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ECHO-記憶の残響-  作者: GODS04


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第16章:鎖を刻む手

一人の医師が選んだ、最期の抵抗。

そして、その想いさえも利用しようとする冷徹な意思。

過去編の裏で動いていた、もう一つの真実です。



(誰かのために生きてきた。

でも今は……誰のために死ぬんだ、俺は――。)



◆ 【医療班モニタールーム】


2046年、夏。


白い蛍光灯が鈍く反射する、RE:CODE研究所 第3階層 記録改訂処置室。


甲斐仁は静かにモニタールームの端に座り、薄い笑みを浮かべていた。


(ここまでか……)


目の前の端末には、自分自身のカルテデータと、数行の暗号コードが表示されている。


【R_KAI_MEMO.EXE】


それは、彼が数日前から書き溜めていた“記憶の抜粋”だった。


「……これでいい。」


誰にも聞こえないように呟き、最後のキーを叩く。

データは、研究所のメインサーバー深層に暗号化され、隠蔽された。


(いつか、誰かがこれを開ける時が来る……。)


薄れゆく意識の奥で、真羽や光生の顔が揺らめいた。



◆ 【甲斐の心理】


処置室へ移動する直前。


甲斐は誰もいない廊下で、壁にもたれかかっていた。


(……俺は……何を救おうとしてた?

患者か……制度か……それとも、自分自身か……)


指先が微かに震える。


(……本当は……ただ……)


瞼を閉じると、あの日、血塗れの床に崩れ落ちた光生の姿が蘇る。


(……ごめん……救えなくて……)


乾いた笑みが唇を歪めた。


(でも、あんたの“理想”だけは……この中に残しておくから……)


背を離すと、足取りは決意の重さを纏い、処置室へと向かった。



◆ 【記録改訂準備】


処置室の外では、橘がタブレットを操作しながら結城に問いかけていた。


「主任。甲斐チーフを改訂するなら、研究所内で働かせ続ければいいのでは?」


結城はホログラム上に投影された、甲斐の神経データを無表情で眺めていた。


「……それも一案だな。」


「医療班は人材不足です。わざわざ社会に戻す必要は――」


結城はそこで言葉を切り、灰色の瞳を細めた。


「いや。」


「……主任?」


「“元RE:CODE研究所医療班”。」


短く呟き、指先で甲斐の記録改訂シークエンスに別のコードを追加する。


「NOISEは今、光生を失い混乱している。そこに“国家直属研究所出身の医師”が接触すればどうなる?甲斐は改訂するが、一部の記憶は残す。」


橘は目を見開いた。


「まさか……NOISEに、潜入させるつもりですか?」


「“潜入”ではない。“再構築”だ。」



◆ 【記憶再構築シークエンス】


ホログラム画面には、新たな改訂プロトコルが表示されていた。


【記憶改訂項目】


– NOISE理念への共感

– 国家への忠誠

– 潜入活動指令:敵性思想監視


「……スパイとして送り込む?」


「当然だ。」


結城は淡々と答えた。


「甲斐仁は優秀だ。だが、優秀さゆえに余計な情動が芽生える。」


ホログラムに映る、甲斐の過去カルテ――


(“患者の苦痛を和らげたい”“記録改訂法への倫理的疑念”)


「NOISEは、彼のような医師を喉から手が出るほど欲しがるだろう。光生の次に、な。」


橘は震える息を呑んだ。


「これが……理想社会のためですか。」


結城は答えなかった。



◆ 【処置室 – 改訂開始】


電子音が鳴り響き、処置チェアの上で甲斐の身体が微かに痙攣した。


【記憶改訂プロセス開始】


結城は無表情でモニターを見つめ続ける。


(……これでいい。)


(社会は“理想”に近づく。必要なのは、結果だけだ。)


ホログラムには、甲斐仁の新しいプロファイルが淡々と更新されていった。


【NOISE潜入スパイ – コード:K-01】


彼が残した暗号化メモの存在を知る者は、誰もいなかった。



第16章・完


お読みいただきありがとうございます!


甲斐仁の運命が明らかになりました。

ただ記憶を消されるだけではなく、反乱組織「NOISE」へ潜り込むためのスパイとして再構築される――。

結城維人の合理性は、どこまでも残酷です。


しかし、甲斐はただでは終わりませんでした。

サーバーの深層に残された『R_KAI_MEMO.EXE』。

この小さなデータが、未来でどのように作用するのか。それが現代編の鍵の一つになるかもしれません。


「甲斐先生の覚悟に痺れた!」「結城の冷酷さが怖いけど凄い」と感じていただけましたら、

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