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FileNo.0012 依頼

 ギルドを出て「レバリー」へと戻ろうとしたとき、3人組の冒険者が近づいてきた。

 先ほど応援として来た、3人組だった。

 

 「さっきは急いでいたようだね」

 

 リーダー格であろう剣士の男が声をかけて来た。

 

 「ああ、さっきはもうしわけなかった」

 

 「いや、そちらの都合もあるだろう」

 

 特に気にしていないという身振りで話す剣士は、年のころなら20代後半。壮観な顔つきに、浅黒い焼けた肌のいかにもなマッチョな冒険者だった。

 

 「で、なにかようですか?」

 

 「君にお願いがあってね、少し話をいいかな?」

 

 俺は、しばし考えた。この世界にまだなじんでおらず、話を聞いていいものか判断がつかなかったからだ。

 彼らに含むところは無い。どちらかと言えば、威圧的な態度を取られているわけではないし、言動もいたって普通だ。

 しかし、何が常識かも分からない状態で、単純に話をしていいものか迷ってしまったのである。

 そんな様子を、剣士はこちらが警戒をしていると判断したのだろう。

 

 「そういえば、名前も告げていなかったな。私は、ネルソンと言う。君と同じ、このロデブラ支部に所属する上級冒険者だ」

 

 そういうと、ギルドカードを見せてくる。確かに書かれている内容は、言われた通りのものだった。

 

 「そして、弓を持っているのがネネカといい、同じく上級冒険者」

 

 紹介された、ネネカは片手を挙げ挨拶する。年のころは20代そこそこ。茶色い髪を方まで伸ばし、髪を赤いカチューシャで止めている。どちらかと言えば、やや幼い顔立ちだが、十分綺麗な部類に入る人だろう。

 

 「で、杖を持っているのがグルース。やはり上級冒険者だ」

 

 グルースは、腰を曲げ礼をする。背格好は小さく、中学生位に見える。フードをかぶっているため、髪の色などは分からない。もしかしたら、種族が違うのかもしれない。

 

 「俺は、広太。ギルドに登録したばかりの初級だ」

 

 「初級なの?それでオークを6匹も?」

 

 ネネカは、そんなはずは無いと言う様に目を見開き驚いている。

 

 「たまたま、ゴーレムを使うことが出来たからな」

 

 「それだけで、オークをあの短時間に6匹も……」

 

 どうも、この世界ではICEはそれほど活躍していないらしいことが分かった。ゲーム時代では、オークなど初歩の初歩的なやられキャラであり、少なくとも初心者でもなければ、1機で蹂躙できるレベルだったからだ。

 俺は、若干とまでってしまう。

 

 「まぁ、立ち話もなんだから。とりあえず、そこの酒場で話さないか?」

 

 「あ、ああ。わかった」

 

 剣士はそういうと、そのまま酒場へと入っていった。

 俺も、とりあえず話だけならと思い、後に続いた。

 入った店は、こじんまりとしたテーブルが5脚でカウンターの無い店だった。

 右手の一番奥の席に着くと、奥からウェイトレスのお姉さんが近づいてきた。

 

 「ご注文は?」

 

 「とりあえずビールを3つ、広太君はどうする?」

 

 話をするのにビールかよと、突っ込まなくも無いがとりあえず俺は飲めないので別のものを頼むことにする。

 

 「アルコールの入ってないものありますか?」

 

 「リンゴジュースならありますけど」

 

 この世界にもリンゴはあるらしい。

 

 「ではそれで」

 

 「はーい」

 

 とお姉さんはそそくさと奥のほうへ引っ込んでいった。

 

 「で、上級の皆さんが俺に話と言うのは?」

 

 「ああ、ちょっと協力してもらいたいことがあってね」

 

 「協力ですか」

 

 「実は……」

 

 話の内容を要約するとこうだ。北にある洞窟に、ゴーレムらしきものが眠っているらしい。それをギルドを通して回収してほしい依頼が指名で舞い込んだ。知り合いの指名依頼、且つ、難易度もそれほどではないので引き受けるのはやぶさかではないが、ゴーレムに詳しい人間が一人も居ない。どうしたものかと思案していたところ、ゴーレムを操る俺が現れたので、協力してもらえないかと言う話らしい。

 途中で届いたリンゴジュースを飲み、一息ついたところで確認する。

 

 「話は分かったけど、俺は初級だけどいいのか?」

 

 ネルソンは頷く。

 

 「もちろん、報酬の金4枚は4等分するし、戦闘面では我々が矢面に立つ。あくまでもゴーレムに関してアドバイスをもらえればいい。本来であれば、高名なフィア=フォーリア殿に頼もうと思ったのだが、あいにく留守にされているようでな……」

 なるほどね。当てが外れたところに、いい具合に俺が居たと言うことか。


 「ああ、入れ違いになったのか……」

 

 俺は、何気なくつぶやく。

 

 「フォーリア殿を知っているのか?」

 

 驚いたようにネルソンは言った。

 

 「ああ、縁があって居候させてもらってる。3日くらい戻らないと言ってたっけ……」

 

 「そうなのか。では、余計に君に頼まなくなってしまったがどうだろう?」

 

 俺は考える。ICEがこの世界でどういった状態になっているかは興味があったし、協力するのもやぶさかではない。問題はこの人達が信用できるかどうかだ。

 

 「ちなみに、何時から洞窟に行くんだ?」

 

 「あぁ、今日のうちに出かけようと思っていたが、フォーリア殿が不在で、さっきのオークの騒動もあったからね。明日の朝にでも出ようかと思っている。」

 

 「では、夜まで返事を待ってもらっていいですか?」

 

 「ああ、かまわないよ」

 

 「わかりました、夜に返事をします。夜はどちらに居ますか?」

 

 「この通りを北門のほうに歩いていったところにあるウェストクロス亭という宿に居るから」

 

 「では、夜にそちらに伺います」

 

 俺はリンゴジュースを飲み干すと「ご馳走様でした」と挨拶をし、席を立って酒場を出ると、そのままギルドへと引き返した。

 一応、信用できるのか確認を取るためだ。

 ギルドに入ると、ガライを見つけネルソン達の話を聞く。ガライの話では、このギルドでも優秀な冒険者のようで、悪い話は聞かなかった。

 不安が無いわけでもないが、ギルドの人間がが人物を保障したことで、問題ないだろうと判断した俺は、ギルドを出るとウェストクロス亭へ向う。

 まだそんなに時間がたっておらず、居るかどうかは分からなかったが、ちょうど入り口でネルソン達と鉢合った。

 俺は、依頼を受けることを告げて、明日の待ち合わせ場所を確認した後、フィアの家へと帰った。


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