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ECHO-記憶の残響-  作者: GODS04


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第6章:灯の決意

舞台は再び、第1章の病室へ。

しかし今度は、すべてを知る看護師・ともりの視点で描かれます。

新太が記憶を失っていた本当の理由。

そして、妻・沙耶が望んだ「メンテナンス」とは。

同じ場面でも、視点が変われば真実が見えてくる。

あの「感動の再会」の裏側をご覧ください。


◆ 2050年、病室


天井の白さは、朝日に照らされてわずかに黄金色を帯びていた。

病室のカーテン越しに差し込む光の中、黒峰新太は目を閉じたまま、浅く息をしている。


その傍らに立つ白石灯は、無表情にカルテを確認していた。

視線は紙面を追いながらも、眠る男の顔に注がれている。



◆ 事故とメンテナンス


カルテの端には、こう記されていた。


「定期メンテナンス・前倒し実施。理由:事故外傷疑い、および配偶者・沙耶からの強い要望。」


本来、記録改訂者には数年単位でのメンテナンスが行われる。

だが今回は異例だった。

事故による軽度の頭部外傷をきっかけに、沙耶が何度も研究所へ要請した結果、急遽メンテナンスが前倒しされたのだ。


その影響で、新太は予定外の一時的な記憶消失を起こしている。



◆ 灯の心の声


(……前倒しメンテナンス。

安定度が低下する可能性は高い。

沙耶さん……あなたの願い通り、記憶は薄れたけど……

果たして、それが彼にとって幸せなのかしら。)


灯は心の中で業務確認を呟き、ペンを走らせた。



◆ 灯の立場


灯は、国家直轄RE:CODE研究所所属の看護師だった。

主任研究官・結城維人の下で、改訂者の健康管理や経過観察を担当している。


あの日から――

光生が姿を消したあの日から、灯は決して感情を乱さなくなった。



◆ 現家族生活


カルテにはもう一つの情報もある。


「現家族生活開始より2年経過」


改訂後、新太は沙耶と月陽との“家族生活”を送り始めて2年が経っていた。



◆ 新太、目を覚ます


静かな呼吸がわずかに変わった。

新太の瞼が、かすかに震える。


灯は無意識に息を呑む。

次の瞬間、重たげに彼の瞼が開いた。


光の中で瞬きを繰り返す黒い瞳。

焦点は定まらず、虚ろに天井を見つめている。


「……ここは……」


掠れた声が、誰に問うわけでもなく漏れる。


灯は表情を崩さず、カルテを閉じた。


「おはようございます、黒峰さん。」



◆ 家族の再会


病室のドアがゆっくりと開き、

小さな足音が駆け寄ってくる。


「パパっ! ほんとに目が覚めたんだねっ!」


少女――月陽が、頬を紅潮させて笑っている。

彼女はベッドの縁にしがみつき、新太を覗き込む。


その無邪気な声と笑顔に、新太は戸惑いながらも微かに口元を動かした。


「……君は……?」


灯が横から告げる。


「月陽ちゃんです。あなたの娘さん。」



◆ 月陽の言葉


少女はにこっと笑うと、透き通る声で言った。


「私はね、パパの言うこと、何でも聞くね!」


その言葉が病室に響いた瞬間、

新太の胸奥で、かすかな鈍い音がした。


彼女の瞳に映る“父親”としての自分に、

強い違和感はなかった。

だが、違和感がないことに、かえって戸惑いを覚えた。



◆ 沙耶の登場


その時、病室のドアが再び開く。


淡いベージュのワンピースに身を包んだ女性が入ってきた。

肩口で揃えられた髪、穏やかな微笑み。

だが、その瞳の奥には冷たい硬質が潜んでいる。


「あなた……大丈夫?」


柔らかな声が新太に届く。


灯が淡々と告げる。


「こちらが奥様の沙耶さんです。」



◆ 灯の心の声


(沙耶さん……

あなたは彼を救いたいの?

それとも……永遠に眠らせたいの?)


灯はゆっくりとカルテを抱え直し、無機質な病室を後にした。



第6章・完


第6章をお読みいただき、ありがとうございます。

第1章では謎だった「記憶喪失の原因」が明かされました。

それは事故の後遺症ではなく、**人為的な「メンテナンス」**によるもの。

• 妻・沙耶の強い要望による記憶処理。

• それを冷静に観察する灯。

• 無邪気に「なんでも聞くね」と言う月陽。

「幸せな家族」の皮を被った「管理された日常」が、いよいよ始まります。

灯は、この歪んだ家族の中で何をしようとしているのでしょうか。

【読者の皆様へのお願い】

物語の核心が見え始めたところで、

「そういうことだったのか!」「続きが気になる!」 と思っていただけましたら、

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