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天災扱いの天才、封印される  作者: モッサン
ロスアの影

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第16話 “黒魔力炉”の異常

帝都の中心部は、まるで巨大な生き物の体内だった。


建物のひとつひとつが黒い魔力を帯び、

街路の石畳さえ、かすかに脈動している。


アレンは歩を進めながら、周囲の“魔力波形”をずっと観測していた。


(やっぱり……この魔力、普通じゃない)


ロスア帝国の魔導技術は世界最先端だが、

それにしても街全体を“黒魔力網”で覆う理由が分からない。


(魔力炉の出力を全域に供給してる……?

 いや、これは……“吸ってる”波形だ)


その瞬間、アレンの封印陣が

ビリッ、と小さく反応した。


「……わ」


思わず胸を押さえる。


封印が――勝手に震えている。


(この反応……“外側の何か”が僕の魔力に、同調しようとしてる?

 封印が自動防御してる……?)


どう考えても異常だった。


アレンは歩みを止め、目を細める。


「黒魔力炉……ただの大出力炉じゃないな」


魔力に“歪み”が生じた。


次の瞬間――


キィィィィィィン……!ん


耳鳴りのような、高周波の魔力音が帝都を満たした。


(……え?)


アレンは無意識に空を仰ぐ。


帝都を覆う黒魔力網が――

ゆっくりと、波打ち始めていた。


明らかに、アレンに反応している。


「やっぱり……“僕を検知”した?」


その時だった。


カツン。


背後から、靴の音。


「――あなたね。帝都の結界に“穴”を開けたの」


アレンが振り返る。


そこに立っていたのは――


黒い軍服をまとい、

帝国紋章つきの魔導端末を持った少女だった。


年齢はアレンと同じくらい。

白銀の髪に、深紅の瞳。


その瞳に、敵意よりも“興味”が宿っている。


「ロスア帝国魔導院所属――

 クレア=レヴィントス。

 帝都地下“主魔力炉”の監視官よ」


アレン

「……同い年くらい?」


クレア

「あら、敬語じゃないのね?

 まあいいわ。あなた――」


少女は指先で、アレンの胸元の封印陣を指し示した。


「その“封印”……なに?」


アレンは一拍置いて、素直に答えた。


「魔力が強すぎるから。

 自分で調整してる」


クレアの目が、ほんのわずか震えた。


「……自分で、封印を……調整?」


アレン

「うん。便利だよ?」


クレア

「便利……?」


帝国最高の魔導士たちでさえ触れられない封印術式を

“便利”と言い切る少年。


クレアは一度息を吐き、端末を操作した。


ピッ。


アレンの体から発せられる魔力の波形が、空中に投影される。


「……ありえない。

 あなた、魔力炉級の出力じゃない」


アレンは小さく首を傾げる。


「で、何の用?」


クレアは数秒黙り――

彼を見る目を変えた。


探る目でも敵意でもなく。


“同類を見つけた者”の目だ。


「あなたは――

 **“黒魔力炉の共鳴対象”**よ」


アレン

「共鳴対象……?」


クレア

「帝都全域の魔力網が、あなたの魔力波形を“理想値”と判定した。

 本来は、千体の魔導兵士を束ねる“制御核”にしか起こらない現象よ」


アレン

「……へえ。面白いね」


クレア

「面白い、じゃない!」


空気がビリッと震えた。


クレアの瞳は真剣だ。


「あなたが帝都に入った瞬間、

 魔力炉そのものが“あなたを主制御者として認識”したの。

 つまり――」


ほんの一瞬、クレアの声が震えた。


「この帝国の魔導兵器……すべてがあなたに従う可能性がある」


アレン

「……あ、だから封印が反応したのか」


クレア

「封印が反応……?

 待って、封印が魔力炉の波形と“拒絶反応”を起こしてるの……?」


アレンは軽く胸に手をあてる。


封印が、まるで“嫌悪”するようにビリビリと震えていた。


(これ……無理に解いたら、暴走するな)


クレアは近づいてきて、囁くように言った。


「あなた……

 本当に何者なの?」


アレン

「ただの――」


一歩、クレアの横を抜ける。


封印が低く唸っている。


アレンは、中央大塔の方向を見据えた。


「――魔術研究がしたい人」


クレアは言葉を失う。


アレンは歩きながら呟いた。


「帝都の魔力炉……

 中身、見せてもらうね」


クレア

「っ……待って!

 そこに行けば――」


その瞬間。


街全域の黒魔力網が、

アレンを中心に“収束”するように動いた。


帝都そのものが、アレンを“取り込もう”としている。


クレアは絶叫した。


「――あなたを“主核”として登録する気よ!!

 止まって!!!」


アレンは振り返らず、ただ微笑んだ。


「行ってみないと分からないから」


雷導腕輪が青く光る。


封印陣がギリギリと軋む。


そして――


アレンの身体が、黒い魔力の奔流の中へ消えた。


帝都中央魔力炉へ。


世界最大の“禁忌”の中心へ。


その全てを理解するために。


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