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空城剱視点
王女エマの前に膝まずき、その手を取って、
手の甲に口付けをした。
「私はこの国の剣となる事をお約束します!」
俺のその言葉と共にホールの中は歓声に包まれた。
俺の名前が呼ばれ、祝福の言葉が飛び交う。
その声に俺は手を上げて答えた。
さらに大きな歓声がホールに響き渡る。
皆か俺の事を祝福している。
この感動に背筋が震える、しかし俺は一歩前に出てさらに続けた。
「魔族は人々の生活を脅かし!その大切な命を奪っております!!この様な事は本来有ってはならない。全ての人々は安全に健やかに人生を送る権利がある!この奪われている権利を取り戻さなければならない!そしてそれを取り戻すことが私には出来る!!皆様!お約束します!私はこの国の剣となり!幸福を取り戻す事を!!!」
その瞬間この日一番大きな歓声にホールは包まれた。
俺の隣には王女であるエマがいて、その俺達の回りは屈強な近衛騎士で囲まれている。
これ以上のパフォーマンスは無いだろう。
俺はエマの手を握ったままだったのだが、
そのエマの手がそっと抜かれる。
その代わりにエマは体を俺に寄せてきて、
「大丈夫なのですか?訓練にはあまり参加されて無いようですが」
そう小声で言った。
俺が訓練や講義になかなか参加出来ていない事を気にしているのだろう。
「あはは、心配性ですね、王女様、どんな敵でも私の『時空ヲスベルモノ』が有れば大丈夫ですよ。時空斬りで魔族の集団ごと切り裂いてご覧にいれますよ?」
「その通りに成れば良いのですが」
王女の心配は止まらない様だ。
俺の目を見てそう言うので、
「もちろん!その通りに成りますとも!ご安心下さい。必ず平和に導きますので」
エマの目を真っ直ぐに見てそう答えた。
エマは若干頬を赤くする。
「大丈夫です、お任せくださいね?」
この言葉にエマは小さく頷いた。
俺の手から逃げた手をもう一度掴む。
今度はエマの手は逃げなかった。
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エマ・ワトスン・タレンティーノ視点
困ったお人だ。
戦闘の訓練にはほとんど参加していないというのに、それでもなんとかなるなんて。
でも、あの自信満々な顔で『お任せください』なんて言われて、顔を赤くしている私も困ったものね。
頑張って、肩を張って男性と並んで国政を担っていたら私に言い寄る男性は居なくなっていた。
相手には、勇者様には、お付き合いされてる方が三人も既に居るというのに。ついつい嬉しくなっていまう。
私の国の勇者様。
やっと来てくれた私の希望。
これで魔族達と戦う事が出来る。
実は最近魔族の動きが活発化してきていて、
この国は大丈夫なのだけど、
遠く西方で国が一つ落ちかけているという話を聞いていた。
このまま何の準備をせずにいたらこの国だってどうなるか分かったものじゃあなくって。
勇者様の気紛れにお付き合いするのは難しいが、それでも今日この国の剣になってくれると仰ってくださった。
少しだけ肩の荷が降りたような気がした。
『コンコン!』
私の部屋のドアを叩く音がする。
「入って宜しいでしょうか?」
この声は宰相だ。
「入りなさい」
扉が開いて、疲れた顔をする白髪の男が入ってきた。
宰相のハイデマンだ。
ハイデマンは長く宰相としてこの国を支えてくれていた。
「何の用かしら?」
「3つあります。まず一つめは、隣国のシューザルハ王国が勇者召喚の情報を掴んだ様です。『今まで以上の国交友好化を望む』と打診がありました」
もう勇者召喚の情報を掴まれた?
でも、これは良い。
貿易を優位に今後は進める事が出来るかもしれない。
「二つ目。シューザルハ王国の狙いはもちろん勇者の貸し出しです。勇者様は神様の送りものという考えが一般的です。優先権は私達にありますが、専有は反感を呼びます」
この問題はもちろん分かっている。
そして3つ目の問題にも気付いた。
「三つ目、勇者様の可否です。このままシューザルハ王国の申し出を受けて、貿易を優位に進められればありがたいですが、いざと言うときに、勇者様は隣国を救う事を承諾してくださるでしょうか?」
「それは何とも言えないですね、、、」
勇者様が何て言うかは全く読めない。
私に対してはそうでも無いのだが、訓練や講義をボイコットする事が多々あった。
それに、勇者様が訓練や講義をボイコットすると他の召喚者達もそれに倣うのだった。
軽くなったと思った肩が再び重くなる。
「とりあえず、全ての召喚者達が訓練や講義をボイコットする分けではありません。そういった者達に重点的に訓練と講義を行い、少しでも早く軍力を上げていきましょうか。シューザルハ王国の要請の際はその者を派遣出来る様に進めて行きます。比較的にですが『魔導技術』に興味のある人間が多い様ですし、戦闘員の派遣より新しい技術の派遣の方が先に目処が立つやもしれませんな」
「すみません、その様にお願いします」
「あぁ、あと、『タナカヨウイチ』とかいう男はどうしますか?」
「城を出ていった男ですね、、、」
そう言えば、、、。その事は忙しくて忘れていた。
「すみません。出来るときで良いので、少し探してみてください。見つかったら謝罪と、保証を」
私がそう言うと、ハイデマンは深く頭を下げて部屋を出ていった。
問題が一つ片付くと問題な三つも四つも出てくる。
泣き出したくなるがそんな事をしてもどうにもならない。
最初に勇者を召喚すると神託があった時は、こんなことになるとは思いもしなかった。
それが、一人だけの筈だった召喚者は29人もいて、
召喚者達の住む場所に、食べ物と、着るものだって。
問題を上げていたらきりがない。
次から次へと問題は山積みだった。




