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ECHO-記憶の残響-  作者: GODS04


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第61章:約束のデコード

天才エンジニアの帰還。

「バカ佳乃」という一言が、止まっていた時を再び動かす。



(解けない暗号はない。

お前がそう教えてくれたから、私はここまで来たんだ。)



◆【2053年・ターゲット捕捉】


NOISEのアジトに、乾いたタイピング音が響き渡っていた。


複数のモニターに囲まれた佳乃よしのが、最後の一押しとばかりにエンターキーを叩く。


「……ビンゴ。見つけたわ。」


振り返った佳乃の瞳には、狩人の色が宿っていた。



「場所は?」


後ろで腕を組んでいた透也とうやが短く問う。


「C区画の政府関連施設。……表向きはシステムエンジニア。名前は『御影みかげ ハヤト』。RE:CODEによる改竄かいざんレベルはA。……完全に別人格を上書きされてる。」


モニターには、死んだように生気のない現在のハヤトの顔写真が表示されている。

佳乃はその画面にそっと触れ、小さく呟いた。


「……待たせたね、天才。」



3年前、通信が途切れる直前に交わした、あの短い会話。

『お前なら解ける』という彼の信頼に応える時が、ようやく来たのだ。


「甲斐、準備は?」


「いつでもいける。改良型のECHO誘発剤だ。……かつてのライバルを目覚めさせるには、最高の目覚まし時計だろうぜ。」


甲斐がニヤリと笑い、金属製のケースを取り出す。


透也が頷いた。


「よし。……迎えに行くぞ。彼こそが、将来RE:CODEの闇を暴く鍵になる。」



◆【接触】


深夜の路地裏。

残業を終えて帰宅途中だったハヤトは、ふと背後に気配を感じて足を止めた。


「……誰ですか?」


振り返ると、フードを目深に被った小柄な女性――佳乃が立っていた。


「こんばんは、優秀なエンジニアさん。……それとも、ただの『操り人形』さんと呼んだ方がいいかしら?」


「……何の話です? 警察を呼びますよ。」


ハヤトが警戒してスマートフォンを取り出そうとする。

その動きは、かつて佳乃と競い合った天才ハッカーのそれではなく、ただの怯える一般人のものだった。



佳乃はフードを少し上げ、挑発するように微笑んだ。


「あんた、本当に忘れたの? ……『0x4F1C矩形』の解き方を。」


「……っ!?」


ハヤトの指が止まる。

その単語を聞いた瞬間、彼の瞳の奥で何かが揺らいだ。


「な、なぜ……それを……?」



動揺するハヤトの隙を見逃さず、暗闇から甲斐が現れ、素早く首筋に注射器を押し当てた。


「悪いな。ちょっと昔話をしようぜ。」


ハヤトの意識が暗転する直前、佳乃の声が耳元で響いた。


「約束通り、取り戻しに来てやったよ。」



◆【ECHO・覚醒】


廃ビルの一室。

椅子に拘束されたハヤトが、激しく身をよじった。


「あ……がぁぁぁっ!!」


頭を抱え、絶叫する。

脳内で、作られた「真面目なエンジニア」の記憶と、封印されていた「本来の記憶」が衝突し、火花を散らしているのだ。


甲斐がバイタルモニターを見ながら冷静に指示を出す。


「耐えろ。……今、ロックが外れる。」



ハヤトの視界が歪む。

オフィスの風景が消え、燃え上がるような怒りと、泣き叫ぶ少女の声がフラッシュバックする。


『お兄ちゃん!!』


楓莉ふうりの声だ。

そして、暗いモニター越しに会話した、唯一自分と対等に渡り合える女性の声。


『待ってろ、ミカゲ……!』


「う……うぁぁぁぁっ!!」


ハヤトの目から、涙が溢れ出した。

痛みによる涙ではない。悔恨と、蘇った誇りによる涙だ。



「……思い、出したか?」


佳乃が顔を覗き込む。

ハヤトは荒い呼吸を繰り返しながら、ゆっくりと顔を上げた。


その瞳からは、先ほどまでの「従順な羊」の弱さが消え、かつての鋭い知性が戻っていた。


「……遅ぇよ、バカ佳乃。」


掠れた声で、憎まれ口を叩く。


「……3年も待たせやがって。」



◆【共犯者】


「悪かったわね。……その代わり、最高の手土産を持ってきたわ。」


佳乃がタブレットを差し出す。

そこには、現在の妹・楓莉の居場所が記されていた。


ハヤトは震える手でそれを受け取ると、歯を食いしばり、佳乃を見つめた。


「……楓莉は……無事なんだな。」


「ええ。必ず助け出す。……あんたの力が必要なの。」



透也が前に出て、ハヤトの手枷てかせを外した。


「俺たちの目的はRE:CODEの解体だ。……ミカゲ ハヤト。お前のその指先で、奴らを社会的に抹殺しろ。」


ハヤトは自由になった手で、自身の顔を覆い、そして深く息を吐いた。

政府への忠誠心など、もはや微塵もない。あるのは、自分たち兄妹を玩具にした連中への激しい憎悪と、目の前の仲間への信頼だけだ。



「……いいだろう。」


ハヤトは顔を上げ、不敵な笑みを浮かべた。それは、あの頃モニター越しに見せた天才の顔だった。


「俺の全てを賭けて、奴らの嘘を暴いてやる。……この命と技術は、そのために使う。」


2053年。

かつてのライバルが、最強の「共犯者」として手を組んだ夜。


この再会が、やがて来る9年後の革命の狼煙のろしとなることを、二人は確信していた。



第61章・完


第61章をお読みいただきありがとうございます。


佳乃とミカゲの再会。

天才ハッカー同士の絆と、ミカゲの覚醒が描かれた熱い回でした。

最強のエンジニアを仲間に加えたNOISE。反撃の準備は着々と整いつつあります。


佳乃とミカゲのコンビが好き!と思った方は、

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感想もお待ちしております。


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