第25章:声が光る場所
冷たい雨の中で震えていた少女が、光に出会う物語。
そして今、彼女自身が誰かの光になろうとしています。
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◆ 【施設からの逃亡】
2039年、雨の夜。
街灯の届かない廃工場裏で、少女は膝を抱えていた。
(寒い……お腹……すいた……)
痩せた腕には無数の痣と注射痕。
その指先は小刻みに震えている。
幼い頃から両親の犯罪に巻き込まれた。
覚醒剤運搬、窃盗補助、詐欺現場での“同情誘導役”。
「お前は生まれた時から役立つ存在だ」と言われ続けた。
やがて、両親は逮捕。
彼女には“危険因子”の烙印が押され、改訂者予備軍育成施設へ収容された。
(……誰も……いらないって言う……)
閉ざされた隔離病棟。
注射と電気刺激で「従順さ」を強要される日々。
(……もう、いや……)
隙を突いて逃げ出した少女は、雨に打たれながら廃材に凭れかかった。
(死ぬ……のかな……)
その時だった。
「大丈夫……?」
優しい声が闇を裂いた。
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◆ 【光生との邂逅】
少女の瞳に、白衣を着た女性が映る。
「……動かさないで……今、手当てするから。」
差し出された手の温かさに、少女の張り詰めていたものが崩れた。
「やだ……帰りたくない……施設……やだ……」
涙で濡れる頬を、光生はそっと撫でた。
「大丈夫。もう戻さない。」
(……戻らない……?)
「あなたには……声がある。
声はね、奪われちゃいけないものなの。」
その言葉が、少女の中で深く灯った。
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◆ 【VTuber“LUKA_ノイズ”】
2048年、NOISE地下拠点。
薄暗い部屋に、一際明るい配信ブース。
ヘッドセットを装着した銀髪碧眼の少女が、ゆっくりとカメラを見つめる。
《配信開始まで…3…2…1…》
「こんばんは。ルカだよ。」
コメント欄が一瞬で埋まる。
【ルカちゃんきたー!】【待ってた!】【NOISEの女神】
その中に、ひっそりと一つ。
【今日も無理すんな。ご飯、ちゃんと食べろよ】
ルカは無表情のまま、口元だけを僅かに緩めた。
「……ご飯は、佳乃さんが作ってくれたカレー。ちゃんと食べたよ。」
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◆ 【透也の秘密コメント】
別室。
タブレットを握る透也が、小さく微笑む。
(よかった……)
背後から、佳乃が呆れた声を上げる。
「隠してるつもり?バレバレ。」
「……確認だ。」
「はいはい、“確認”ね。」
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◆ 【アンチと優しいファン】
コメント欄に流れる鋭い言葉。
【NOISEとかテロリストだろ】【こいつ洗脳されてんじゃね】
ルカは無表情のまま呟く。
「……そう思う人も、いるよね。」
だがその直後、画面は嵐のように変わった。
【アンチは帰れ】【ルカちゃん泣かすな】【ルカ様はNOISEの希望】
一つの長文コメントが目を引いた。
【アンチさんへ
私も最初はそう思ってました。
でも……ルカちゃんの配信に救われたんです。
仕事で失敗して、自分を責めて……でも、ルカちゃんの“声”で救われました。
今度、カフェ開きます。もしNOISEの方が来ても、差別しないで迎えたいです。
だから……どうか、少しだけ優しい目で見てください。】
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◆ 【未来の協力者】
このコメント主は、都心で個人カフェを開業準備中の男性バリスタだった。
昔は暴走族に所属し、度重なる窃盗や暴行で保護観察処分を受けた過去を持つ。
(俺だって……救われた。
あの声に。)
彼はこの後、NOISEの地下連絡ルートに店を提供する事になる。まだ少し先の話しです。
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◆ 【ルカの独白】
配信終了後。
ルカは静かなモニターに向かって呟いた。
「……光生さん。」
ヘッドセットを外し、虚空を見つめる。
「私……誰かを救えてる?」
返事はない。
けれど胸の奥で、あの夜聞いた声が今も灯っている。
(声は奪われちゃいけないもの……
私の声で……救えるなら……)
ルカは無表情のまま、ゆっくりと笑った。
その微かな笑みは、雑音の中で確かな光となっていた。
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第25章・完
お読みいただきありがとうございます。
NOISEの広報塔として活動するVTuber・ルカ。
彼女もまた、かつて光生に救われた「奪われかけた子供」の一人でした。
クールに見える彼女が、透也の不器用なコメントに少しだけ表情を緩めるシーンなど、NOISEメンバーの家族のような絆が描かれました。
また、配信を通じて救われたファン(未来の協力者)の存在も示唆され、彼女の「声」が確実に誰かに届いていることがわかります。
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