【短編小説】ゲーミング入滅
群青色の雲は千切れて灰色をした空に散らばっていた。
その空は公共工事のせいだ。
その雲は姥捨山に税金で建設されたデンデラから出たものだ。
デンデラ。姥捨山。
むかしは悲劇の代名詞だったらしい。
今じゃ捨てられ待ちの待機老人が増え過ぎて国は大変な事になっている。
老人たちはデンデラに行くのが待ち遠しいらしい。そこは下界を忘れるくらいの天国らしい。
かつてのデンデラは、捨てられた事に対する奴らの復讐。それは死なない事だった。
それが長く続いた。
やつらは死ななかった。
おれらの国は戦争や巨大獣による災害と言ったグレートリセットの無いままデンデラだけが増えていった。
若い男たちはデンデラを建てて死んでいく。その血と肉で建てられたデンデラに笑顔で入居する老人たち。
蛍光ブルーと蛍光グリーンで光り輝くサイバーギャルのゲーミング膣から出たハンバーグばぐ子は、そのデンデラの新規建設よりウンザリする事を町内放送で聞いた。
「こちらは、日本政府当局です。
お釈迦さまからみなさまに、大切なお知らせがあります。
来月に復活を予定していたお釈迦さまですが、爆破及び殺害予告が出た為に、復活を中止し、警察や弁護士と相談の上、次回入滅まで復活を見合わせる予定となりました」
ハンバーグばぐ子は吐瀉物の混ざったため息を吐く。
いつだってそうだ、救いなんてものは嘘でしかない。
仕方ないから諦めにそう言う名前を付けているに過ぎない。
ハンバーグばく子は、祖父母を殺して懲役に行った友人の事を思い出した。
アイツは立派だった。
諦めなかったし、受け入れなかった。奴こそが日本の為に生きたほんたうの男だ。
刑務所に入る時もハンバーグばぐ子たちは万歳三唱で送った。
「生きて帰れ!」
だが大概の人間の人生は祖父母を殺せないからクソと諦めで構築されている。
さらに良く無いのはブンカ系の奴らだ。
働きもしねぇスノビストが言う脱構築なんてのは単なる怠惰だ。
奴らの人生に諦めが足りて無い。
その癖に他人の力で希望を叶えようとする。
奴らは諦める程の賃労働をしてない。
パートタイム、アルバイト、あとは芝居だとかの終わらない学園祭をやる間に、他の奴らは人生の円環を再生産してる。
周回遅れの人生で、殴り返さない相手を罵倒してイキがっている。
だけどハンバーグばぐ子もそんな奴らの一味だった。
人生の円環を再生産できずにいる。
社会不適合者だ。
「さようなら、人生!」
ばぐ子は何度でもゲーミング膣に帰ろうとした。
そうだ、ゲーミング寺のゲーミング胎内巡り!光輝く産道!
アンドロイド千手観音が焼き払った後の街に産まれたハンバーグばぐ子が見たのは双眼鏡で街を眺めるデンデラの老人たち!その手には酒の満ちたグラス!口元の微笑み!
だからハンバーグばぐ子たちは超合金メカでアーバンベアを量産した。
自分の手で殺せないなら、自分たちの代わりに殺してくれる存在を作ればいい!!
都会から放たれた超合金アーバンベアたちは、山に登って、そしてすべてのデンデラを打ち壊すまで止まらない予定だった。
だがしかしそうはならなかった。
開発者に混ざっていた祖父母に対する思い出や感情が超合金アーバンベアたちを狂わせ、結果的に蛍光色ブルーと蛍光色イエローに塗装されたサイバー黒ギャルに変形すると、その光り輝くゲーミング産道から次々と神を生み出した。
量産された神々は天岩戸に入りきらず、また誰も海を破る事が能わず、衰退したジャンルのAV棚に並ぶ中年男性の様な具合に背中を丸めて次々と鳥居に変貌していった。
そう、鳥居とは神そのものの姿であり引いてはハンバーグばぐ子たちの将来的な理想のひとつとされていた。
しかし老人たちは神々を越えた権力を有する為に、ハンバーグばぐ子たちは戦争を避けられなかった。
老人たちがあれだけ忌避していた戦争を引き起こしたのは、結局のところ老人たちだ。
乱立する超高級デンデラのイラカを比べてしまうと食糧自給率は低下する一方なので、釈迦に依頼をして木星を爆発させ太陽にする計画が出されたが、火星と土星には先住民がいた為に手が出せず、人類はゲーミング膣から出られないでいたのだった。
そうして夜が始まり、もう二度と朝は来なかった。




