第9章:雑音の中の光
現代(2050年)から遡ること11年。
これは、NOISEリーダー・透也の妹であり、
看護師・灯が誰よりも憧れていた女性――**「光生」**の物語です。
彼女が出会ってしまった、ひとりの「白帳(改訂者)」。
その出会いが、全ての運命を狂わせていきます。
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◆ ・2039年
・光生:27歳(NOISE理念象徴・看護師)
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◆ NOISE活動日常(ルカ登場)
NOISE医療室。
簡易ベッドに横たわる少女が、薄く目を開けた。
濃紺の髪、白いパーカー。瞳は幼いが、その奥に光はない。
「大丈夫よ。怖いことは何もないから。」
光生が優しく髪を撫でると、少女――ルカの小さな身体が震えた。
(この子も…奪われかけたんだ。)
背後で透也が腕を組み、静かに見守る。
「無理はするな、光生。」
「分かってる。でも…放っておけないから。」
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◆ 灯の視点 – 憧れと覚悟(職場)
夕刻。民間診療所の看護師控室。
包帯の準備をしていた灯は、鏡越しに光生の姿を盗み見ていた。
(光生さんは、いつも完璧だ…
あんなふうに、人の心に触れられるなんて、私には…)
「どうしたの、灯ちゃん?」
光生が背後から声をかける。
驚いて振り返った灯は、俯きながら呟いた。
「……いえ、私なんて…光生さんみたいに完璧にはなれないなって。」
光生は小さく笑い、灯の頭を撫でた。
「完璧な人なんて、どこにもいないわよ。
私だって、弱いところばっかり。」
灯は涙をこらえ、微笑み返した。
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◆ 翔真との邂逅
診察室。
古びたカーテンの向こうに、男が座っていた。
黒髪短髪、浅黒い肌。
筋肉質の腕には、殴打痕と擦過傷が無数に走っている。
「不破翔真さんですね?」
光生がカルテを確認する。
「はい。」
低く掠れた声。瞳は虚空を見つめ、どこか遠い場所にあった。
「怪我の原因、教えていただけますか?」
「……白帳だからって、殴られました。」
淡々とした口調だった。
光生の手が止まる。
(…記録改訂者への暴行。
どうして、こんなことが…)
「酷いことする人がいるのね。」
「まぁ、白帳なんて生きてるのか、生かされてるのか分からないし。
でも…社会には、貢献したいとは思ってます。」
そう呟く翔真の横顔に、光生は言葉を失った。
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◆ 翔真の視点 – 禁忌の感情
光生の指先が傷口を拭うたび、ひどく不快で、けれど微かな温かさが滲んだ。
(……俺みたいなものに、構うなよ。)
顔を背けたが、胸奥で何かがわずかに軋んだ。
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◆ 灯の視点 – 不穏の予感
診療所の廊下。
灯は帰り支度を整えながら、待合スペースで会計を待つ翔真を一瞬だけ見た。
無表情、だがその瞳の奥に潜むものが、灯には理解できなかった。
(この人…何かが違う。)
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◆ ラスト – 光生の希望
帰路。夜風が髪を揺らす。
灯と歩く光生が、ふと立ち止まり、空を仰いだ。
「…救えるのかな。こういう人も。」
夜空に瞬く星を見つめ、優しく微笑む。
「でも、救わなきゃね。」
その微笑は、誰よりも眩しく、そして儚かった。
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第9章・完
第9章をお読みいただき、ありがとうございます。
今回の舞台は2039年。
現在では故人となっている光生が登場しました。
• 傷ついた少女・ルカを救う優しい光生。
• そんな光生に憧れる、新人時代の初々しい灯。
• そして、差別を受けながら生きる改訂者・不破翔真。
光生の「救わなきゃね」という純粋な想いは、果たして翔真に届くのか。
それとも、残酷な結末を招いてしまうのか。
この翔真という男……第8章で被験者となった「彼」の成れの果てなのでしょうか?
点と点が繋がり、悲劇の足音が近づいてきます。
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