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俺と親友と好きな人  作者: トコ
俺と残念なファンタジー
21/23

親友の決着2

「ごめんね。普通の女の子はそれでいいんだとわかっているはずなのに、八つ当たりして」

「いいえ。私こそ何もできなくてごめんなさい」


 私がどこにいるかわからない友人と目の前の彼の関係に思いを馳せている間に彼は落ち着きを取り戻したようだったわ。私は・・・これ以上私が止めても彼には嫉妬としか映らないでしょう。確かに私は嫉妬ばかりだけれど、今引き止めているのは皆の為なのに。普段が普段だと伝わらないものね。


「君はどうする?」

「私は・・・」


 ついて行っても邪魔になるだけに思えるけれど、別れる選択肢は無かった。友人がいない間だけでも隣に居たいという惨めな本音を押し隠し答えを口にする前に彼の胸の辺りから音が鳴る。随分とアナログな電話に見えるけれど・・・と考えているうちに彼が電話に出る。


「どうしました?・・・えっ?確認します」

「なっ・・・?」

「医療区画が制圧されたらしい。確認に行こう」

「医療区画が!?なんて非道なの!!」

「今は善悪を論じる時じゃない。君は?」

「行くわ!」


 私たちは普通に道を歩いているが、侵入者はそれほど多くないと感じていた。医療区画を制圧できるほどの武器か何かを持っていたのだろうかと走りながら聞くと、電脳制圧だという。


「医療区画は万一電力および電脳空間が遮断されても大丈夫に設計されている。ただし電脳空間がダウンした場合サーバーを維持するのにかなりの電力がかかるはずだよ。通常の電脳空間は既にハッキングされて遮断されているだろう?もし一時的にこれらが回復したら・・・」

「病院のサーバーを停止して電力の回復を行うかしら・・・あっ」


 遮断されたローカルネットワークは外部からの侵入が難しい。けれどインターネットに繋がればこれらは容易くなる。都市のネットワークを制圧できる腕前の持ち主ですもの、予備の病院のネットワークなど問題にならないでしょう。


「なんて事・・・」

「今町長に投稿の呼びかけが来ている。と言うより見せしめになれって脅迫かな。父が僕に頼みごとをするとはね」

「本当なら町長はどうするのかしら」


 聞きながらも予想は付いていたわ。確認するよう連絡が来るというのは、そういうこと。


「目的は何なんだろうね。町長をどうにかしても町が消えるわけでも教育都市の価値を否定する事にもならない。徒に父たちを怒らせるだけだ。それに教育都市の理念は教育にある。フェリオを襲っても何のメリットもないように思えるけれど」

「メリットって?」

「利益だよ。戦争には人と物が必要になる。それを投下する理由が必要じゃないかな」

「戦争コミュは元々戦争をしたい人たちが集まっているのではないかしら。したいことをするのに理由が要るの?」

「それを言われるとなんともなぁ」


 教育都市フェリオが子供の教育を理念として掲げているように戦争都市は戦争を行うことの重要性のその効果を知り、理念として掲げているんじゃないかしら。その理由が私に理解できるとは思えないけれど。でもそれ以外、現実的に戦争コミュの人たちが生活していくことを考えれば、友人は攫われるべくして攫われたんだわ。


 教育都市の価値をアピールできるほどに素晴らしい能力の持ち主だもの、これ以上の戦利品はないでしょう?



 ***


 病院へ戻ると入口のシャッターが閉まっていた。24時間365日体制で動いているはずの病院の入口にシャッターが付いていた事に私は驚き、有事のためなのだろうと思い当たると皮肉に唇をゆがめるしかなかった。


「・・・決まったね」


 決まった。確認は取れた・・・けれど、そうしたらパパたちはどうするのかしら。

 私はパパがフェリオとエマヌエーレ町長を大切にしていることを知っているのに、事実を話して選択を迫らないといけないの?

 ゆっくりと彼を見上げる。


 ―――彼は


 友人に関して同じ選択を迫られたらどうするのかしらね。

 友人はいなくて彼と一緒なのに・・・こんな所で私ってば友人のことも大切なんだわなんて思い知らされるとは思ってもいなかった。

 事実を伝えようとする彼にがっかりするともね。

 だって私、散々友人を恨んできたもの。

 私の方が彼に会って長いし、先に好きだったのに。隣にいることを夢見て頑張ったつもりなのに。教育都市で誇れるもの全てに対して手を抜いたりなんてしなかった。友人はフェリオに拘りがないようだし、教育者として残れるとも当時は思っていなかったのよ。・・・天才だなんて思ってもみなかったから。

 だから。

 短期間で私の努力を超えてしまう才能に気づいたときの私の絶望、わかるかしら。


 大嫌いなのに、何故か友人は私の後ろから離れないのよね。というよりものすごく好かれているのが伝わってくるのよ。こっちは一杯々々だっていうのに何かできる度に「褒めて」と尻尾振ってくる!何なのもうあの子!!

 嫌いだけど、嫌い続けるのは大変だし難しいわ。嫌いにならないようにするのと同じくらい。どちらにもなれない自分が恐ろしくて憎しみが増してしまいそうよ。

 だって私は選ばれなかったんですもの。


「――――ァブレット」

「えっ?」

「タブレット持ってるかしら?私のは無くなってしまったの」

「ある。ここだよ」

「貸して」


 都市計画の講義を思い出す。大まかに電気とウェブ回線は街が形になってきた時に作られた掌通りと呼ばれる五本の大通りの地下にある回線から配線を取るのよね。だから多分この辺りに点検口が・・・あった。

 大急ぎでタブレットを繋ぐ。病院側の回線は今は無視。街のネット回線は復旧していた。


「応援を呼ぶわ。それまでここの回線を維持しなきゃ」

「へっ?」

「見つからなければいいけど」

「ごめん、説明」

「ハッキングって大抵その場にいるわけじゃないのよ。外のネット回線からアクセスしてる。病院のウェブ回線の配線を引いてるのがここだから、この回線が物理的に切断されてしまえばどうにも外から接続しにくくなるわ」

「しにくくなる?」

「ええ。リモート回線を使えば外からでも接続可能だけど、情報伝送力が低いし電波の届く範囲に限界があるの。病院は有事の為にローカルネットで何とかなるようにできているはずだから・・・」

「有利になるって事か。中にも武装勢力がいるね」

「パパ達に何とかしてもらいましょ」

「うわあ父に助けを求めなきゃならないのか」

「そんな事言ってる場合じゃないでしょう。それとネットセキュリティに詳しい人に中から守ってもらわないと」

「わかっているさ。そちらは君が連絡を取ってくれ」

「ええ?私そんな知り合いはいないわよ・・・」


 “パパ達に何とかしてもらう”のくだりで嫌そうな顔をした彼がにやりと笑う。言っておきますけれど私は何も嫌がらせで言ってるんじゃないのよ。武装した大人達を相手に私達で何とかできるなんて思えないでしょう?


「新聞部だよ。あいつそーゆうの得意なんだ」

「ええ?私あの人苦手だわ」

「そんな場合じゃないだろう」

「・・・っ!!そうだけど」


 それとこれとは別なのよ。

 口の中で言い訳をしているうちに彼は電話を取り出して話しはじめてしまったわ。電話の向こうにいる彼のお父様が何か言っているのが聞こえる。彼が彼らしくもない口調で「責任なら僕がとります」と言い捨てて電話を切った。


「一時間。それ以上は待てないそうだ」

「本当に私が電話するの?」

「僕だって電話しただろう」

「貴方が電話してもいいじゃない」

「ごねてる場合じゃないだろう」


 ええ!?

 いきなり無茶を言い出してごねさせているのは誰だと言い返したいが、彼が嫌々電話した後なので私ばっかりが嫌な事を避けているような気分になってしまう。でも、好きな人に他の男に電話するよう急かされるのはひどく切ないし―――やりたくない。

 私が電話を前に戸惑っていると彼が突然噴出した。


「冗談。あいつも随分と嫌われたものだね」

「・・・ごめんなさい」

「いや。からかって悪かったよ。余裕がなくてさ」


 自分を落ち着かせる為にからかってみたのかしら、と普段の友人とのやり取りを考えてみる。彼に余裕がないときでも友人は常にマイペースで彼の非や狭量を突いていた。その上で「可愛いからいいよ」なんて言い放ち、ものすごく情けない顔をさせていたなんて気づいてない。彼がそんな顔をするのは友人に対してだけだなんて。

 私にはできない事をする友人を憎まずにいられなかったけれど、彼女がいないからこんな形になるのかと納得したわ。友人のせいで彼がいつもと違う顔をすると思っていたけれど、彼が普段と違うから友人が文句を言っていたのね。彼は私が考えていたよりずっと・・・


 私が落ち込んでいる間に彼は新聞部への連絡を済ませていたわ。家から鋏でもいいから持って来ればよかったなんて考えながらじっと待つ。相手に動向を悟られない為に今はそっとしておかなきゃならないけど、いざという時、逃げる前にウェブ回線は切っていかなきゃともう一度配線を確認する。


「どれが何なのか、見てわかるもの?」

「ええ。今の設備配管は電気とウェブと水道だけなの。テレビも電話も有線で入れるなら全部ウェブ回線で一本だから。外から来ているのはこれよ。この箱で変換してオレンジの二本が電気、青がテレビ、緑の二本がインターネット回線になっているわ」

「緑の線を引き抜けばいい?」

「できれば全部ね。今はテレビもネットと同じはずで、旧型対応の為に分けられているだけだったと思うわ。専門じゃないから電気のほうはわからないけれど、病院が自家発電で何とかできるなら切ってしまった方がいいかもわからない」

「とりあえず青と緑だね。・・・それにしても随分詳しいね」

「ええ、まあ」


 友人は基本的に面倒くさがりで、不要だと判断すれば指一本動かさなかった。彼女よりできることがあるならそれは彼女に必要のない事だけだったから、私はフェリオの通常教育でフォローしない部分へは色々と手を出してみたのよ。どれもこれも中途半端に終わっているけれど、こんな場面で役に立つなんてね。


「あの子に会って人生変わっちゃったわよ・・・・・・」

「そうだね」

「責任とってほしいわ。彼女が男の子だったら皆で友達だってできたかもしれないけれど、どうしてああも予想外の展開ばかり連れてくるのかしら・・・」

「この年で“オトモダチから”だとしても残念なのに、“お友達になってください”だからね。迷惑掛けないからお友達に、なんて。始めて聞いたよ」

「好きなのよ。貴方にそれを言う為にフェリオの天才になるほど」

「お友達としてね」


 言い切ると同時にため息を吐き出した。


「僕はひどい男だよね。実は小学校で告白される前から君の気持ちには気づいてたし、彼女がひどい扱いを受ける理由が僕たちにあると知りつつも一緒にいた。外で彼女が傷つけば、僕の傍が安全だとわかるだろうと思ってね」

「えっ・・・」


 私は彼を凝視した。

 何を言っているの?

 彼は・・・えっ??・・・・・・・ええええ???


「彼女元々そっけないだろう。ああいう態度は親御さんや教員の評判が良くないんだよね。で、子供の前で迂闊な事を言うと子供に伝播するんだ」

「幼等部で一人だったのってもしかしてそのせいなの?」

「いや。そういった性格じゃ幼等部の教育には回されないよ流石に。多分外部から引っ越してきたばかりで人見知りをしていたんじゃないかな?内向的な子は結構いるけれど、遊ばずぼうっとしてる子は少ないし、好きな事を聞いても埒が明かないし、手はかからないから特別問題もなくて後回しにされていたんじゃないかと思う・・・」

「それくらいの子って手がかかるものじゃないの?自分の意思表示ばかりだったり、逆に言えなかったり、後先も考えないで動くから危険も多いし・・・でも考えてみるとあの子のそういうところが思い浮かばないわ」

「君はちょっとませてたよ。正義を学んだばかりで振りかざしたそうに見えた」

「そんな言い方はひどいわ!」

「ごめんね。でも僕も同じだよ。僕は正しくていい子だと思ってたんだ。で、偉そうに彼女に声を掛けた」


 もういいわよ。そんな惚気は聞きたくない。

 そう思うのに目が離せない。

 恋に落ちるとは誰が言ったのかしら。始めれば容易に抜け出せない状況は“落ちる”という形容がぴったりで、自分ではどうにもできない。同じ顔で他の人のことを語る相手から目が離せないなんてあまりに酷いわ。


「面倒くさいの一言で撃退されたよ。僕と遊ぶのが嫌なのかと聞いたら、どうして遊ぶの?って聞かれてさ。こっちがびっくりしたよ」

「確かに遊ぶ理由とか考えたことないわね。でも遊ばない理由もないんじゃないかしら?子供はそうして自分と周囲の事を知っていくものだろうし」

「そうだね。他人の真似をしながら正しい事、間違った事を覚えてくものなんだろう。でも彼女はまず理由を求めたんだ。一度自棄になってものすごいこじつけの理由を言った事があるんだよ。―――笑わないでくれよ、笑ってほしいって思う相手が友達だから笑ってもらう為に一緒に遊ぶんだって・・・」

「あらかわいい」

「いやそれが全く可愛くなくてさ、口角だけ上げる笑いを貼り付けて遊ばなくても笑えるよって・・・・」

「不気味だわ・・・それはちょっと気味が悪いわよ・・・・・」


 ここまでの話だけ聞いても幼等部での会話とは思えない。彼は私をませているといったが、彼だってその年代にしては随分と大人びていたのではないかしら。友人に至ってはもう別次元に思えるけれど、あの友人ならありかと思えてしまう。


「頭はいいのにかわいそうな子だなと思った。でもそうした対応も見透かされてもう本当に成果が上がらなくてさ、その頃から僕はフェリオで教育者になるんだと思ってたからすごく落ち込んだんだよ。そうしたら」

「逆に懐柔されちゃったのね」

「そういうこと。始めて名前を呼ばれて好きになってって言われた時にはもうとっくに好きになった後だったよ」

「ごちそうさまです」

「僕より上手なんだ、僕が庇う必要は無いんだよ。彼女は」


 いつの間にか彼が私を見ていた。背中を嫌な汗が流れる。君とは違うといわれているようだった。


「あまり良くない事をしていると思っても追求しなかったのはね、そんなものでどうにかなる子じゃないと思っていたからだよ。だけど、行動が変わらなくても傷ついていたんだね。僕のせいで卑屈になっていったんだね」


 どこか恍惚とした顔で言う彼。

 正直に言うと先年の恋も一瞬で冷める顔よ。愛する人が自分のせいで傷ついていたことを喜ぶなんてあんまりだと思うわ。

 けれど。


「そんな事言っていると嫌われちゃうんじゃないの?」

「そうかな?嫌いになるほどの関心を持たれるならそれもいいかもしれないね」

「興味はもうもたれているじゃない」

「友達としてね」


 友達としてでは足りないと彼が拳を握る。私も同じ事を思っているわ、友達なんかじゃ足りない。

 友人を傷つけてでも彼が欲しい。愛しているから愚かにもなると開き直って愛しているけれど、愚かになる事を許容するなんてあの友人はできるのかしら。

 特別に愛する不平等も、愚かになる倒錯感も、きっと友人にはわからない。

 親が子に与えるもののような見返りを求めない慈しみだけが愛じゃないのよ。美しくなどない。


「時折思い知ってほしくなる。どれほど深い思いを抱いているか知り、逃げ出さずにいてくれるなら・・・」


 艶やかに笑う。

 私は私の友人より深く彼を愛しているといえるわ。でも彼が友人を愛するより深く思っているかはわからない。私を見てほしいとは思うけれど、彼の愛を否定する事もできなくて、友人を恨もうとしても恨みきれなくて。


 滑稽よね。


 愛し続ける事、愛を諦める事のどちらも辛くて。そんな事を考える時点で私は諦め始めているのに。


「愛しているわ。誰より貴方を傍で支えられるのは私だと思うの」

「ありがとう。残念だけど僕も愛している人がいる。君は君に相応しい人を見つけて・・・」


 私が否定するより早く、慌しい音が私達の間に割り込んだ。

 病院のシャッターが開ききるより早く人が飛び出してきて、銃を四方に向ける。

 あげかかった悲鳴が彼の手に封じられた。

 私が声も上げられずに見ている中でパン、と乾いた音が鳴った。


「大丈夫、助っ人だ」


 助っ人が来たとしても、恐いものは恐い。

 どこか乾いた銃声に身を震わせた。コードに触れる手が震えているのがわかる。


「やあ、お二人さん、熱いねぇ」

「!!??」


 パパ!?どうしてこんな所にっ。町長は・・・・

 色々訊きたいのに口を塞がれていて・・・この体勢は心臓に悪いわ。うっかり口を開いたら彼の手を舐めてしまって・・・・・・・私がしたいんじゃなくてねっ?そんなはしたない子じゃないのよー!!


「貴方が直々に?」

「まあ私はこういうときにしか役に立たないからね。優香、点検口は」

「こちらです」

「パパってネット詳しいの?」

「おいおい。あれだけの装備がうちにあるのはなんでだと思っていたんだい」


 家にしっかりした防犯設備があったって、実務を担っているのが自分の父親だとは思わないでしょ。

 彼の手をどけ、やっとの事で声を出す頃にはパパはもう配線を手にタブレットを広げていた。


「見ていなさい」


 幾つもタブレットを広げ、驚くほどの速さで何事かを打ち込んでいく。―――ああ、ひとまずは。


「よし、切って」

「制圧できるなら必要ないんじゃないの?」

「またこうなったら危険でしょう。どうせ工事しなきゃならないなら私がここにい続ける必要は無いね」

「パパ、結構怒っているわね」

「そうだね。ファランにもわかったんじゃないかな。私の可愛い娘がこれほど積極的に動くとは思わなかったから」


 ブチン、と配線を切った。よどみなく動いていたパパの手が一瞬動きを止める。


 私はただ彼があんまり格好悪いのが嫌だから・・・

 言い訳をしたくとも邪魔になりたくもなくて、作業が終わるのを待つ。

 


「私が心配してもどうにもならないから、心配するなんて思いもしない人よ」

「随分と個性的な子とお友達になったものだね」

「凄い子ですよ。きっとフェリオのためになります、だからっ」

「助けて、パパ。私じゃ何もできないっ・・・・・・」

「力を貸してください」


 思いがけず助けを求める声が重なった。彼が意外なものを見る目で私を見つめる。

 ・・・だからっ。別に私が心配してるんじゃ・・・よしんば心配していたとしても、それは私を庇っていなくなったからであって、友人を思ってのこととかじゃないし。――私は彼を好きなんだもの。

 そっぽを向いた私をパパが笑った。


「若いねえ」

「パパ、それ年寄りの台詞よ」

「確かに私は年頃になる娘がいる位の年寄りだ。が、まあ、まだまだ若いものには負けれらないね」

「?」

「良く頑張ったねって事だよ。ここからは私達に任せなさい」


 良く頑張った、かしら。私を助けてくれた友人がどこにいるのかもわからないのに。


「休んだ方がいい。君は君にできることをやったよ」

「でも」

「“できることをやったのに、できないことを求めるの?”って言うさ。彼女なら。・・・多分ね」

「貴方も休んでくれる?」

「・・・・・・・・無理したら余計格好悪いかな。格好悪くなるほど心配してるって捉え方はしてもらえない相手だって思い出したよ」

「そうね」


 彼女は全く容赦ない。けれどそれが彼女なりに思いやった結果なのだと知っているから腹も立たない。ひどく不器用で、呆れるほど自信が無くて、そのくせに頑固。口にすれば悪口になってしまうそんな性格を彼は心から愛している。


 友人が同じ愛を返せなくても。きっと、ずっと。

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