第26章:揺らぐ記憶と決意
潜入へのカウントダウン。
リスクを前に、禁断の技術「記憶のバックアップ」が提案されます。
そして、甲斐の身に異変が――。
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◆ 【潜入計画会議】
2048年、NOISE仮拠点 会議室。
ホログラムモニターに、RE:CODE研究所の施設構造図が映し出されている。
「潜入経路は……正規ルートのみか。」
真田が低く呟く。
灯は頷いた。
「はい。裏口も搬入口も……全て改訂者管理IDがないと入れない。」
佳乃がタブレットを操作しながら吐き捨てた。
「本当、性格悪い作りしてるよね、あそこ。」
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◆ 【真田の冷徹】
「……灯。」
真田の鋭い視線が灯を射抜く。
「もし、お前が記録改訂されたら……」
空気が張り詰めた。
「……NOISEの全データが向こうに渡ることになる。」
灯は俯き、唇を噛んだ。
「……分かってます。」
その声は震えていたが、瞳だけは揺らいでいなかった。
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◆ 【佳乃の提案】
「なら……バックアップ取っとく?」
佳乃があっけらかんと言った。
「灯の記憶全部、外部ストレージに保存する。最悪の場合、“元の灯”をここに残せる。」
透也が顔を上げた。
「……記憶をデータ化……?」
「うん。私と甲斐さんでやれば可能。」
佳乃は画面をスワイプしながら、涼しい顔で続ける。
「問題は倫理観だけだよ。」
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◆ 【透也の葛藤】
透也は目を伏せた。
(記憶を……データ化……)
(……同じじゃないか……)
彼は深く息を吐き、顔を上げた。
「……最終手段として考えておけ。」
「了解。」
佳乃は軽く頷いた。
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◆ 【甲斐の異変】
同時刻、NOISE医療ブース。
甲斐は端末に向かい、血液分析結果を整理していた。
(……灯のバックアップか……)
その時。
ズキンッ。
突然、脳を焼くような激痛が走った。
「っ……あ……が……っ……!」
机に倒れ込み、震える指先で端末を掴む。
(……やめろ……やめてくれ……)
視界が白く歪む。
フラッシュバック。
――暗い診療室
――泣きじゃくる光生
――「……ごめんなさい……甲斐さん……」
何だ?この記憶は……。
「……ひっ……あああああっ!!」
モニターが警告音を鳴らす。
【心拍異常 – 呼吸過多 – ECHO兆候】
(……これは……ECHO……?罠……?)
甲斐は荒い息を吐き、震える瞳で虚空を見つめた。
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◆ 【決意と沈黙】
冷たい蛍光灯の下。
会議室では、透也と佳乃が無言でホログラムを見つめていた。
灯は拳を握りしめ、静かに呟く。
「……行きます。絶対に、取り戻す。」
その声は小さくとも、張り詰めた空気を震わせるほど強かった。
(光生さん……真羽ちゃん……待っててください。)
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第26章・完
お読みいただきありがとうございます。
灯の決意は固まりましたが、そのリスクは計り知れません。
そんな中、佳乃が提案した「記憶のバックアップ」。
大切な仲間を守るためとはいえ、彼らが否定し続けてきた「記憶のデータ化」に手を染めることへの葛藤が描かれました。
そして、甲斐を襲った謎の頭痛とフラッシュバック。
光生の最期を知るはずの彼が見た「ごめんなさい」という言葉の記憶。
これは彼自身の封じられた記憶なのか、それとも研究所が仕込んだ罠なのか。
不穏な空気を残したまま、物語は進んでいきます。
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