a.aa 怪物と女王
そこにボクがいる 遠くにキミがいる
届かなくて 手を伸ばしても
重なるのは 一瞬だけ
ここにキミがいる 傍にボクがいる
怖いから 手を繋いでも
理解してくれたことは 一回もない
そこにアレがある ここにボクがある
届かなくて 手を伸ばしても
重なるのは 一瞬だけ
ここにキミがいる 傍にアレがいる
怖いから 手を繋いでも
理解してくれたことは 一回もない
僕が本を閉じると、少女は何か物足りなさ気に僕を見つめる。
その視線があまりにも気になって「どうしたの」と訊ねた僕に、彼女はぶんぶんと首をヨコに振った。
僕は月に一度僕の家で、同級生たちと古本を売買する会を開いている。
この会に参加している年長者は僕の従姉弟で、年少者がこの大人しい少女レモーニである。レモーニは僕のフィアンセに当たる。5歳も年が離れていてよく同級生にはからかわれるのだが、僕はそれを気に留めていない。
彼女さえよければ、彼女が僕を選んだ時結婚するつもりだ。
それが何百年も続く王家のルールでもあるから。
まだ彼女は僕を見つめている。
彼女が持っている本は、元々は僕が曾祖父の弟――つまりレモーニの曾祖父にあたるのだが、彼から譲り受けたものだった。
その本の内容は、今父さんが国王だとして、その15代も前の国王の時代に記された物だといわれている。
本の主人公の名前もまたレモーニで、東方の邦から国内の隅々を旅行し、各地域で起こる混乱を鎮め史上3人目の女王となる。僕の目の前にいる彼女は、レモーニ4世となる。
彼女がこうして僕を見つめるのも、それは僕が仕組んだことだった。
僕の名前はロッダではない。
リヒャルト。レモーニ1世や他の後継者を暗殺して王になろうと企んでいた恐ろしき怪物の名前。
僕は今彼女を試している。
本を読み終わった彼女が、僕を受け入れてくれるかどうかを。
インデックス作りました!
活動報告とは別に作ってますが、各報告ごとにページURLを張っているので、是非インデックスをご覧ください!