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高校生も三年目。

クラスメイトからの苛めに耐えつつ、

なんとか卒業を目指してきた。

もう少しで卒業だという頃、


「おい!おっさん!タバコ買って来いよ!」


そう言われて俺は顔を下に向けて、

学校へと歩く歩調を強める。

おっさんとはもちろん僕の事だ。

僕はまだピチピチの18才の男子高校生なのだが、

30代後半のおっさんの様な顔をしていた。

30代後半の男が高校生にタバコを買って来いと強要されている。

この様は正しく親父狩りと言っても間違いの無い図なのだが、

残念。

僕は18才。

俺はタバコは買えないし吸えない(間違いなく誰もが売ってはくれるが)。


「おい!おっさん!聞いんのかよ!」


そう俺に絡む男の名前は、山田孝(ヤマダタカシ)

俺程とは言わないが、そこそこおっさんみたいな顔をしている。

眉毛がごんぶとの哀◯翔、みたいな感じだ。


「山田君?何をやっているのかな?」


後ろから声を掛けられた。

振り返らなくても分かる、

この声は空城剱(クウジョウツルギ)君だ。

僕は正直この空城君が苦手だった。

それでも後ろを振り替えると、

そこには案の定、空城君がいつも通り三人の女の子を連れて立っていた。

空城君はアイドルみたいな整った顔をしていて、その隣に立つ女子達も綺麗な顔をしていた。

切れ目のカッコいい系女子の、秋元杪(アキモトコズエ)

身長が低くて大人しい感じの、吉田聖子(ヨシダセイコ)

口許の黒子がちょっとエロい、黒田彩(クロダアヤ)


「全く、タバコを吸うなんてもっての他だが、田中君、君も山田君の友達ならしっかりと断って、彼にタバコを辞めるように言ってあげるのが友人というものだよ」


空城君が俺を諭す様に言ってきた。

なぜ、、、。

なぜ僕が諭される?

大体僕は山田君とは友達じゃあないし、

山田君の体なんてどうでもいい。

むしろ体調を崩して学校に来ない方が助かるんだけどな、、、。


「何とか言ったらどうなんだ?田中君?」


『はぁ』


わからないように口の中でため息を付いた。

責めるべきは僕より絶対に山田君だと思うんだけどな。

その山田君は、ゆっくりと後退りしてこの場を去っていく。

そして、黒田さんがしなを作りながら空城君にピトリとくっついて、


「もう行きましょ?」


そう言うと、


「そうだな」


と空城君が言って、四人は去っていった。

周りに誰も居なくなってホッとする。

しかし、羨ましいな。

女の子に囲まれて、

僕も黒田さんみたいな女の子にピトリとくっつかれたいな。

しかしそれは望めない。

俺はとても女の子に受けの良い顔をしていない。

どちらかというと、

男らしい顔つきで、厳つく、子供が一目散に逃げ出す様な顔だ。

まぁ、悪役のプロレスラーをイメージしてくれ。

まぁ、俺のルックスなんてどうでも良い。

誰も(俺だって)興味なんて無い。


こんなおっさんみたいな顔をした俺だって高校生。

性欲バリバリ!

空城君程にとは言わないが、

少しは女の子と良い感じになりたい。

ラブホテルに女の子とぉ~。

なんて思ったりもする。

あの麗しの黒田さんとぉ~。

あのエロい感じでぇ~。

なんて妄想をするが、

残念。

もちろん彼女は空城君と良い仲だ。

空城君が黒田さんとラブホテルに入っていくのを見たとクラスメイトが噂していた。

全く羨ましい。

しかも秋元さんや、吉田さんとも入っていくのを見たという人がいるのだ。

そうだ!

そういえばそうだ!

なんで僕が空城君におこられなきゃいけないんだ?!

空城君も『友人を諭せ!』

と言う前に、自分の行いを改めるべきなんじゃないのか?!

他人を諭す前に、

自分の行いを改めるべきなんじゃないのか?!

高校生のくせに!ラブホテルなんて!

羨ましい!

ズルい!

くそ!

だんだん腹が立ってきた!

腹が立って、ズンズンと足早に歩く!

しかし、前を行く空城君達に追い付かない様に気を付けた。



教室の前に着くと、

出来るだけ音を立てないようにして室内に入った。

俺は悪役のプロレスラーみたいな顔をしているくせに、気が弱かった。

気が弱いというか、

自分的には優しいのだと思いたい。


だって虫すら殺したことが無い。


クラスメイトに苛められても、

どうも、やり返してやろうという気持ちにはならなかった。

コッソリと自分の椅子に座る。

教室の中にはもちろん、

空城君とその仲間達や、

山田君など、俺を苛める面々もいる。


「おい!」


案の定、山田君が大きな声を出して俺に近付いてくる。

山田君は僕の首にチョークスリーパーを決めると、


「おぃ、タバコは?買ってきたんだよな?」


そう小声で話し掛けてきた。

ふん!

甘いな、もうホームルームギリギリの時間だ、

山田君が耳元でボソボソ言うが無視だ!

俺の脇腹をゴスゴス殴ってくるがもちろん無視だ!

三年間殴られ続けたら大体の痛みは無視出来るようになっていた。

しかし、なかなか先生来ないな?と思っていると、


「ちょっと!」


少し高めの声が部屋に響いた。

神田彩香(カンダサヤカ)さんだ。

彩香さんはほっぺをぷくりと膨らませて怒っているのが一目で分かる。


「何やっているの!!」


 そう言って近付いてくると、山田君は僕の首を締めていた腕を離した。


「なにもしてねぇよ?な?田中?」


山田君は美人全般に弱かった。

手をパタパタと振って笑顔を見せる。

なんだか、キモいな。

その山田君を彩香さんは睨み付けるが、山田君は笑ったままだ。


「情けないな、田中君。女性に庇われて恥ずかしくは無いのか?」


めんどくさい奴がやって来た。

空城君だ。

恥ずかしいとか、恥ずかしくないとかいう問題なのか?

どうしたものかと考えていると、


「空城君?それは違うんじゃ無いの?」


と、彩香さんが言った。


「あはは、本当に優しいな。神田さんは、こんな男にもさ」


空城君は前髪を弄りながら言う。

何だろ?空城君が前髪を弄ってるの見るとイライラするんだよね。


「こんな男って、どういう意味?」


彩香さんがそう詰め寄ると、


「あはは、本当に神田さんは素敵だな。今度一緒に帰ろうよ?」


なんだかな、いつもこうなのだが今一空城君ては会話にならないんだよな。

しかも然り気無く、彩香さんを自分のハーレムに誘ってるし。

ちなみに山田君はこっそり居なくなっていた。


「違うでしょ?!洋一君じゃあなくて、山田君を嗜めるべきなんじゃないの?!」


「彼は。家庭がね、、、。あまり良く無いんだ、可愛そうな人なんだよ」


おいおい!

それは関係ないないだろう!

そう、思って、


『ガラッ!』


僕が椅子を蹴って立ち上がった時、

変な現象が起きた!


『シュワシュワ、シュワシュワ!』


変な音が鳴り響く!

そして、だけ辺り一面が光り輝いていく!

壁も、

机も、

人も!

その光景に俺だけじゃ無く、

クラスメイト全員が慌てふためく!

山田君は、


「何なんだよ!!」


と怒声を上げ、

空城君は、すがって来る女の子達を宥めてる。

そして俺達の体は光の粒子となって、

この世から消えた。

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