19
巨乳シスターに会いに、創造神サトリティヌス様を祀る神殿を目指して歩く。
ギルドのある方向とは別方向なのでカーンティさんとは別れて今は一人だ。
マリアは義手と義足を作ってくれる工房のお二人に任せて僕は出て来てしまった。
リハビリに僕が付いててもしょうがないし、僕がお金を稼がないといつまでたっても義手も義足も買えないからね。
ちなみに工房のお二人はバルさんとディミトリさんっていって二人はご夫婦だった。奥さんはかなり幼く見えたけど、もう50歳だそうだ。バルさんはまだ40代だそうで『なんだか見た目じゃあ全然分かんないや』って思った。
まぁ、18才のくせに同級生に『おっさん』と呼ばれてる僕も大概だけど。
そういえば、僕をドワーフだと勘違いしていた様だけど訂正せずに来てしまっていた。
まぁ、そのうち言おう。
神殿に着くと大きな扉を押して開いた。
中は相変わらず人気が無く、空気が澄んでいるような感じがする。
建物の奥に進むと巨乳シスターが現れた。
「こんにちは、タナカ様。本日はありがとうございます」
シスターはそう言って頭を下げてくれた。
見た目が悪人面の僕にも変わらない態度で接してくれるとても良い人だ。
「こちらこそ、助かります」
今後は此所でお客さんに掛けてあげる『ヒール』が大事な収入源になる。だから良い関係を築きたいので、胸の辺りをガン見したくなるのを必死で堪える。
「では、お客さんはどちらに?」
「えぇ。奥に、いらっしゃいますが、その前に、、、。一つお願いが、、、」
シスターのお願いは、『あぁ、なるほど』と思う内容だった。
でも僕には絶対に似合わないよね?
・
壇上の上に立って奇跡を与える、これから『エクストラヒール』を掛けてあげる対象を見下ろした。
最初のお客さんはお父さんとその娘だった。
娘さんが誤って指を切り落としてしまい直して欲しいとの事だった。
僕が壇上から降りて娘さんに『エクストラヒール』を掛けようと近付く。
すると二人は、跪き下を向けていた顔を上に上げた。
しかし、二人の顔は驚愕に包まれる!
そりゃそうだろうよ。
自分でも違和感バリバリだ
ドワーフとオークを足して2で賭けた様な顔の僕が白いローブを着て出て来て、偉そうにしててもな。
どっちかというと、黒のローブだったら違和感も無かったと思うんだけど。
女の子の近くに行って屈むと、
「ヒィ」
と、女の子が小さく悲鳴を上げた。
この様に僕の心はズタボロになるけど、それでも何とか怖がらせない様にと、笑顔を浮かべると。
「ヒィィ!」
と女の子は叫び、後ろに後退りした!
そして付き添いのお父さんが、僕と娘さんの間に入って娘さんを庇うポーズをする。
もうやだ。
帰ろうかな。
そう思いながらも祈りの言葉を唱え始めると、状況を察したのか父親が娘を前に押し出した。
『届くと良いね、この星を創りし麗しの神へ、
聞いてもらえると良いね、
我らを見守りし、煌めきの神にさぁ、
この欠けた金の器、
貴方を敬いしこの魂、
元の姿に戻してもぉ、
良いんでないかい?』
『エクストラヒールゥ!』
一応発動したみたいで、女の子の傷があっという間に指が生えてくる。
でも!
体の傷は奇跡で治せるけど、心の傷は治せないんだからね!
僕は傷付いたんだからね!!
しかし、その親子は満足したようで何度も頭を下げて出ていった。
なんだか納得いかん。
沈んだ気持ちに成るが、それに構わず次のお客さんをシスターが招き入れる。
次に入ってきた男は冒険者の様で腰には剣を下げ、皮の鎧で身を固めている。
その男は最初恭しく入ってきたのだが、僕の顔を見ると、
「ゲッ!『死体担ぎ』かよ!?」
と声を上げた。
この状況でそれを言うか?
「あぁ、すみませ先程の女の子にMPを使いすぎたかもしれません、、、」
僕はそう言って頭を左手でさすった。
もちろん嘘だ。
あと三回は『エクストラヒール』を掛ける事が出来る。
でも、その冒険者の男は状況を察した様で、顔を青くする。
「しかも、少し風邪っぽくて、、、ゴホ、ゴ、(多め)ゴホ!多め、ゴホ!うぅん。やっぱり調子悪いかなぁ。多め、ゴホン!今日はもう無理かなぁあ!多めに!」
「多め!多めに寄進します!!」
慌てた男がそう言った。
「そうですか、多めに寄進してくださるのですか!なんと、信神深い!そんな貴方のためならなんとか『エクストラヒール』を試みましょう」
僕は心底イヤそうな顔をしながら『エクストラヒール』を掛けてやった。
僕のその顔に男は怯えていたが欠損していた手が治ると、ニギニギして、
「おぉ!スゲェ」
と喜んだ。
チッ、成功しちまったか。
自分の才能が怖い、
なんつって。
これ以上意地悪するつもりも無いし。
でも、この調子なら早く金貨を貯める事が出来そうだな。
それからも奇蹟を起こして傷を癒してあげると、
「今日はありがとうございました」
そう言ってシスターが近付いてきた。
どうやらお役御免になったらしい。
「いえいえ、ではまた明日」
そう言って服を脱いで帰ろうとすると、僕に『エクストラヒール』を教えてくれたお爺ちゃん(この神殿の神殿長だった)に呼ばれた。
・
「今日は悪かったのう」
そう言って神殿長がお茶を出してくれた。
僕は軽く頭を下げてそのコップを手に取って、
「こちらこそ、助かります」
と言った。
もちろん『ボロい商売ですね』なんて言わない。
「そう言ってくれると助かる。孤児を養ったり配給もせねばならんくての、金はいくらあっても足りんのじゃ」
なるほどね。
でも、そういうのって国の仕事じゃあないだね。
「それに、ワシも年でなもう奇蹟の行使もままならんくてなぁ」
「全然気にしないでください。私もマリアも助かっていますから」
「優しいのぅ。本当に人は見た目に寄らぬもんじゃ。始めた見たときはオークかと思ったがのぉ、人間だったようじゃのぉ
、フォフォ」
このジジイ、突然僕のフェイスを貶してきやがった。
「あと、シスターの乳はワシのもんじゃから触ったら祟りにあうぞ。気を付けよ」
なんだコイツ、何となく奇蹟が行使しにくくなってきた原因が分かった。
煩悩全開だし、自分の都合で祟りとかダメじゃね?
ジジイに対する尊敬ゲージが0になったところで僕は、
「じゃあ帰ります」
と言って立ち上がる。
「ちょっ!待ってくれんか?大事な話が、、」
ジジイが僕を引き止めようとするが、
「そうですか、ではまた明日」
なんかもういいや、神殿に内緒で開業しよ。
立ち上がって扉を開くと丁度シスターがいた。
「あれ?タナカ様、お帰りになんるですか?」
シスターはそう言いながらチラチラとジジイを見ている。
残念ながらジジイはミッション失敗してる。
「はい。大事な話が有るそうですが聞きたく無いので、はい。残念ですが」
異常事態を察したシスターは、
「えっ!ちょっと!ジジイ!でめぇ!!余計な事言いやがったぁなぁ!!!」
その後、ジジイは豹変したシスターにフルボッコにされ、
ジジイがすべきだったお願いをシスターから聞いた。
シスターのお願いは、
『冒険者ギルドからの強制召集が掛かったら神聖魔法の神殿の人間として代表して参加して欲しい』
との内容だった。
神聖魔法の使い手は少なくは無いが、ほとんど冒険者として町の外には出る事が無い。
と言うのは、神聖魔法を必要とする人は多く、また、その重要性から存在を守られてきた。
だから多くの神聖魔法の使い手は実戦経験が乏しい。
それはシスターもそうだ。
じゃあ実戦を学ばせれば良い。
かというと、それを難しくしているのが、収入だ。
普段、神聖魔法の使い手は町で奇蹟を施し、収入を得ている。
その奇蹟を施す相手はほぼ冒険者だ。
じゃあ、実戦を積もう、パーティーを組もうとなるとそのパーティーからは負傷者が出なくなる。
パーティーを組んだ神聖魔法の使い手が傷を癒してしまうからだ。
そうなると、冒険者として働く神聖魔法の使い手のみが儲かる。
でも、それは困る。
ならば、神聖魔法の使い手は皆冒険者になってお金を稼げば良い!かというと、それも難しい。
神聖魔法の使い手が危険により会いやすくなるからだ。神聖魔法の使い手が減ると冒険者達だけでなく、町の人も困る。
結局今は冒険者は『ポーション』等を使いながら冒険をしてもらい、町に戻ったら『エクストラヒール』等で傷を癒してもらう。
これが一般的になっていた。
結果、神聖魔法の使い手は実戦経験が乏しかった。
しかし、冒険者ギルドからの強制召集がかかるとそうは行かない。
誰かが出なければいけない。
そこで白羽の矢がたったのが僕だ。
僕は冒険者としての経験もあるし剣も使える。
シスターに務まるとも思えないし、ジジイなんてもっての他だろう。
結局僕は、
シスターが頭を深く下げて頼まれて承諾した。
シスターが頭を下げたときに胸の谷間がしっかり見えたから細やかながらお礼の気持ちだった。
・
シスター(ジル・デレストリー)視点
母一人子一人で生活をしており、昔は随分貧しく辛い生活を送っていた。
そんな時に私に『神聖魔法』の適正が有ると分かると、母親はとても喜んだ。
それはその通りで、生涯安泰だ。
安全な場所で、奇蹟を施していれは生活には困らない。
それが分かった時はもちろん私も喜んだ。
生活には困りたくない。
そう。
生活には困りたくない。
だ。
これだけ、これだけだ。
神聖魔法の適正があって嬉しかった理由はこれだけだ。
だって、創造神サトリティヌス様の教えのおおくは『愛』なのだけど、全く参考にする気になれない。
だって。
愛なんて。
愛が本当に有るのなら『奴隷』なんて居ないし、『孤児』なんて居ない。
貧しさから死ぬ人も居ないし、怨まれ殺される人がだって居ない。
大体、聖書の冒頭で、
『私には全ての人を救う事は出来ない』
そう書かれているのだが、それが気に入らない。
救えよ!神様なんだろう?
そう思ってしまう。
だから別に『聖書』なんて読んだ事が無いし。
読むつもりも無い。
そんな私の前にある男が現れた。
その男はタナカ・ヨウイチという男で、
異世界から召喚されて来たと紹介された。
なんとも面妖な顔をしていて、なるほどな。
異世界人とはこんな顔をしているのかと、マジマジと見てしまった。
まるでドワーフとオークを足して2で掛けた様な顔だった。
その男は愛嬌のつもりもなのだろうか、笑ってみせるのだが、
その顔がまさしく『お前を食ってやろうかぁ~!!』って言いだしそうな顔に見えるのだ。
恐ろしい!
なんて思いつつ、
お金の為とはいえ、創造神の神殿に勤める身の私は何とかこらえ、平静を装った。
その男は変な事を申し出た。
なんと、『聖書』を読んでみたいと言ったのだ。
あんなもの。
貴重品ではあるのだけど、なんの役にも立たない。
私は『どうぞ』となんの心配も無く渡した。
でもその男と私は何度も会う事になる。
その、男はなんとボロボロの奴隷を連れて来たのだ。
私は思わず、『捨てたら?』と言いそうになるのを必死で堪えた。
だって、手も足も無いし。
顔も、火傷の跡や切り傷でボロボロだ。
私ならコレを買うぐらいなら雑巾を買うだろう。
そう思った。
でもその男はその奴隷の為に『エクストラヒール』を習得すると言ったのだ。
何をバカな。
そう思った。
だって、習得するための寄進だって安くは無い。
そのお金を貯めるだけで一苦労だ。
そんな苦労をするなら新しく奴隷を買ったら良い。
しかも、寄進した所で『エクストラヒール』を習得出来る人間は少ない。
しかし、その男はそのお金を貯めてみせた。
月日も予想を遥かに下回った。
多分半年も掛かっていなかったと思う。
そして見事『エクストラヒール』を習得して見せたのだ。
これには私も驚いた。
まるで魔物かと見紛える容姿なのに、まさか神聖魔法の『エクストラヒール』を習得するとは!
しかし、この世はやっぱり無情。
折角の『エクストラヒール』。
折角の奴隷への癒し。
しかし、その奴隷は傷を癒す事が出来なかった。
その奴隷の腕と足の欠損は生まれつきだったのだ。
なんて貧乏クジなんだろう。
そんな奴隷、いい加減捨てるかな?
私はそう思ったのだが、
その男は、手足の欠損がそのままの奴隷に向かって笑い掛けたのだ。
笑い掛けて、
『なんの心配もいらない』
そう言ったのだ。
不器用な笑い方だ。
この男は笑う時には目を見開き、口角を上げ。
鼻の穴を大きく開けて笑う。
一瞬『怒ってる?』そう思ってしまう。
その笑顔。
そして、その男はその手足の無い奴隷に義手と義足をも用意すると言ったのだ。
確かに義手と義足を付けて動かす事が出来れば、少しは役に立つだろう。
でも、一人の奴隷にいくらお金を掛けると言うのだ。
今までに掛けた金額ならどんな買えない奴隷なんて居ないだろう。
この奴隷にどんな価値があるというのだ。
でも、でも。
その男は再び奴隷の義手と義足の為にお金を貯めようとしていて。その奴隷との生活の為にお金を稼いでいて。
タナカ様はある日聖書を返してきて、
『ありがとうございました。とても為に為りました』
そう言ったのだ。
私はいつしか、この人の隣で神について共に語りたいと思うようになり。




