第36章:奪還への影
救うべきは娘か、それとも殺人鬼の過去を持つ父親か。
作戦決行を前に、NOISEの中で非情な選択が迫られます。
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(誰を救うのか。誰を救わないのか。
その選択が、いつも一番残酷だ――。)
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◆【NOISE仮拠点 – 作戦会議】
2051年2月。夜。
地下会議室のホログラムモニターには、改訂者専用区域の立体図が投影されていた。
赤く点滅するのは警備ライン。青い光点は監視カメラ。
そして中央に浮かぶのは――“黒峰家”と記された居住区。
部屋には重い沈黙が満ちていた。
「……月陽の部屋と、新太の部屋が隣接している。」
佳乃が指先で区域図を回転させる。
「ミカゲが残したバックドア経路なら、廊下セキュリティを10分間ダウンできる。でも……」
真田が冷たく継いだ。
「……その10分で二人を奪還するのは不可能だ。」
透也は腕を組み、静かに目を閉じた。
「……月陽優先だ。」
短く告げられた決断。
佳乃が冷たい声で呟く。
「新太は?」
透也は瞳を伏せた。
「……状況次第だ。」
「状況?」
「……あいつがECHOを発現すれば……記録改訂制度を崩壊させる鍵になる。」
佳乃は無表情でコード解析を続けながら言った。
「でも……あいつは光生さんを殺したんだよ?」
沈黙。
真田が低く吐き出す。
「奴を助ける意味はあるのか?」
甲斐が席を立ち、端末を閉じた。
「……あいつは改訂されてる。だが、完全に戻れば……“理想の父親”ではなくなる。」
「つまり?」
「月陽を守れる存在ではなくなる。むしろ、危険だ。」
「しかし、RE:CODEの弱点にも……」
室内の空気が張り詰めた。
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◆【透也の決断】
(……だとしても……)
透也は拳を握り締めた。
(光生……お前なら、どうする……?)
「……新太は、最終ターゲットだ。
月陽奪還を最優先とし、彼がECHOを発現した場合のみ回収する。」
真田は静かに頷いた。
「了解。」
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◆【改訂者専用区域 – 灯の独白】
同刻。
白い廊下を歩く灯の靴音だけが響いていた。
ナースステーション横の窓から見える居住区。
ソファーに小さく丸まって眠る月陽の姿があった。
(……ごめんね、真羽ちゃん……)
拳を握り締める。
(あと1ヶ月……あと少しで……絶対に、ここから連れ出すから……)
思考の奥に、新太の顔が過る。
(……新太さん……)
胸が痛んだ。
(あの人も……本当は……)
瞳を閉じると、過去の記憶が蘇る。
柔らかく笑う光生。
その隣で不器用に笑う翔真。
そして、幼い真羽を見つめる二人。
(……家族だったのに……)
唇を噛む。
(でも……NOISEは……あの人を助けるとは言わない……)
その時、ナースステーション奥から沙耶の冷たい声が響いた。
「白石さん、配膳後の検温、まだですか?」
「……はい。今、行きます。」
灯は小さく頭を下げ、カルテを抱え直した。
(……でも、私は……)
(誰も……置いていかない……)
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◆【黒峰家 – 夜】
ソファーで眠る月陽の隣。
新太はゆっくりと座り込み、その髪を撫でていた。
(……この子……泣いてた……)
ぼんやりと、脳裏に微かな映像が浮かぶ。
――泣き叫ぶ少女。
――自分を見上げる、怯えた瞳。
(……誰だ……これは……)
胸の奥がひどく痛む。
(分からない……分からないけど……)
乾いた涙の跡が残る月陽の頬を撫でる。
(……泣かなくていい……)
(もう、泣かなくていいから……)
しかし、その手は震えていた。
(俺は……誰だ……?)
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◆【作戦まで】
(奪還作戦まで、残り30日――。)
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第36章・完
お読みいただきありがとうございます。
奪還作戦まで残り30日。
NOISEの方針は「月陽の救出が最優先、新太は状況次第」というシビアなものになりました。
かつて光生を奪った男・翔真(新太)を救うべきか否か。彼らの葛藤は痛いほど分かります。
一方で、潜入している灯だけは「誰も置いていかない」という強い意思を持ち続けています。
そして新太自身も、月陽の寝顔を見ながら記憶の断片(ECHO)に触れ始めました。
彼が思い出すのは、過去の罪か、それとも愛か。
全ての運命が交錯する日が近づいています。
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