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FileNo.0014 発見

 外の様子から、何年も朽ち果てていたであろうことは予想していたが、中に入ると不自然なくらい整地された地面が続いている。

 そして、周りは明らかにコンクリート製。

 どう考えても、現代日本のトンネルのような場所だった。

 ソナーとレーダーの反応から、100メートルほどで扉のようなものがあり、さらに先に体育館ほどの広さの部屋があることが分かる。

 どこか見慣れた場所のように感じるのだが、苔や蔦などで覆われているせいか、"なんとなくそうかも"と思う程度だ。

 なにしろ、こんなトンネル日本に居ればどこにでもある光景であるし。

 一応、罠を警戒しながら歩いていくが、特に熱源もレーザーの反応も無かった。

 そのまま、何事も無く奥までたどり着くと、1体のICEが壁にもたれかかっていた。

 その姿は、ICE-RT002「ボルター2」と呼ばれる、偵察型「ボルター」の後継機だった。

 見た感じ、破損しているような状態ではないが、ほぼ素体の状態で武装はなさそうだ。使われた形跡のない状態で放置されているのも変な話だとは思うのだが。

 ネルソン達は、その機体に近づいていき、いろいろと調べるようである。

 俺も、「レバリー」をそばに寄せようと機体を進めようとしたとき、不意に壁にある文字が視界に入った。


 『SB147』


 俺は絶句する。

 大きく書かれた文字。その文字を見るや否や、俺の頭の中にある光景が広がる。


 「アイカ、ワールドマップ出してくれ」

 

 「イエス、マスター」


 前面モニターに、ワールドマップ表示される。このワールドマップは、ゲームの時には現在位置と主要基地の位置が記された簡単なものだった。

 そして、SB147の位置を確認する。

 SBは「Supply base:補給基地」の略で、簡単な修理と、燃料、汎用弾薬の補給が出来、モンスター討伐のベースキャンプとなっていた場所だ。

 そして、こちらの世界に飛ばされる前に、一番最後に立ち寄った場所でもある。

 と言うことは・・・。


 「アイカ、いままで収集した地形図と、ワールドマップを『SB147』を基点に重ねてくれ。できるか?」


 「イエス、マスター」


 画面上に投影された地図を見る。


 「まんま、ゲームの位置と同じ・・・」


 そう、現在位置からゲーム内で敵と遭遇した位置と、召喚陣が展開されて、こちらの世界に飛ばされたときの位置がまったく同じなのである。

 景色や風景にだまされていたのか、飛ばされた位置まで考えていなかった。


 『それなら・・・』


 俺は、昔のワールドマップを検索し、SBのある位置と、さらにMBと呼ばれる本部基地の位置を、現在の地図に重ねた。


 「アイカ、ここからコンタクトの取れるMBはあるか?」

 

 「MB02:北ランバラのマザーと通信がつながります」


 「なんてこった・・・」


 俺は手で目を覆い、頭を下げ左右に振った。

 もし、本当にMBが生きているとしたら、旅に必要な移動機器や物資をそこでそろえることが可能かもしれない。

 何気なしに受けた依頼だったが、これは大当たりを引いたようだ。


 「広太君」


 外からこちらに手を振り、ネルソンが声をかけて来た。


 「はい、なんでしょう」

 

 「この機体生きていると思うか?」

 

 俺は、ひとまず思考するのをやめ、アイカのハッチを開けると、外へと出る。

 「生きている」と言うのは、こっちの表現で稼動できるかどうか?と言うことなのだろう。

 そう思い、「ボルター2」へ近寄ると、コックピットハッチを空ける。

 中の計器は綺麗なもので、何年もたっているものとは思えないほどだった。

 シートに滑り込み、何個かボタンを押したところでサブモニターが光りだす。

 

 「初期設定を行ってください」

 

 合いも変わらず、某勇者系声優の声がかかる。

 表示されている画面からすると、どうもログイン情報の初期化画面のようだ。

 と、言うことは、登録すれば誰でも乗れるのか?

 燃料の状態は0%と言うことで、ゲームでは購入直後の状態と言うことなのだろう。

 

 「ネルソンさん。とりあえず生きているのは生きているみたいです」

 

 開け放たれた、ハッチから除いているネルソンさんに声をかけた。

 

 「ただ、燃料を入れなければ、動作をさせることは出来ません」

 

 ネルソンさんは、思案するように上を見上げた。数秒考え込んだが、結論が出たようだ。

 

 「そうか、わかった。このゴーレムを運びたいので、外の馬車に乗せたいのだが、そのゴーレムで運んでもらえないだろうか?」

 

 「了解しました」

 

 俺は、いったん「ボルター2」の電源を切り、ハッチから外へ出ると、再び「レバリー」に乗りこみ、目の前にある「ボルター2」へと進む。

 一旦機体をうつぶせにし、両脇に手を入れ抱え上げると、そのまま「ボルター2」を浮かして外へと歩みを始める。

 

 「ネルソン、機体を持って帰れるのね!」

 

 ネネカは驚きの表情で、ネルソンに問いかける。

 

 「ああ」

 

 その言葉でを見ていたネネカとグルースは、喜びの表情を浮かべた。

 

 「いやー、いつもは持ち出すの大変なのよねー」

 

 抱えられて移動している「ボルター2」を見ながら、ネネカが言う。

 それはそうだろう、偵察型のライトタイプとはいえ、軽く2トンは超える機体だ。そうやすやすとは動かすことは出来ないだろう。 それならば、喜んでいたのもわかる。

 

 「いつもは、どうしているんですか?」


 「俺は使えないが、軽量化の魔法を使う奴がいる。そいつを雇っているな。あんまり使える奴が居ないんで、引っ張り合いになってるんだ」

 

 グルースも上機嫌そうだ。

 特に苦も無く、「ボルター2」をトンネルの中から運び出すと、馬車へと積み込む。

 馬車に乗せたがために、重量オーバーで歩いて帰らざるおえなくなるが、3人の足取りは軽かった。

 生きているゴーレムを回収できたことで、依頼料が跳ね上がるらしい。

 依頼料を何に使うか話をしながら帰る3人の横で、「レバリー」のなか、次にどうするか考えながら、俺はロデブラへの帰路へとついた。


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