第18章:奪われた声
悲しみは、いつしか怒りへ。そして刃へ。
平和的な支援団体だった「NOISE」が、牙を剥く理由がここで明かされます。
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◆ 【行方不明の報せ】
2046年、夏。
NOISE拠点の空気が張り詰めていた。
「……一家全員、行方不明?」
佳乃がモニター越しに警察発表を睨みつけた。
「馬鹿な……光生さんが?そんなわけ……」
灯は両手を握りしめ、震える声を絞り出した。
「数日前まで……普通に出勤していて……私と話してたんです……」
透也は何も言わなかった。
ただ、壁に貼られた光生の写真をじっと見つめていた。
隣で真田が低く呟く。
「警察は“家庭内トラブルによる失踪”で片付ける気だ。
何の捜索指令も出ていない。」
「……そんな……」
灯の目から、悔し涙が溢れた。
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◆ 【回想 -最後に見た光生】
「灯ちゃん、これお願いね。」
笑顔でカルテ整理を頼む光生。
だが、その微笑みの奥に、ほんの僅かな翳りがあった。
(……今思えば、あの時……
光生さん、翔真さんのことで悩んでたような……)
「……何か、翔真の様子が変だったとかは?」
透也の問いに、灯は首を振った。
「分かりません……でも……」
「でも?」
「……光生さん……怖いって、言ってました。」
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◆ 【疲弊するNOISE】
連日、近隣への聞き込みが続いた。
「見てないってさ。」
真田が肩を落として戻ってくる。
佳乃も、端末を閉じため息をつく。
「データも監視網も抜けてる……
完全に“消された”としか思えない。」
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◆ 【甲斐の接触】
夜。
古い診療所跡地の外階段。
透也は薄い夜風に髪を揺らしながら、建物を見上げていた。
(光生……どこだ……)
「……朝比奈透也さんですね?」
静かな声に顔を上げる。
白衣の裾を翻し、黒髪を後ろで束ねた眼鏡の男が立っていた。
「……あんたは?」
男は静かに名刺を差し出した。
【甲斐 仁 – 元RE:CODE研究所協力医師】
透也は一瞥し、低く問うた。
「……何の用だ。」
「不破光生さんのことです。」
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◆ 【甲斐の告白】
診療所の奥。
甲斐はタブレットを差し出した。
「これは……」
画面には、血のついた床に倒れる光生の写真。
そして、彼女の頬に触れながら無表情で立ち尽くす翔真。
「これは……なんだ……」
声が震えた。
「これが、彼女の最期の姿です。」
「……どうして、あんたがこんなものを……!」
「私は……彼女を助けられなかった。」
甲斐の指が、僅かに震えた。
「だが、真実を知ってほしかった。」
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◆ 【真羽の行方】
透也は涙を流しながら、甲斐の胸倉を掴んだ。
「……真羽は!?光生の娘はどこだ!!」
甲斐は顔を伏せ、微かに首を振った。
「分からない……私も……それが知りたい。」
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◆ 【決意 – NOISE始動】
診療所を出る頃、夜が明け始めていた。
冷たい朝焼けの下で、透也は空を見上げた。
「……光生。」
灯が涙を拭い、佳乃と真田が並び立つ。
透也は振り返り、僅かに笑った。
「……始めるぞ。」
「リーダー……」
「NOISEは、ここからだ。
奪われた声を、取り戻す。」
静かなその声は、
夜明け前の空気に溶け込み、やがて力強い決意となって響いていった。
市民団体NOISEが、武装団体NOISEとしての始まりでも、あった。
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第18章・完
お読みいただきありがとうございます!
最愛の妹・光生の死を知った透也。
その怒りと絶望が、NOISEを「武装集団」へと変貌させました。
リーダーとしての決意、そして復讐への道。
そして、その引き金を引いたのは、スパイとして送り込まれた甲斐仁。
彼は「真実」を伝えましたが、その裏にある研究所(結城)の思惑通りに事が運んでいるようにも見えます。
しかし、行方不明となった娘・真羽の存在が、計算外のノイズとなるかもしれません。
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