第29章:封じられた過去
内部からの情報提供、そして外部からのハッキング。
二方向からの攻略が進む中、予期せぬ「謎」が浮上します。
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◆ 【灯からの報告】
2050年、RE:CODE看護師休憩室。
夜勤明けの空気は、無機質で冷たかった。
灯は備え付けの端末を膝上に置き、震える指で暗号化送信ボタンを押した。
【送信先:NOISE】
【内容:家族構成データ】
•黒峰新太(40)
•黒峰沙耶(35)
•黒峰月陽(6)
(……新太さんと沙耶さんの情報は無いけれど……佳乃さんなら……)
画面には【送信完了】の文字。
タブレットを胸に抱き、灯は小さく目を閉じた。
(みんな……お願い。)
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◆ 【NOISE会議室 – 焦燥】
同時刻、NOISE仮拠点。
薄暗い会議室には、ホログラムモニターに映し出された情報が並んでいた。
「これが……」
透也が唸るように呟いた。
灯から届いた家族データ。
しかし――
「新太と沙耶の詳細ファイルが……ない……」
佳乃が歯噛みするように吐き出した。
真田が腕を組み、無言でモニターを睨む。
(黒峰新太。黒峰沙耶。黒峰月陽……これが“仮初めの家族”か。)
佳乃はタブレットを操作し、指先でコードを叩き込んだ。
「……無いなら、取りに行くしかないでしょ。」
ホログラムモニターに、RE:CODE研究所の暗号システムが立ち上がる。
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◆ 【佳乃のハッキング】
「……くそっ。」
モニターに無数のコードが流れ、赤い警告文字が弾けた。
《アクセス拒否 – セキュリティブロック》
「前より……遥かに堅い……!」
苛立ち混じりに銀髪をかきあげる。
横で真田が低く呟いた。
「佳乃。疲れたら休め。」
「はぁ?休んでる暇あったら突破するわ。」
彼女は無言で手首の簡易心拍計を確認する。
140を超えていた。
(落ち着け……落ち着け……。)
短く息を吐き、指先を再び走らせる。
(……結城維人。お前……本気で隠す気だな。)
しかし、赤い警告が無慈悲に弾け続ける。
「暗号アルゴリズムが……書き換えられてる……!」
震える声で呟いた。
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◆ 【甲斐への問い】
「……ねぇ、甲斐さん。」
佳乃は背後にいる甲斐へ振り返った。
「前にさ……help.yってファイル見つけたの、覚えてる?」
甲斐は小さく首を傾けた。
「help.y……?」
「おっさんのPCにあったやつ。認証系フォルダに隠してたじゃん。」
甲斐は唇を噛み、震える声で答えた。
「……いや……覚えてない。」
「本当に?」
「……本当だ。そんなファイル、作った覚えも、保存した覚えも……ない。」
その瞳は怯えていた。
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◆ 【甲斐の恐怖】
「……俺が作ってないファイルがあるってことは……」
甲斐は震える指で端末を握り締めた。
「誰かが……俺の名前を使って保存したか……」
声が掠れる。
「……俺の……記憶が……消されてるか……どっちかだ……」
医師でも研究者でもない、
ただ“奪われる側”の人間の表情だった。
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◆ 【佳乃の決意】
しばらく無言で画面を睨んだあと、佳乃はインカムを繋いだまま呟いた。
「……ねぇ甲斐さん。」
『……何だ。』
「RE:CODEの暗号システムが組み込まれてる施設って、どれくらいあるの?」
タップ音だけが室内に響く。
やがて甲斐は、深く重い声で答えた。
『……ほとんど、だ。行政区、医療機関、司法、教育、福祉……この国の根幹システムのほとんどは、RE:CODEの暗号化と繋がっている。』
佳乃の瞳が鋭く光る。
(かなりの数か……でも、試してみるか……)
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◆ 【灯の独白】
夜。
個室のナースステーションで、カルテ整理をする灯の視界に、月陽の寝顔が映る。
微かに動く胸。穏やかな呼吸。
小さな手には、母を思わせる女性の絵が握られている。
(この子まで……奪わせない……)
涙を堪え、灯は小さく囁いた。
「必ず……守るから。」
白い天井の蛍光灯が、涙の粒を鈍く照らしていた。
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第29章・完
お読みいただきありがとうございます。
灯がリスクを冒して送ったデータ。しかし、肝心の「黒峰夫妻」の詳細部分は、結城によってさらに強固なセキュリティで守られていました。
そして浮上した「help.y」という謎のファイル。
甲斐のPCにありながら、甲斐自身が「知らない」と恐怖するその正体は一体何なのでしょうか。
また、佳乃が目をつけた「国の根幹システムのほとんどがRE:CODEと繋がっている」という事実。
これが突破口になるのか、それとも新たな危険への入り口なのか。
物語の謎が深まる回となりました。
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