FileNo.0013 途中
翌朝、フィアの家の倉庫を覗いていた。
防御用のタワーシールドは問題ないとして、さすがにアサルトライフル等の武器をそのままさらすのはいかがなものかと考え、代わりになる武器を探したのだ。
キョロキョロと辺りを見回すと、ちょうどよさげなハンマーが立てかけたあった。
長さ1.5メートルくらいの柄に幅30センチほどのハンマーヘッドが取り付けられている。
「レバリー」で振って見たところ、問題なく使えそうだったので、これを武器にすることにした。
フィアには申し訳ないが、右手でハンマーを担ぎ、左手にタワーシールドを携えて、ロデブラへと向った。
待ち合わせ場所であるロデブラの北門の前に着くと、そこには馬車と共にネルソン達が談笑しながら待っていた。
「すみません、遅れましたか?」
「いや、時間通りだよ」
片手を上げてネルソンは問題ないという表情で挨拶する。
「では、行こうか」
ネルソンはそういうと、馬車の御者代へと上がり、残りの二人は幌の張られた荷台へと上がって行く。
「広太君は、後ろから付いてきてくれ」
「わかりました」
ネルソンは、手綱を打ち馬車を発車させる。俺は、レバリーを馬車の右斜め後ろにつけ、追従する。街を出るとしばらくは牧場が続いた。
牛に近い3本の角があるボクーラという家畜の飼育が盛んなようで、広がる牧草に点在していた。
進んでいる道は街道なのであろう、それなりに人が行き来している。
何台かの馬車とすれ違うたびに、物珍しそうにこちらを見ていった。
時折除くレーダーを見ていても、特に襲い掛かってくるような魔物は存在せず、比較的主要都市に近いこともあるせいか、盗賊の類も居ないらしい。
このままスムーズに現場に着くことを願いつつ、ネルソンたちの他愛ない会話を聞きながら歩みを進めていく。
しばらくすると緩やかな山の裾野見えて来た。
「広太君。ここから森の中に入る。後方の警戒をお願いしていいかな?」
「了解しました。」
目的の遺跡はこの山の中腹にあるらしく、目の前に広がる森の中を進んでいくことになるらしい。
森の木は、幹が3メートルくらいの太さで、高さが40メートルくらいあろうか。
そのため、森と言っても木と木の間がそれなりに空いているので、馬車が入っても問題ないくらいだ。
木漏れ日が地面を照らしているため、比較的明るくそれなりに視界もいい。
この分なら、戦闘になっても「レバリー」を振り回して問題ないだろう。
「アイカ、後部監視を頼む」
「イエス、マスター」
辺りを警戒しながら歩みを進めて、数十分と言ったところだろうか?
正面が開け、50メートルはあろう岩壁が現れる。そして、ちょうど正面に目的の場所であろう洞窟が穴を開けていた。
ネルソン達は、馬車を穴の入り口の脇に止め、近くの木に手綱をくくりつけると、穴の中に入る準備を始める。
特に準備が必要の無い俺は、ネルソンに断りを入れて、穴の様子を探ることにする。
穴の大きさは、高さが5メートル、幅が7、8メートルと言ったところだろう。
入り口付近は、若干崩れ、苔むしているので、普通の洞穴のように見える。
中の様子を探るべく、レーダーを発信してエコーを確認すると、ほぼ長方形の形で穴が続いており、明らかに人工的に作られたトンネルであることが分かった。
「ふむ・・・・・・」
と考え込んでいるとネルソンから声がかかる。
「広太君、我々の準備もすんだ。このまま洞窟に入っていくが問題ないかい?」
なんとなく引っかかるところはあるものの、考えていても埒が明かないことは明白なので、思考を停止させる。
「了解です。明かりはどうしますか?」
「いま、ネネカが松明を点けるよ」
「それなら、こちらに光源があるので、こちらに任せてもらっていいですか?」
俺はそういうと、「レバリー」を入り口に立たせ、肩口のサーチライトを店頭させた。
「おお、明るい!?」
松明をつけようとしていたネネカは驚愕に目を見開く。
「ライトの呪文が使えるか・・・・・・」
グルースは呆れたように呟く。
「このぐらいの光量で大丈夫ですか?」
「ああ問題ないだろう、では私が先頭にたつので、ネネカとグルースの後方から照らしてくれるかい」
「了解しました」
「それじゃあ、行くぞ」
ネルソンの合図で、俺たちは洞窟の中へと進んでいった。