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おにごっこの夢(上)
勝負の内容は「おにごっこ」だった。
勝負に勝てば、斎藤の近くでは陰口は言わないという条件だ。
僕は勝たなくてはならないと思った。
スタートは3階にある僕たちの教室で、僕がスタートした10秒後に2人が追いかけてくる...だかしかし、僕が足を着いた廊下のタイルだけがピンク色に染まるのは聞いてなかったぞ!!
もうすぐすると、二宮と河野が追いかけてくる。
女子とは言えど相手は二人だ。以前の獅子のように、挟み撃ちに合えばおしまいだ。
僕は先手を打つ事にした。
隣の校舎の屋上へ飛んで行けば、多少の時間稼ぎになるはずだ。
窓を開け、僕は一気に窓のレールに飛び乗った。
僕は息を飲んだ。恐怖からではなく、外の風景があまりに美しかったからだ。
桜の花びらが雨のように空から降っていた。
桜の木は校庭にあるので、どう考えても上から降ってくるのはおかしいのだが、雲一つない青空から桜が舞う風景は、美しかった。
僕は勢いよく宙に飛び立った。