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デスペインオンライン  作者: アネコユサギ
第一部『理由』
7/15

 それからの日々は実に緩やかに流れていった。

 狩りに出掛けて大量のモンスターと戦ってはお金と色を稼ぐ毎日。


 一見地味なこの生活だが特に不満は無い。

 堅実にお金を稼いで武器と防具を高価な物に代える事で安定させるという結果、最初の頃よりも遥かに戦闘能力が上がってきているのを実感している。

 例えば以前狩場にしていたマゼンタフロッグなどは既に8匹が同時にやって来ても対処出来る位の装備になった。


 武器は三段階目の『黒のアンテニー・ダガー』

 防具は布地のグローブや靴下、カンカン帽、そしてまたもや無地のワンピースと革の靴。

 ワンピースには少し裾に柄が付いただけで一見違いは見受けられないが二段階程上位の物を使っているし靴には金具が付いているという違いはある。

 だけどこの田舎っぽい衣服にファッション性があるかと尋ねられれば唸る他無い。

 しかも……このださい姿がネット配信されていると思うとちょっと恥かしい。


 もちろん防具にも種類があって、軽装、装甲、重装甲といった具合に分かれる。

 私がこのださい軽装を選ぶ理由は他装備を使った場合戦闘時間が長引いてしまい回復剤がかさむ為だ。

 ユカリ曰く防具をガチガチに固めて戦った方がDPOというゲームの性質上いいんじゃないか、という話だが正直私としては防具が重い程避けられなくなって結果的に受けるダメージも多くなるので痛みを抑える為に軽装を選んだ。


 それでも現在の収入から随分無理して買った防具なのは変わらない。しっかり受けるダメージを軽減してくれたり、身体が軽くなったりと付ける付けないの差は大きい。


 補足だが防具屋に下着という物が売っていた。

 装備欄を埋める為に購入して装備したら微弱だがしっかり効果もある。

 しかし売っている女性物下着のほとんどがキワモノばかりで効果の為に付けている現状というのは何とも悲しい。


 ――さすがに21にもなってベビードールは無いだろう……。


 そういう話をユカリとしたが今一理解されなかったのも悲しい。

 なんでもゲームでは良くある話で、一般的にレースやフリルが付いていたり、スリットをリボンで結ぶ作りだったりと変にこだわっている物も多いんだとか。


 もちろんこれも普通のネットゲームだったらの話で、このDPOでは適応しない。

 理由としてはプレイヤーが現実とまったく同じ容姿、名前だからだ。

 ゲームは大なり小なりあれど、基本的にキャラクターは美男美女で自分好みの外見に弄るので自分では無い誰かを綺麗に装飾するのと同じだ。

 感覚で言えば人形に服を買ってあげたり、作ってあげたりした物を着せたいという事だと思って納得している。


 ともあれ、現在私の生活はお金を稼いで装備を充実させる事と同義だ。


 ちなみに『短剣』デバイスは現在+9。

 もうすぐ+10になると思うと狩りに張り合いも出る。

 だが、順調に進んでいるこの生活にも一つ悩みがある。


 そう『感情』デバイスだ。

 あれから常時頭に髪留めとして付けている『感情』デバイスなのだが一向に色が染まらない。

 ユカリに相談しても、おそらくは私自身が強い感情を出していないから反応していないんだろうとの分析。

 実際、モンスターとの戦いに慣れれば慣れる程心の揺れは小さくなって機械的にモンスターの弱点を付いて攻撃するという思考しかしなくなる。

 街での生活もユカリ以外とはNPCが経営する防具屋や料理屋、宿屋のキャラクターと会話する位で別段感情が高鳴る様なエピソードも無いので当然と言えば当然だ。


 だけど、効果の無いデバイスをずっと付けているのには抵抗がある。

 『短剣』デバイスが既に+9になっているのに未だに+0、しかも無色というのは効率的に見ても早急になんとかしたい課題だ。


 そもそもデバイスという道具が高価過ぎる。


 店で売られているデバイスの値段は一万~十万ゼニーはして正直手が出せない。

 現在出費を差し引いた私の日給が3500ゼニー前後だという事を考えるに相当高額である事が分かると思う。

 しかし現状デバイス店で売られているデバイスは、それを踏まえても良さそうな物が沢山ある。


 まず多彩な武器系統デバイス。


 短剣、剣、槍、斧、鈍器、格闘、そして盾。


 基本とあってこの系列は安い。全てが一万ゼニーで固定だ。

 盾が武器系デバイスに含まれているのは盾を武器とした攻撃があるからだ。

 例えば盾から派生する剣盾は身を守りながら攻撃するという面では良さそうだ。


 次に防御系統デバイス。


 軽装、装甲、重装甲、下着、そしてまた盾。


 防具系統デバイスは使用する防具の能力を上げると同時に付ける防具によって様々な付与効果を与える。

 例えば重装甲や盾なら痛覚軽減や不動(小)などだ。

 不動状態になればモンスターの攻撃を受けても怯む事無くそのまま強引に攻撃出来る。

 この他にも単純に身体を身軽にしたり、足音を消したり、ここから先は成長させる方向によって異なるそうだ

 効果も程々に優秀だが、お値段も優秀で五万均一で正直現状手が出せない。


 ……下着は敢えて無視した。


 次に製造系デバイス。


 武器製造、防具製造、道具製造、大工製造、料理製造。


 私には関わりが薄いがユカリにとって重要な位置にある。

 製造デバイスは一人一つしか付けられず育成する事で様々な系統に枝分かれする。

 DPOとなった現状武器と防具が重要らしいが、この構図も後々明かされる派生しだいでは一変する可能性も十分ありうるとユカリは溢していた。

 お値段は十万均一。ありえない金額だがユカリは無難だと話していた。


 次に『色』系統デバイスだ。


 赤、青、緑、黄、白、黒。


 この六色から選べる。値段は十万均一で絶対に手が出せない。

 効果はもはやユカリの話を信じる他無く、簡単に例えるなら『魔法』だそうだ。

 まず適正色で使用出来る色が異なり、属性……混沌や秩序に善悪のアレで使える魔法が決まるという話だ。つまり色、そして二種類の二種類に分かれる。

 ユカリ曰く、これを使うか使わないかで戦闘タイプに差が出るから購入は考えておいた方がいいとの事。


 そして最後に能力系統デバイスだ。

 値段は色デバイスと同じで十万均一。『感情』デバイスもこの系統に属する。


 感情、忍耐、HP上昇、火炎、吸収、起死回生、自己犠牲。


 種類が多いので一部しか覚えていないが、どれ一つ取っても戦闘を一変してしまう様な力を秘めている。

 これから先、能力系か色系デバイスのどちらを選ぶかが鍵だとユカリに言われた。

 どちらにするか正直まだ決めていない。というよりも金銭的に購入出来ない。

 そもそも防具系デバイスを持っていないので値段を考えて先にそっちを買おうと思っている。


 これ等の中から最終的に五つのデバイスを選ぶのがDPOの戦略だ。


 急いで欲しい品ではあるが堅実に、確実に装備を強化しながら目指そう。


「それにしてもマナは本当廃人だよな」

「廃人……」

「知らなねーだろうから先に言っとくがプレイ時間が異常に多い奴の事だ」


 出会ってから今日までの日々でユカリは私という人間を随分と理解してくれている。

 ……あんまり嬉しいと感じないのはどうしてだろうね。


「それは狩りの時間の事を指しているんですか?」

「当たり前だろ。一日何時間狩ってんだよ。睡眠時間何だ? 言って見ろ」


 DPOが始まってから一睡も眠っていませんとは言えないよね。

 そう、私はあれから一睡もしていない。

 食事は料理屋で安い物を選んで節制した生活を心掛けているが宿屋に至っては休憩程度で済ませて直に狩りへ出掛けるという生活だ。


 なので武器の磨耗がとても早い。

 初期装備であるナイフは破壊不可という判定が掛かっているので壊れないが普通の武器は使用頻度によって耐久値が減少していく。この耐久値が減っていなければいない程攻撃力が高いという作りだ。


 耐久値の磨耗は経験則から半分を下回った辺りから目に見えて威力が低下し始める。

 そして現在の使用頻度からこの半分に到達するのがおよそ12時間前後。

 私は回復剤を可能な限り使わない回避スタイルで戦っているので頻繁に街には戻らない。結果効率が落ちる12時間を目処にユカリと合流する約束で行動しているという訳だ。


 この仕様の所為をユカリに注意されるまで耐久値が減り過ぎてダメージが下がっていた事に気付かず、効率にも現れて大変だった。

 気付いたユカリにマナはゲームとか説明書読まないタイプだろ、とか注意された。

 そんなにゲームやった事無いから分からないけど、今までやったゲームは七星が教えてくれたので説明書とやらは読んだ事が無いのがアレだったりする。


 ともあれ眠りもしないのに宿屋でボーっとしていてもしょうがないので必然と昼夜問わず時間が許す限りモンスターを倒し続けていた結果、ユカリに睡眠について文句を言われたので適当な言い訳を口にした。


「昔から睡眠時間は短い方なんですよ」

「だとしても睡眠不足で死ぬなんてアホな事すんなよ?」

「もちろん、ちょっとでも眠いと思ったら狩りの途中でも帰る事にしていますから」


 つまり眠くないから帰らない。嘘は吐いてないぞ。

 そういう訳で私はユカリの作ってくれた『黒のアンテニー・ダガー』を二本使って合流の度に一本を預けて狩場に戻るという感じだ。

 これは磨耗を直す作業に三十分から一時間は掛かるという事を踏まえて待ち時間が勿体無いから二本目をくださいと言ったらあっさり頷いたので同意の上だ。


 ――だけど、本当どうして眠くならないんだろうか?


 無難に私が既に死んでいるという事が関係しているかもしれない。

 身体、つまり脳が無いから休ませる必要が無い。

 しかしそれを言い出したら死んだ人間が何でこんな所にいるという話になる。


 いくら現実と卒の無い体感系ゲームとは言ってもゲームはゲームだ。

 ゲーム機が脳から情報を伝達してサーバー内に存在するDPOという世界で動き回れるという現代科学が実現した凄い機械。

 それにしたって身体が無ければ動くはずが無いし、そもそも死んだはずの私がゲームの世界で目覚めるというのもおかしい。


 もちろん考えても答えが出ない事は百も承知だ。

 だけど、答えが出ないから考えないと結論する程私は達観していない。

 何か理由があるはずだ。

 その理由がなんであれ、機会があるのだから私は自由に生きている訳だけど。


 うん、今はそんな事考えている余裕は無いか。

 1万という人間がDPOに閉じ込められてから既に11日が過ぎた。

 そろそろ二週間目が近付いている。

 さすがにここまで時間が経過すると頑なに「絶対に助けは来る。現代科学舐めんな。プログラム弄れば直に帰れるんだよ」と言っていたユカリも助けがこないかもしれないと気を落としていた。


 つまりユカリがそう思った様に助けがこないと考える人間がそろそろ行動を始めるはず。

 自分でもある程度は何もしていない人よりは有利な状況にいる自信はあるが、たかだか二週間。追いつこうと思えば出来なくなはないだろう。


 その予想が裏切られる事は無く三日後、丁度二週間目に突入したその日、私は彼女を紹介された。

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