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俺は結構普通じゃないって評価をもらう。どうでもいい人のそんな評価を気にしていないつもりだったけど、ずいぶんと気にしているんだとわかったのはほんの昨日の事だ。
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一睡もせずに学校へ行くと、好きな人はいつもと同じように笑ってくれた。けど、同じように俺を守ってくれた親友はいなかった。
好きだって聞こえた気がするけど、いつもの好きなの。それとも恋人の?
親友はどうなったの。
俺はどっちも聞けなかった。
いつも迷惑を掛けていると知りつつ笑いかけられると飛んでいってしまったが、今日だけは足が動かなかった。
親友は俺が好きな人に守られに行くのをどんな目で見ていたんだろう。
俺は好きな人ばかり見ていて思い出せない。
嫌な事があるとトイレに逃げ込む女子がいたが、俺も今日、始めて同じ事をした。好きな人は流石に入ってこられない。
授業休みのたびに外へ出て、面倒なので明日は休もうと決めた。俺の家は好きな人も気軽に入ってこれるので公園で時間をつぶす。
向かった先に昨日の変人がいた。
「どうだった?」
「言ってない。それより、親友も同じ人が好きだったみたいだ。親友はとてもいい人なんだ」
「それでも恋人は一人だけよ。しょうがない事だわ」
「うん。だから俺は戦わない事にする。告白する前でよかった」
「あんた・・・・・最低だわ」
誠実じゃないのは確かだ。
でも、俺はどっちも好き。親友が好きな人と上手くいくなら他の誰かに取られるよりはいい。
自分勝手だけど、親友にとってはいい話のはずだ。
好きな人は・・・どうなんだろう。
「俺の事、二人とも守ってくれてた。一緒にいたし、仲も良かったよ」
親友が同じ人を好きだったのなら、俺も俺を苛めていた彼女たちも足踏みしていた中で親友だけが好きな人の隣で頑張っていたんだと思う。俺は好きな人ばかり見ていて全然気付かなかったけれど。
かわいいじゃん、そうゆうの。
女の子らしいというか、彼女にするなら無難だよね。俺は普通じゃないと言われるくらいだからキワモノだろう。明らかに何か駄目な俺が太刀打ちできるものじゃないって言うか。改めて好きな人の人気ぶりが見えて、どれだけ俺が邪魔なのか身に染みるってものだ。濡れた服がそれに一役かってないとは言わないけど、彼女たちはきっと好きな人の眼鏡には適うまい。わかり安すぎるから、きっと好きな人だって気付いている。
「考えると親友こそが相応しいって思えるんだ。二人並んだら絵画のように美しいだろうね」
「美しくなんか無いわよ、そんなもの」
「そうかな。どちらにせよ同じ人を好きならいずれ変わってしまう関係だ」
恋愛は一対一。だからこそ正々堂々と戦えと息をまく変人は、恋愛こそ全てと豪語するだけあって真っ直ぐ進んでいるんだろう。
俺だって俺を苛める彼女たちが同じ人を好きなことを知っていたけど煩い以外は全く気にしてない。遠慮して告白を止めようなんて思わない。
けど親友は、俺のただ一人の親友なんだよ。
ただ一人の好きな人と、ただ一人の親友。最低でもどちらか失わなきゃならないのかなぁ。
いいや。俺が何もしなくても、誰かが動けば変わるしかないんだ。・・・そういえば。
「今日、学校に来なかった」
もう変わってるんだ。
親友は動いたんじゃないのか?俺が告白しようとした事をきっかけに。
俺が。俺が浅はかだった?
俺はその足で親友の家へ向かった。
***
実は親友と好きな人の家はお向かいさんだ。俺の家は少し離れているけど、俺が二人の家に行かないので二人が俺の家に好きなときに押しかけてきてなし崩し的にたまり場となっている感じだ。特に好きな人は俺よりも俺の部屋で起きている時間が長いんじゃないかと疑ってしまうほど家に帰れば部屋にいる。彼女らが怒って苛めるのも頷けてしまう気がちょっとするんだ、俺にも。
好きな人にとってちょっとは特別だろうって、俺だって思うんだ。それが昔から手のかかる同級生って意味でも、明らかに放置したら危ないって理由でも、羨ましいものだろう。
俺にしてみればそんなの兄弟と同じだろうって思う。近くにいて特別だけど、本当の特別にはなれないんだ。
わざわざ言うまでもなく、俺なんて対象外なのだ。
「ごめんね。ちょっと具合が悪いようで、今日は無理みたい」
嘘。さっき親友の苛立った声がこっちにも聞こえた。
けれど、そうか。俺の顔は見たくないかもしれない。
「そうですか。早く元気になってって伝えてください」
「ありがとう。伝えておくわ」
次の日も親友は学校を休んだ。




