FileNo.0006 ギルド
ギルドの中は、昼時と言うこともあり閑散としている。
正面には、長い木で出来たカウンターがあり、いまは、一人の職員のみ座っている。俺たちが入ってくると、立ち上がりこちらを窺いだす。
俺は、初めて入るギルドがものめずらしく、入り口を入ったところで室内を見回した。
その間にフィアは職員へと近づくと、話を始める。
室内は、入って右手に打ち合わせなどで使えそうな6人がけの円卓が3卓ほどある。
左手を見れば、壁に掲示板があり、奥に上へと上る階段がある。
全体的に木材が使われており、よく西部劇に出てくるような雰囲気だ。
「広太。こっちに来てくれ」
キョロキョロと室内を見ていると、職員と話しが終わったフィアが俺を呼んだ。
俺はフィアの近くへと歩みを寄せる。
「話は通しておいた。あとは担当に聞いてくれ」
「はじめまして広太さま、受付を担当しておりますガライと申します。早速ですが、登録いたしますので、右手をこのプレートに置いていただけますでしょうか?」
ガライと名乗った受付担当は、カウンターに銀色に輝く金属板を置く。金属板からはコードのようなものが繋がっていて、カウンターの下へと伸びていた。
俺は、素直に金属板の上に右手を置く。すると、
「!?」
突然金属のプレートが光だし、俺の右手を包んでいく。焦る俺を、フィアは面白そうに見ている。
しばらくすると光は徐々に弱まっていき、元の状態に戻っていった。
すると、ガシャンとカウンターの下で機械音がした。
その音を確認したガライは、身を屈ませ、カウンターの下へと手を伸ばす。そして、現れた手には、1枚のカードが握られていた。
「登録完了しました。これより、ハンターギルド会員となります。」
そういいながら、ガライはこちらへカードを差し出す。クレジットカードサイズのカードは、透明なプラスチックのような素材に、蛍光塗料のような文字が書かれている。
日本語でも英語でもない文字だが、なぜか読める。そこには、左上に初級、中央に氏名、ロデブラ支部と書かれていた。
「そちらのカードは、会員証となり、ギルド会員であることの証になりますので、なくさないようにしてください。」
「わかった」
俺は、それを受け取ると、ズボンのポケットへとしまう。
「それで、ギルドについてですが……」
ガライはそのままギルドについての説明を始めた。
基本どこのファンタジーにも存在するような内容だった。
「ギルド会員にはランクが存在しており、初級、下級、中級、上級、星級と言う5つのランクがあります。広太様は、まず初級会員となります。2ヶ月もしくは、一定の依頼を受けることで、下級に上がります。」
「なるほど」
「初級の間は、素材などの買い取り価格が通常よりも優遇されておりまして、通常価格の1.2倍ほどの価格での買い取りとなります。」
「なぜ、そんな優遇が?」
「モンスターの数が年々増えておりまして、ハンターの育成が急務となっています。最初の段階であまりにも安い収入では、装備などの用意ができず、下級になる前に死亡する危険率が高まりますので、ある程度の依頼がこなせるまでの措置です。」
「そうなのか……」
「討伐等の依頼の受け方ですが、左手の掲示板に用紙が張り出されております。掲示板の右手から初級、下級、中級、上級というように張られています。該当ランクの依頼の用紙をこちらのカウンターに持ってきていただければ、受付を行います。ここまではよろしいですか?」
「ああ」
俺は素直にうなずく。
「受付終了後、依頼を行っていただきます。依頼の完了につきましては依頼内容により異なりますので、その都度係りのものに確認してください。」
そこまで言うと、ガライは1枚の用紙を差し出す。そこには、モンスター名と部位、金額と思われる数字が書かれている。
「近隣のモンスターの素材と買い取り価格です。素材の買取は、こちらの建物の裏手に専用のカウンターがありますので、そちらに持ち込んでいただきます。査定には少々時間がかかる場合もありますので、そちらのほうはあらかじめご了承ください。」
「了解した」
「あと、広太様はゴーレム使いだとか」
「!?」
言われた瞬間、俺は驚いてフィアのほうを見た。
フィアは、問題ないといった表情をしていたので、とりあえず落ち着いてガライのほうを向く。
「街へ乗り入れる際は、こちらの布を見える場所に巻いてください。」
そういって、ガライは俺へとさきほど外に垂れ下がっていたものと同じ意匠の布を渡してきた。
「これを巻くだけでいいのか?」
「はい、そちらの布はある一定の方法をとると、所有者が分かるようになっております。その方法は、ギルドの秘匿情報でお教えできませんが、確実に広太様のものだと分かりますので」
「わかった」
「では、これからよろしくお願いいたします」
そういうと、ガライは書類を持ち、奥の部屋へと歩いていった。
「広太、では一度家に戻るとするか」
フィアはそう言うと、サッサと出口へと歩いていく。
「おい、待ってくれ!」
俺は、ハンターとなった感慨にふける暇も無く、フィアに続いてギルドを出た。