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嵐の夢あと
「おっはよん」
教室に入るなり後藤に抱き付かれた。
「なぜ、僕はこんなにご機嫌なのでしょうか!」
なんだ、離れろよと笑いながら後藤を離した。
「正解は、僕のマドンナ斎藤さんが挨拶を返してくれたからでしたぁ」
良かったなと僕は静かに席に着いた。
授業中、僕はまだ今朝の夢を引きずっていた。
自分だけ助かろうとした事を恥じてる訳ではなかった。
どうしてたら、後藤は怒らなかっただろう。
何を言ったら後藤を引き止める事が出来たのだろう、と考えていた。
チラッと後藤の方を見ると、後藤はニヤリと笑い、僕にボールペンを向け、カチリとノックした。
..そうだよな。
後藤の怒りは何をしても止められなかったし、何を言っても後藤は皆の為に戻ったんだ。
そしてきっと、皆を助け出して英雄気取りで戻ってくるんだ。
僕は「うぉっほん」とわざとらしく咳払いし、ボールペンを2回鳴らしてみせた。