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ECHO-記憶の残響-  作者: GODS04


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第17章:雑音の系譜

完璧な音楽(社会)にとって、人間らしさはただの雑音ノイズなのか。

組織の原点と、動き出した「罠」の物語です。



◆ 【2035年 設立回想】


静かな会議室。

古びた木目調のテーブルに、数人の人影が集まっていた。


「……名前は?」


透也の問いかけに、光生がノートをめくりながら微笑んだ。


「“NOISE”。」


「雑音、か。」


隣で腕を組む真田剛志が呟く。


「でも……記録改訂って、完璧な音楽を作るみたいなものでしょう?

記憶や人格を編集して、“理想の人間”を作る。

でも、人間は雑音があるからこそ人間だって、私、そう思うの。」


光生の声は柔らかく、しかし強い芯を帯びていた。


「奪われた記憶や感情を、ノイズとして取り戻す。

それが、この支援グループの名前。」


透也は妹を見つめ、わずかに笑った。


「……いい名だ。」



◆ 【2039年 – 支援活動の日々】


医療ボランティアとして診療室を訪れた灯は、いつものように包帯を補充していた。


(光生さん……)


奥の診察ベッドでは、光生が幼い少女の髪を撫でている。


「怖くないよ、大丈夫。」


少女は震えながらも、光生にだけは心を開いていた。


(この場所があるから、あの子たちは生きていける……

光生さんがいるから、私はここで頑張れる。)


ふと振り返ると、壁には手書きのポスターが貼られていた。


《NOISE – 記録改訂者支援グループ

医療支援 / 生活相談 / 記憶安定化サポート》


灯はポスターに指先で触れ、小さく息を吐いた。


(雑音……

でもこの世界には、きっと必要な音。)



◆ 【光生とルカ】


診察室の奥。

光生は診察台の上で泣きじゃくる少女にガーゼを巻いていた。


「ルカちゃん、大丈夫だよ。今日は痛くしないからね。」


少女は涙を溜めた瞳で光生を見つめ、小さく頷いた。


(あの子……

本当はすごく怖いはずなのに……)


灯はルカのカルテに目を落とした。


【名前:天音ルカ

年齢:6歳

記録改訂処置歴:なし(経過観察中)】


光生が優しく言った。


「ルカちゃんは偉いね。痛いの、ちゃんと我慢できた。」


「……みんな、いなくなるの……」


掠れた声。


光生は微笑み、額に手を置いた。


「ルカちゃんは大丈夫だよ。私がいるからね。」



◆ 【光生と翔真の結婚】


診療室を出た灯は、廊下でカルテ整理をしていた光生に声をかけた。


「光生さん、今日のシフト、お疲れ様です。」


「ありがとう、灯ちゃん。」


その左手薬指に光る細いリングに、灯は気付いた。


「……それ、結婚指輪ですか?」


光生は恥ずかしそうに笑った。


「うん。最近、籍を入れたの。」


「えっ……あの、不破さんと……?」


光生は頷いた。


「びっくりだよね。でも……この人なら、大丈夫だって思ったの。」


そう言って微笑む光生の瞳には、決意と僅かな不安が混ざっていた。


灯はその横顔を見つめ、胸が締め付けられるのを感じた。


(……どうか、幸せでいてください。)



◆ 【甲斐の接触】


2046年夏、光生殺害から1週間後。


古い診療所跡地の外階段。

透也は薄い夜風に髪を揺らしながら、建物を見上げていた。


「朝比奈透也さんですね?」


背後から静かな声がした。


振り返ると、黒髪を後ろで束ね、細身の眼鏡をかけた男が立っていた。


「……あんたは?」


男は静かに名刺を差し出した。


【甲斐 仁 – 元RE:CODE研究所協力医師】


透也は一瞥し、目を細める。


「研究所の人間が……何の用だ。」


甲斐は夜風の中、微かに震える声で言った。


「不破光生さんのことです。」


透也の胸奥に、鋭い痛みが走った。


「……何を知っている。」


「すべてです。」


甲斐の瞳には恐怖と決意が宿っていた。


「彼女の最期と……この制度の真実を。」



第17章・完


お読みいただきありがとうございます!


「NOISE」という名の由来、そして在りし日の光生の姿が描かれました。

彼女の優しさが、ともりやルカといった人々の心に深く刻まれています。


そしてラスト。

研究所の医師・甲斐仁が、NOISEのリーダー・透也に接触しました。

前章をご覧になった皆様には、この接触が「仕組まれたシナリオ」であることがお分かりいただけると思います。

「NOISEに共感するように」改訂された甲斐の言葉は、嘘偽りのない本心として透也に届いてしまうでしょう。


それぞれの運命が交錯します。


ここまでお付き合いいただきありがとうございました!

「過去編、読み応えがあった!」「ここからの展開が楽しみ」と思っていただけましたら、

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