男がやっているに決まっている!
そうだ!
そうだよ!
誰だって女の子が大好きさ!
エッチな事だってやりたいに決まってる!!
ラブホテルにだって女の子と入ってみたいさ!!
なんでそれを!!!
くそ!くそ!くそ!
城の中を巡回する兵士を振り切りながら走る。
兵士達は俺が何者か心当たりが有るのだろう。
無理矢理引き留めはしなかった。
僕がどれだけ危ないスキルを持ってるか分からないからな。
そして制止を振り切って建物を出ると、
そこは森だった。
あれ?
普通なら城を出たらそこは町なんだけどな?