第24話 「帰還、そして新たな同盟」
帝都からの帰還は、思ったより静かなものだった。
荒れていた世界魔力網はアレンの干渉によって落ち着き、
空気そのものが澄んだように感じる。
アレン
(皇帝……結局、姿は見せなかったけど……
あれは“敗北”じゃなくて“保留”だ。
いつかまた向き合うことになるだろうな……)
深く息を吐き、魔力感覚を切る。
そして――
城門前に集まっていた味方の兵と師団長が、アレンを見つけるなり駆け寄った。
師団長
「……アレン!!」
アレン
「ただいま戻りました。なんとか、終わりました」
師団長は腕を組んだまま、ぐっと目を細める。
師団長
「“なんとか”で済むか。帝国の皇帝と対面し、
あの魔力柱を止めたんだぞ。よく……生きて戻ったな」
アレン
「僕は……ただ、やるべきことをしただけですよ」
師団長
「……まったく。お前は規格外すぎて、怒る気にもならん」
照れ隠しのように頭をかく師団長を見て、アレンも少し笑った。
⸻
◆ ロスアの正式な服属
その場に駆け寄ってきたのは、ロスア王国の第二王女。
第二王女
「アレン殿! この度のご尽力、国としても感謝致します!」
彼女は跪き、胸に手を当てて宣言した。
第二王女
「ロスア王国は……本日をもって、あなたの“庇護下”に入ることを決めました」
アレン
「いやいや、僕は国を持つ気なんて――」
第二王女
「違います。
“従属”ではなく“保護と協力”。
あなたの意思を尊重した、ロスア独自の新しい形です」
アレン
「……なるほど、対等の同盟、みたいな感じか」
第二王女
「はい! 世界の魔力網に干渉できるあなたの存在は、
もう国家規模の力と同じです。
だからこそ……私たちはあなたを選びました」
アレン
(……正直、僕は誰の上にも立ちたくないんだけど)
それでも、彼らの必死な表情を前に、アレンは静かに頷いた。
アレン
「分かった。必要なときは協力するよ」
第二王女の顔がぱっと明るくなる。
⸻
◆ ジャパからの正式使者
次に姿を現したのは、白い外套を纏った男。
背に“八咫烏”の紋。
ジャパ使者
「アレン殿。ジャパ国より正式な通達を持ってきました」
アレン
「ジャパって……あの技術と魔装の国?」
使者
「はい。あなたの“封印操作”と“干渉式魔法の再定義”を聞き、
我が国はアレン殿との正式な国家同盟を希望しております」
アレン
「僕、国じゃないんだけど……?」
使者
「失礼ながら、あなたの一点突破の力は、
一国以上の抑止力になっています。
“個人”としてではなく、“管理者候補”としての同盟です」
アレン
「あぁ……そっちか」
使者は深々と頭を下げる。
ジャパ使者
「あなたは世界秩序に関わる存在。
ゆえに――我が国はあなたと肩を並べると決めたのです」
アレン
「……分かった。こちらも協力する。対等な関係で」
使者
「感謝します!」
⸻
◆ 魔国からの黒翼の使者
空が揺れ、黒い羽が散った。
魔国の使者
「アレン。魔王陛下より言伝だ」
アレン
「魔国まで……?」
使者
「貴様が“皇帝の魔力柱を消した”と聞き、
世界均衡への影響が避けられぬと判断した。
ゆえに魔国は、貴様に“友好”を結ぶ」
アレン
「それって……つまり同盟?」
使者
「魔国の言い方では“友誼の契り”だ。
侵略しない、干渉しない、
ただし敵が出れば互いに力を貸す。簡単な話だ」
アレン
「……それなら、いいよ」
使者
「魔王陛下がお前を気に入った理由……分かる気がする」
黒い羽を一枚落とし、使者は空へ消えた。
⸻
◆ 王からの提案 ―― 王位継承
そして、最後に城の奥でアレンを待っていたのは、自国の王だった。
王
「アレン……よく戻った。
お前はこの国を、いや“世界”を救ったと言っていい」
アレン
「そんな大げさな……」
王は椅子から立ち上がり、まっすぐアレンを見つめる。
王
「そこでだ。
私は、“王位の継承”をお前に託したい」
アレン
「……は?」
王
「お前ほどの力、そして心を持つ者は他にいない。
国を導く器……それがお前だ」
アレン
「いやいやいやいや! 無理ですよ!
僕は……誰かの上に立つために力を使っているわけじゃない」
王
「……そう言うと思っていた」
王は微笑した。
王
「だが、一度は言っておきたかった。
お前はそれほどの価値を持つ……それだけは分かっておけ」
アレン
「……ありがとうございます。でも、辞退します。」
王
「よかろう。
ならばこれまで通り“自由”でいてくれ。
ただし困ったときは……この国を頼れ」
アレン
「はい」
⸻
◆ 師団長の最後の一言
城を出ようとしたとき、師団長がぽつりと呟いた。
師団長
「アレン……本当に、無事でよかった。
お前は、まだまだ強くなる。
そして――世界を変える側の人間だ」
アレン
「……僕は、僕のしたいようにやるだけですよ」
師団長
「それが一番恐ろしくて、一番頼もしいんだよ」
アレンはただ、静かに微笑んだ。




