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ECHO-記憶の残響-  作者: GODS04


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第7章:完璧という不完の夜

これは、ある男の記憶。

あるいは――消されてしまったはずの「真実」かもしれません。

完璧を求め続けた男・泰輔たいすけと、彼の恋人・美緒。

崩壊へのカウントダウンが始まります。

※この章には暴力的な描写が含まれます。ご注意ください。

第7章:完璧という不完の夜



◆ 【Day 1】違和感の始まり


夜風が涼しく、街灯のオレンジが歩道を照らしていた。


「ねえ、泰輔くん。」


隣を歩く美緒が、不意に声をかけた。


「ん?」


泰輔は歩みを緩めず、前を向いたまま答える。


「今日さ、バイト先のレジ締め任されて、店長に褒められたんだ。」


「…そう。」


会話はそこで終わるはずだった。

だが、美緒は口を開いた。


「泰輔くんって、いつも完璧だよね。」


足を止める。

ゆっくりと振り返ると、街灯に照らされた美緒の顔があった。

彼女は笑っていたが、その笑顔はいつもより弱々しく見えた。


「…どういう意味。」


「…なんでもない。」


笑顔の奥にある影を、泰輔は見逃さなかった。


その時、脳裏をよぎる映像。


――高校の教室。

泣き叫ぶ女。

腰まで伸びた黒髪が乱れ、制服の袖から白い二の腕が覗く。

同じクラスで、文化祭実行委員だった女子。


(うるさい。

言うことを聞けばいいんだ。)


泰輔は息を整えるように目を伏せ、再び歩き出した。



◆ 【Day 2】美緒の沈黙


翌日、美緒からの返信は遅かった。


【今日もお疲れさま】


既読がつかない。


(どういうことだ。)


コンビニ夜勤シフトのリーダーに選ばれたと聞いても、心は晴れない。


数時間後、ようやく返ってきた。


【ごめんね、今日は疲れちゃって】


その言葉に、苛立ちが込み上げる。


また別の映像が閃く。


――雨上がりの放課後。

ショートカットで、丸眼鏡をかけた女子が泣きながら下駄箱前に立っていた。

同じ部活の先輩。


泰輔は無言で髪を掴み、人気のない校舎裏へ引きずった。


(ほら、ちゃんと俺の言うことを聞けよ。)


泰輔は返信せず、スマホを伏せた。



◆ 【Day 3】小さな衝突


週末。二人は久々に会った。


ファストフード店の窓際、美緒はカップを両手で包み込み、下を向いていた。


「…最近、泰輔くん怖いよ。」


「怖い?」


泰輔は首をかしげ、笑顔を作る。

周囲の客に見られていることを意識しながら。


「俺が、怖い?」


その問いかけに、美緒は小さく震えた。


「ごめん…ごめんね。

私…ちょっと疲れてるだけだから。」


(疲れた?

俺といるのが?)


また、過去の映像が瞬く。


――体育倉庫の隅。

泣きじゃくる女子の髪は明るい栗色で、肩にかかる程度の長さ。

陸上部マネージャーで、1年下の後輩だった。

倒れた彼女の頬を張り、髪を掴んで引き上げながら言った。


「ほら、謝れよ。」


泰輔は笑顔のままカップを口に運び、ぬるくなったコーヒーを一口飲んだ。


心の奥で、鈍く硬いものが息を潜めていた。



◆ 【Day 4】最後の夜


夜の公園。

街灯が白く照らすベンチに、二人は座っていた。


「別れよう。」


美緒が震える声で言った。


泰輔はスマホを弄りながら、無表情で応える。


「…何で。」


「泰輔くんといると、私…私じゃなくなるの。

怖いの…」


まただ。


脳裏に過去の映像が閃く。


――教室の奥。

泣きじゃくる女子が机にしがみついていた。

卒業式の日に告白してきたクラスメイト。


(あの時も、俺を否定した。

だから…壊した。)


泰輔はスマホを仕舞い、立ち上がった。


「帰ろう。」


美緒は泣き腫らした目で頷いた。


二人の背中を街灯が冷たく照らしていた。



◆ 【Day 5】壊れた夜


人気のない歩道。


「泰輔くん…待って…」


美緒の声が震える。


泰輔は立ち止まり、無言で振り返った。

冷たい瞳が、彼女を射抜く。


「別れ話、本気なんだ…

私…もう無理なの…」


泰輔はゆっくりと近づき、無言で彼女の頬に触れた。

震える感触。


(黙れ。

俺を否定するな。)


頬に添えた手が、そのまま首元へ滑る。


「や…め……」


涙が零れ、喉から掠れた音が漏れる。


(これで…いい。

完璧な俺に戻れる。)


街灯の下、美緒の体から力が抜けた。


泰輔は無表情で手を離し、倒れる彼女を見下ろした。


夜風が冷たかった。



◆ 【Day 6】フラッシュバック – 猫の名札


夜の街灯が滲んで見えた。


(…昔も同じだった。)


脳裏をよぎる、小学生の自分。


夜道の端で蹲る黒い塊。

まだ息があった。

潰れた喉元に、血で汚れた名札。


《ココア》


(完璧じゃない奴は…壊れるだけだ。)


泰輔は、無表情のまま微かに止めを刺した。



第7章・完


第7章をお読みいただき、ありがとうございます。

突如描かれた、泰輔という男の凶行。

そして、最後に彼の脳裏によぎった**「猫のココア」**という記憶。

第2章を覚えていらっしゃるでしょうか。

結城維人の回想に出てきた**「車に轢かれて死んだ猫・ココア」**。

結城は「感情を持たず傍観していた」、

泰輔は「衝動的に手を下していた」のです。

この「泰輔」とは一体誰なのか。

そして、この記憶がなぜ今、語られたのか。

全てのピースが繋がったとき、「違和感」の正体が明らかになります。

【読者の皆様へのお願い】

物語の核心に触れるダークな展開でしたが、

「ゾクッとした!」「伏線がすごい」 と思っていただけましたら、

ページ下にある【☆☆☆☆☆】 をタップして、応援ポイントをいただけると大変嬉しいです!

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