試験の夢(下)
クラス全員で先生の待つ体育館に着いた。
先生は相変わらず機嫌が悪かった。
体育服を着ていない生徒を見るなりこう言った。
「お前ら試験受ける気がないのか!体育服着て来いって言っただろう」
先生は体育服を着ている生徒と着ていない生徒を分けると
着ていない生徒に向かって更に説教を続けた。
みんなしどろもどろで、どうして良いか分からず、ただただ先生の暴言にショックを隠しきれないようだった。
僕の頭には先生の言っている言葉が入って来なかった。
何かフィルターがかかっているように、曇って聞こえた。
それでもみんなの困惑した表情をみるうちに、先生に対して怒りが込み上げてきた。
先生のやってる事が分からない。
言ってる意味が分からない。
みんなを困らせて、一体何を考えているんだ。
僕の足はごく自然に一歩を踏み出し、先生の元へ向かっていた。
そこで僕は何を言ったか、よく覚えていない。
たぶん「おい!何考えてるんだよ!!」
みたいな事だったと思う。
先生が「お前、俺に逆らうのか!」と言ったあと、先生としばらく言い争った記憶がある。
決着がついたのは、先生の目から出た、一筋の涙だった。
「何でか分からないけどイライラしてるんだよ...」
僕はそこで初めて、先生が何かを握りしめていた事に気付いた。
あぁ、だから機嫌が悪かったのか。
僕はゆっくり手を伸ばし、先生のごわごわした頭を、優しく撫でた。
「先生。場所を変えましょう」