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ECHO-記憶の残響-  作者: GODS04


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第59章:偽りの空、真実の地

地下には真実の愛が、地上には偽りの光が。

二つの世界が交わる時、物語は新たな局面へ。



(夜明けは、誰にでも訪れるわけではない。

それは、闇を歩き抜いた者だけが掴める特権だ。)



◆【真羽まうの朝】


地下施設の人工照明ではない、柔らかな朝の気配。

昨日まで「月陽」だった少女は、ゆっくりと目を開けた。


かつては目覚めと共に恐怖が襲ってきた。しかし今、胸にあるのは静かななぎだ。



「……おはよう、真羽まう。」


枕元には、ともりがいた。

その表情は、看護師としての冷静な仮面ではなく、慈愛に満ちた「母親」の顔だった。


「……おはよう、ママ。」


真羽は、少し照れくさそうに、けれどハッキリとそう呼んだ。

その響きに、灯の瞳が潤む。



もう、悪夢の中のママにすがるだけの夜は終わった。

目の前にいる、温かい手で触れてくれるママと共に生きる朝が来たのだ。


真羽は自分の掌を見つめる。


(わたしは、志 真羽。……パパとママが、たくさんいる子。)


その事実は、複雑さよりも、彼女にとって最強の「鎧」となっていた。



◆【最強の家族】


「おう、起きたか。……腹減ったろ。」


無骨なドアが開き、エプロン姿の紋之丞もんのじょうが入ってきた。

その手には、焼きたてのトーストと、不格好に切られたリンゴが載った盆がある。



元暴走族総長の強面こわもてに、ファンシーなエプロン。

そのあまりのミスマッチさに、真羽と灯は顔を見合わせ、吹き出した。


「あはは! パパ、似合わない!」


「うるせぇ! ……これでも味には自信あんだよ。」


紋之丞は照れ隠しに鼻をこすりながら、盆をベッド脇に置いた。



「食え。……これからお前を守るには、体力が必要だ。俺も、お前もな。」


その言葉には、父親としての不器用な覚悟が滲んでいた。


真羽はリンゴを一切れ口に運ぶ。

甘酸っぱい味が口いっぱいに広がる。


それは、恐怖の味がしない、「幸せ」の味だった。

この地下室は、今や世界で一番安全な要塞となっていた。



◆【硝子ガラス細工の善人】


一方、地上。

突き抜けるような青空の下、黒峰 新太あらたは公園のベンチに座っていた。


「新太さん、ありがとう。助かったよ。」


近所の老人が、新太の手を握って礼を言う。

重い荷物を運ぶのを手伝ったのだ。新太は、屈託のない笑顔で答える。


「いえ、当たり前のことをしただけですから。」



その笑顔に、嘘はない。曇りもない。


かつて「翔真」として多くの人を傷つけた手は今、誰かを助けるために使われている。


だが、その光景を少し離れた場所から見つめる妻・沙耶さやの瞳には、微かな「不安」が揺らいでいた。


新太の善意は、あまりにも純粋すぎる。

まるで、真っ白なキャンバスに描かれた絵空事のように。


(あなたは誰? ……私の愛する新太は、本当にここにいるの?)


沙耶は新太の背中を見つめながら、自身の胸のざわめきを必死に押し殺していた。



◆【狼煙のろし


地下のモニタールーム。

透也とうやは、監視カメラ越しに新太の笑顔を冷ややかに見つめていた。


「……皮肉なもんだな。」


背後から、甲斐が工具を片手に呟く。


「記憶を消されたあいつの方が、よっぽど真っ当な人間やってやがる。……あいつの『善行』で救われてる人間がいるのも事実だ。」


「ああ。だが、それはプログラムされた偽りの光だ。」



透也はモニターの電源を切り、振り返った。

その瞳には、復讐者としての暗い炎と、リーダーとしての静かな闘志が宿っている。


真羽まうは覚醒した。守るべきだけの存在じゃない。……俺たちの『希望』になった。」


透也は、壁に貼られたRE:CODE計画の相関図、その頂点にある「結城 維人」の写真にダーツを突き立てた。


「次は俺たちの番だ。……偽りの平穏を終わらせる。」



真羽を取り戻したNOISEは、もはや逃げ隠れするだけの組織ではない。


地上ひかり地下やみ

二つの家族、二つの正義が激突する時は、刻一刻と迫っていた。



第59章・完


第59章をお読みいただきありがとうございます。


地下で強くなる真羽と、地上で違和感を抱き始める沙耶。

二つの家族の物語が、ここから大きく動き出します。

新太の善意は本物なのか、それとも……。

今後の展開にご期待ください。


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