嵐の夢(下)
廊下に並んでギョッとした。
何と水位はもぅこの3階の校舎まで達していたのだ。
1階と2階は既に水没していると言う事だ。
窓からは既に溢れた雨水が少しずつ、入ってきていた。
それでも先生は落ち着けと言う。
皆は大人しく指示に従い、並んだまま動かなかった。
本当だったらこう言う時こそ団体行動だが、僕は既に夢だと気付いていた。
1人で行動を始めた。
取り合えず、屋上に行かなければ..
他の生徒や先生を振り切り、屋上へ続く階段を登った。
登る途中で、誰かが僕の腕を引っ張って足が止まった。
振り向くと腕を引っ張った奴の顔を確認する前に、殴られた。それは凄い勢いで、僕はそのまま尻餅を着いてしまった。痛さに耐えかねて殴られた頬を抑えた。
ジンジン痛むのをこらえ
ゆっくり顔を上げた。
そいつは後藤だった。
現実の後藤とは全く別人のように、もの凄く怒っていた。
「お前!!自分だけ逃げて何考えてるんだよ!」
胸ぐらを捕まれて、唾が掛かるくらい怒鳴られた。
だって夢なんだろ。
そんなに怒るなよ。
「自分だけ助かれば、それでいいのかよ!」
あぁ。そうなんだ。とにかくハッピーエンドでいい気持ちで目覚めたいんだ。
「...なんとか言えよ!」
なんで怒るんだよ。
なんで後藤なんだよ。
なんで殴られるんだよ。
後藤の顔はまだ凄く怒っていたが、僕の胸ぐらを掴んでいた手を離した。
そして後ろを向いて皆の方へ黙って歩き始めた。
「後藤!ダメだ!戻ったらダメだ。僕に付いて来い!!」
後藤は足を止めなかった。
「おい後藤!聞こえてるんだろ!頼むから..頼むからこっちへ来てくれ!!」
ーーー目が覚めた。
目には何故だかうっすら、涙が浮かんでいた。