06 : 月夜の旅立ち
その後老師は、涙に加え鼻水まで垂れ流して部屋に突撃してきた秘書官によって連れ戻された。老師の茶目っ気で滞っていた仕事が無事に進むことを、引きずられながらバイバーイと手を振る好々爺に手を振りながら笑美は祈った。
おじいちゃんは魔王討伐に行かないのかと笑美が質問すると、足腰が弱く少し歩くだけで文句を言い出すから連れて行かないのだとサイードが憮然として言い放った。サイードは、昼頃に笑美と冬馬は馬に乗ることが出来ないと伝えた時と同じ表情をしていた。
結局、笑美の食事については道中に色々と観察、もしくは実験していこうということになった。
幸い、まだ喚きたくなるほど笑美は空腹を感じていなかった。しかし、これがいつまで持つかはわからない。普通にトイレにも行きたくなるし、眠くもなるようだ。
笑美は明日からの行道に初めて一抹の不安を覚えた。
「私も執務に戻ります。何かあればメイドへ、お二方は体力温存の為、必ず出立までしっかりと休息をとられますよう」
「えーー俺まだ全然眠くないんだよね。誰か暇な魔法使いとかいないの? 練習とかしときたいんデスけど」
サイードの言葉に全力で反対したのは冬馬だった。窓の外はまだ日が出ている。こんな時間から眠れと言われても、健康な若者にはいささか厳しいものがある。
サイードは冬馬を振り返ると、静かな口調で告げた。
「かしこまりました。勇者様のお気に召すような魔法の書を抜粋して、後ほどメイドに数冊届けさせましょう」
「りょっかーい」
なるほど。難しい本を読ませて眠らせる作戦にきたわけか。と笑美は感心した。
しかし、サイードの冬馬に対する話術の巧みさは見事なものである。
笑美はこの世界に呼ばれた理由を思い出していた。建前は聖女として、本音は台風を蹴散らす晴れ女。けれど今、笑美にはそのどちらも満足にこなせていない。
サイード達が退出して静かになった部屋の中で、笑美は心に迫ってくる焦りを感じた。
老師に魔法で気絶させられていたメイドは、既に仕事に戻っている。水も飲めない、食事もとれないこんな客壺の世話についてしまい、彼女も暇だろう。
しかし、メイドは文字を読めるのだろうか。この世界で日本語が読める人間は非常に少ないような言い方をサイードがしていたことを笑美は思い出す。
もしもの場合はボディランゲージで頑張るしかないな、と笑美は肩を落とした。
笑美の懸念を嘲笑うかのように、その後は何事もなく時間が過ぎていった。
体を漱ぎ、寝間着に着替えると笑美は早々とベッドに潜り込んだ。体を横にしてしまうと必然的に壺も横たわってしまうため、笑美は座位のまま寝なければならなかった。
両脇に枕を挟み、固定する。笑美は旅の道中の眠り方を想像して魂が抜けそうだった。
笑美が眠りしばらく経った頃。夜更け近くに、冬馬が再び笑美の部屋へ来た。笑美は対応する厳しいメイドの声で目を覚ます。
「聖女様はすでにお休みになっておられますので――」
「なんで俺らを隔離するんだよ! あんたら何か企んでんじゃねえだろうな!」
一人になったことで心細くなったのか、冬馬がぎゃんぎゃんと廊下で騒いでいる。全く主人公がこれでどうする、と笑美は寝ぼけ眼でベッドを抜け出した。
履物も履かずにぺたぺたと歩いてメイドの隣まで笑美が行くと、メイドが厳しい顔をして笑美を振り返った。笑美は寝ぼけ眼でうんうんと頷くと、自分でドアの鍵を開けた。
「もし俺らに何か――フベラッ」
よほど近くにいたのか、ドアを開けた衝撃で冬馬が跳ね返る。
笑美は冬馬を見て、うんうんと頷いた。眠い目をこすりながら、よしよしと笑美が冬馬の頭を撫でる。
『大丈夫大丈夫、怖くないでちゅからねー、ねんねちまちょうねー』
頷きながら頭を撫でると、笑美は冬馬の手を取ってブンブンと上下に振った。そしてピシッと気を付けをすると、冬馬もつられるように気を付けをした。
『せんせーおやすみなさい、みなさんおやすみなさい』
おやすみなさい、の音に合わせて笑美が頭を下げると、冬馬もぎこちないながらもタイミングを合わせてきた。
「ト――壺姫っ」
『おやすみぃ』
ばいばぁいと笑美が手を振ると、冬馬は少しばかり淋しそうな顔をした。しかし笑美の自然な様子に安心したのか、冬馬は律儀に手を振り返した。
***
「壺姫様、壺姫様。起きてくださいまし、出立の支度を始めます」
メイドの声で目が覚める。笑美は欠伸をかみ殺して布団から抜け出した。何をすればいいのかわからない笑美に、メイドが的確な指示を飛ばしていく。
肩幅で足を広げて、手はぴんと横に張って、体の軸をぐらつかせずに。メイドの言葉に、うんうんと寝ぼけながら返事をしていく。立ったまま眠りそうな笑美に頓着せず、メイドはテキパキと笑美の支度を整えていった。
準備が整ったころに声をかけられ、笑美は漕いでいた船の舵を握った。向けられた鏡を覗き込み、出来栄えを見た瞬間、笑美は悲鳴を飲み込む。あぁそうか――
『壺だったんだっけ……』
慣れる日は来るのだろうか。
笑美は鏡を触る。いつまでたっても見慣れない、白い陶器の壺がそこには鎮座していた。あまりにも艶やかな自分の顔を見て、笑美ははぁとため息を零した。
纏っているゆったりとしたワンピースは日中に着ていたものと似ている。ようやく目が覚めてきた笑美は、身振り手振りで自分が着ていたセーラー服の所在を尋ねた。
異世界トリップと言えば、セーラー服女子高生が鉄板である。せっかく女子高生の身分で異世界にトリップしているのに、セーラー服を着ないなんて偉大な先人達に顔向けができない。
「壺姫様の着用なさっておられたご衣裳はこちらに」
笑美は受け取った衣装にさっそく着替えた。ぱきっとプリーツの利いたスカートに、真っ白のセーラー服。そうそうこれよこれ、と笑美は満足して頷いた。
メイドがクローゼットの中からリュックサックを取り出す。笑美が寝ている間に用意したのだろう。笑美の旅に必要なものを詰め込んでくれていた。
「それでは、ただいまより細々とした説明をさせていただきます」
メイドはリュックに詰めていたものを一度ベッドに並べる。ベッドの端から端まで並んだ布や皮、鉱物で出来た見慣れぬ小道具をまじまじと見ていると、メイドが淡々とした口調で言った。
「女性の手があるとは言え、いつ何時何があるかわからぬ旅路。しっかりとご清聴願います」
笑美は心を無にして講義を受けた。
***
メイドの説明を頭に叩き入れた笑美を待っていたのは、渋い顔をしたサイードだった。
旅の道具の説明が終わり、順にリュックサックに詰め込んでいると、コンコンとドアがノックされた。
入ってきたサイードと入れ替わりに、メイドが頭を下げて退出する。旅の準備を終えたサイードは、昼間とは少しばかり異なる意匠を身に纏っていた。
笑美の前に立ち、しげしげと姿を眺めたサイードが眉根を寄せる。
「命じておいた衣装とは違うようですね」
『異世界トリップ女子高生って言ったらセーラー服なの!』
これがいい! とヒシッと笑美は自らの体を抱きしめた。里心がついたものを無理に引き離すのは得策ではないと冬馬で身に染みていたサイードは仕方なくそれを許容した。
「守護をかけましょう、どうぞこちらへ」
サイードは目を伏せてため息をつきながら笑美を呼んだ。笑美は素直にサイードに近づく。
「もう一歩」
声に導かれて、サイードの胸ギリギリのところまで足を進めた。
近づいてきた笑美を、サイードは両手で包み込むように輪を作った。サイードの胸元しか見えない笑美には彼が何をしているのかわからなかったが、セーラー服がカイロのように暖かくなっていく。この世界の魔法は、呪文を唱えなくてもいいのだなぁと笑美はサイードの服の刺繍を目でなぞりながら考えていた。
あまりにも長い時間続くものだから、刺繍を見つめるのにも飽きてしまった笑美は暇を持て余していた。暇を持て余した神々なら遊べるのに、聖女様は遊べないらしい。
何かないだろうかと、手慰みにサイードの髪を掴む。
『雪みたい……』
あの日見た、春の雪を思い出す。桜吹雪に舞う白銀の髪。
あの時サイードはとても魅力的な笑顔を浮かべて笑美を見ていた。それが今では、目を合わせる事すらない。
笑美の手が触れたことでピクリとサイードの体が強張ったが、術を止めてまで何か言うつもりはないらしい。
笑美はサイードの垂れたままの髪を指先で弄んだ。その絹のような手触りに、心が震える。サイードの白銀の髪は、見た目からくる予想を裏切らせない手触りだった。指で梳き、掬い、絡めて、編み込んでいく。
今朝時間がないからと電車の中で結ぼうと思い、スカートのポケットに突っ込んでいたヘアゴムを笑美は取り出した。三つ編みを終えた笑美が先っぽを縛り終える頃には、サイードは両手を降ろしていた。
「――」
サイードは何かを言いたそうに口を開き、そして閉じた。首を傾げる笑美に、何を言っても無駄だと思ったのかもしれない。
「合流します。こちらへ」
笑美に外套を羽織らせると、サイードはくるりと身を翻す。笑美は、ありのままの私でいたい女王スタイルになったサイードの後ろ姿を慌てて追いかけた。
廊下を出るとコヨルが待機していた。笑美の荷物を無言でスッと受け取る。コヨルもまた、メイドのような服装からさっぱりとした旅人の服に着替えていた。闇一色のようなコヨルは、夜に紛れてしまえば姿を追うことは出来ないだろう。忍者みたいだな、と笑美に日本人らしい感想を持たせた。
隣の部屋に冬馬を迎えに行くと、案の定ぐっすりと眠っていた。冬馬は何をしても起きなかったらしい。ぐぴーすかーと涎を垂らしている。旅の支度を施せなかったと至らなさに頭を下げるメイドに、サイードは無言を、笑美は同じ日本人として謝罪を返した。
笑美はスケッチブックを取り出し、コヨルに指示を出した。単語をいくつも提案させては、首を振って却下する。
ようやく望む言葉がコヨルの口から洩れると、笑美は大きく首を縦に振った。大きな声で、コヨルが叫ぶ。
「いつまで寝てるの! 遅刻するわよ!」
「わっ! やべっ母さん今何っ……時……」
飛び起きた冬馬は、腰に手を当てて凄んでいた笑美を見て、てへっと笑った。
夜更けの城内は静かなものだった。細い火を頼りに突き進んでいく廊下は薄暗く、非日常を強く笑美に実感させた。要所要所でザザンッと鎧が鳴る音がする。衛兵たちが、サイードに気付いて敬礼をしている音だった。
城門を出ると馬の嘶きが聞こえた。
ブルルル、と鼻を鳴らす音が静寂に響く。薄明りもない闇に、馬の吐息が溶けた。
馬はハーネスで車輪の付いた四角い箱と繋がれている。馬車である。しかしシンデレラが乗るような可愛らしい馬車ではない。もちろんごりん星の姫が乗る苺の馬車でもない。
素朴だが丈夫に組まれた四角い箱がそこにはあった。これからこの馬車にお世話になるのかと、笑美はひっそりと頭を下げる。
箱の前には椅子があり、そこにヴィダル隊長が座っていた。
「おう、来たか」
ヴィダル隊長が、よっと手をあげて四人を迎える。笑美はそれに応えて、よっと手をあげた。
ヴィダルは討伐隊の誰よりも大きく太い肉体と、誰よりも明るい笑顔を持ち合わせていた。炎のように燃える赤い毛を乱雑にかきあげ、エメラルド色の細い目を更に細めて笑う姿は、まるで真夏を実体化したようだった。
冬馬は、サイード以上にヴィダルに対して複雑な感情があるらしい。視線を逸らし、馬車に興味がある風を装って挨拶を避けた。
ヴィダルの声を聞きつけたソフィアが、四角い箱から出てくる。中を整備していたのだろう。律儀に頭を下げて出迎える。
「勇者様と聖女様におかれましては――」
「あー、俺敬語とか使われ慣れてないし、普通でいいんだけど。そういうのってダメなノリ?」
冬馬の言葉に、ソフィアがパチパチと瞬きをした。尋ねるように視線を笑美に移す。笑美は自分を指さして、片手をブンッと高く上げた。
『私も! 私も敬語いらねっす!』
ソフィアは金色の美しい髪を耳にかけると、困ったように微笑んだ。着ている鎧が、月に鈍く反射する。不出来な笑みのまま、ソフィアは頷いた。
「承知した。気楽にさせてもらおう」
「私もそれでよろしいでしょうか」
敬語に慣れていないのか、この機会を逃すまいとズズイとコヨルが身を乗り出してきた。コヨルは無表情であまり動作が多くない少女だと思っていた笑美は、その積極的な態度に驚いて何度も首を縦に振る。ぽちゃんぽちゃんと水が跳ねてしまった。
「おう、いいよ」
「よかった。助かる」
コヨルはほっと息と同時に言葉を吐き出した。よほど敬語が苦手だったらしい。可愛いな、と笑美はコヨルの頭を撫でた。
「準備は整っていますか?」
サイードがスッと笑美の隣を通り抜けて馬車へと移動する。御者席から振り返ってヴィダル隊長が中を確認した。
「そうだな、当面は問題ないだろう」
「これよりウィロウまでは出来るだけ休息を取らぬつもりです。皆の体力がある内に距離を稼ぎましょう」
「へいへい、お坊ちゃまのおっしゃる通りに」
「お坊ちゃまって?」
サイードが? と指をさして笑おうとした冬馬は固まる。お坊ちゃま、違和感のないご尊顔であったからだ。
「――お乗りください」
馬車に乗り込みながらサイードが言った。その部分には触れずに行くらしい。へーへーと冬馬が馬車に乗ろうとステップに足を延ばす。ぐっと力を入れて体を持ち上げた。
「うへぇ高ぇ」
登れるか? と聞いてくる冬馬にいささかの不安を抱きながら、笑美もステップに足をかける。ぐっとふくらはぎに力を入れた。
全く上がる気がしなかった。
「夜が明けるまでそうなさっているおつもりですか」
サイードのお小言を受け足に力を入れるものの、笑美の体は全く持ち上がらない。
『そもそも掴む場所もないのが悪いと思います! 設計ミス! バリアフリーを視野に入れて! おばあちゃん聖女にも優しい設計を!』
笑美の叫び声は残念ながら、夜の闇に響くことは無い。
「馬にも乗れず、馬車も一人では立ち行かない――」
呆れた声は夜風にのって笑美の耳まで届いた。すみませんねぇ! と重い尻をあげようとするが、上がらないものは上がらない。母に似た安産型が憎い。
『太古の力でなんか風とか吹いてこう尻が持ち上がらんのか! あ、おならは無しで』
笑美が一人でコントを繰り広げていると、すっと手が差し延ばされた。
「お掴まりください」
サイードの白魚の手を、笑美は躊躇なく握った。ぐいっと、サイードを引き下ろすつもりで体重をかける。しかし、サイードは見かけによらずびくりともせず、逆に笑美を簡単に馬車の中に引き上げた。
「申し訳ない。私が先に乗っておくべきだったね」
笑美の後方にいたソフィアは、重い尻を押し上げていいものか迷っていたらしい。同じ性を持つ女だからこその琴線をわかっていただけて、笑美は心底満足した。非常に気にしているこのデカ尻を、こんな美女に両手で押し上げられるなど、閻魔大王さまが許しても笑美が許せそうにない。
馬車の中は綺麗に整頓されていた。壁に沿うようにいくつかの行李と、分厚いクッションが並べられている。床には分厚い絨毯が何枚も重ねて敷かれてあり。派手ではないがしっかりとした作りを感じられた。
日本人の笑美としては絨毯の上は靴を脱いで過ごしたい。しかし、靴を脱ぐことをソフィアに止められてしまった。咄嗟の行動の妨げになるという。笑美は素直に従った。
壁にかけられたいくつもの馬具や武器は、彼らにとって必要なものだろう。誰が引くんだろうと思うほど大きな、祭儀用にも見える立派な弓もあった。
笑美は積まれているクッションのそばに駆け寄ると、一心不乱にすべてのクッションを叩いた。その背後では、乗り込んだ旅の仲間たちが真剣な声で会話をしている。
「馬は都度、都合します。最速で向かいましょう」
ボスボス
「ほいほい」
ポスン
「隊長、交代時間についてですが――」
パフパフ
「あ、ソフィア。お前お肌のために夜寝たい?」
バイン
「え? 夜寝ないで皆いつ寝るの?」
ドスドス
「後ほど説明させてもらおうか」
笑美はひとつのクッションを持ち上げる。固く張りのあるクッションはどれもしっかりとしている造りではあったが、その中でもこのクッションの殴り心地――触り心地を笑美は気に入った。
うんうん、これにしよう。私のクッションこれにきーめーたー。とクッションに抱き付く笑美を、覗きこむ藍色の目が合った。
『わぁっ?!』
びっくりして笑美は声をあげた。コヨルは笑美とクッションを見比べている。
『これ、私のにしてもいい?』
抱え込むほど大きなクッションを突き出して笑美は首を傾げるが、コヨルには通じないらしい。同じようにこてんと首を傾げられた。
この無口具合からすると、メイドの時はあれでも頑張ってしゃべっていたらしい。無口同士って難しいな、と笑美はスケッチブックを取り出して文字を書く。馬車の中は天井に吊るされたランプのおかげで、まだ陽が出ていないというのに文字が書ける程度には明るかった。
【“これ、私 使う いい?”】
文字を見せながら、笑美はクッションと自分を交互に指さした。意味が伝わったのか、コヨルはこくんと首を縦に振る。
やった! と喜ぶ笑美を、コヨルはじっと見つめていた。
どうしたのかと尋ねようとした笑美は、突然揺れた車内に驚いて慌てふためく。
「落ち着いて。馬車が動き出しただけだよ」
「宣告していたはずですが」
慌てる笑美をソフィアが慌てて抱き留める。その様子を見て、呆れたようにサイードが呟いた。
「大変恐れながら、私にもひとつ女神の恵みをいただけますか」
サイードが差し出した手に、笑美は慌ててクッションを置いた。笑美一人が品定めをしていたために、全員に行き渡っていなかったのだ。
ごめんなさい、と笑美は頭を下げる。でも、嫌味な言い方だ。取って、でいいじゃない。まるで私が全部独占しているとでも言いたいような皮肉に、笑美はべっと舌を出した。そんな言い方、スマートじゃない。女の子にもてないぞ。
壺を下げ過ぎて水が零れてしまい、笑美はソフィアに慌てて頭を上げさせられた。
ガタゴト ガタゴト
一行は夜明けへと向かって旅立った。