表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天災扱いの天才、封印される  作者: モッサン
ロスアの影

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/24

第15話 帝都・黒い魔力炉

ロスア帝都の外縁。

黒い霧がかかる深夜の森に、突然――


バチィッ!


青白い雷光が落ち、アレンが姿を現した。


静かだ。

しかし、空気が重い。


アレンは息を一つ吐き、胸元に軽く手を当てた。


(……やっぱり“封印”がきついな)


胸の奥で、魔力が渦を巻きながら暴れようとしている。

その全てを押さえつけるように、

封印陣が淡く光っていた。


ふと、さっきのヴァルデール師団長の言葉が脳裏に蘇る。


ーーー


出発前。


ヴァルデールは、アレンの胸元をじっと見つめて言った。


「お前さ……。

 “封印”、ちゃんと調整してるんだろうな?」


アレンは軽く頷いた。


「うん。

 魔法ごとに、出力が変わるからね。

 封印を強めたり弱めたり、微調整してる」


ヴァルデールは額を押さえて渋い顔をした。


「普通、“封印”は勝手に触るもんじゃねぇんだよ……。

 っていうか触れねぇんだよ、普通は」


アレン

「僕は“封印式”の構造が大好きなんだ。

 魔力の流れを操る最高の技術だよ。

 触りたいに決まってるよ?」


ヴァルデール

「やめてくれ……心臓に悪い……」


ーその後、彼は小声で続けた。


「……だが。

 封印を調整できるやつは、お前しかいねぇ。

 だからこそ……

 暴走だけは、絶対するな」


アレンは笑った。


「大丈夫。

 暴走したら、その時はヴァルデールに怒られるでしょ?」


ヴァルデール

「怒るだけで止まらねぇだろ、絶対!」


ーーー


アレンは森の中で、胸の封印陣にそっと触れた。


淡い青光が、“呼吸するように”律動する。


「……よし。

 帝都の魔力炉は“雷属性強化領域”だから……

 封印は“第三段階のまま”でいいや」


淡々と“自分の封印を調整する十二歳”。

常識が壊れている。


雷導腕輪がカチリと反応し、魔力が安定する。


(腕輪と封印の相性は完璧。

 これなら――帝都の結界も突破できる)


アレンは身体を屈め、帝都方面へ視線を向けた。


夜空の向こう。

ロスア帝国の心臓部――帝都ロストリア。


空気そのものが、黒い魔力で満ちている。


「……行こう」


アレンは地面を蹴った。


音を残さず、影のように走り出す。



●帝都外周・第一結界


帝都を覆う外周壁の上には、

三重の魔導結界が張られていた。


肉眼では見えないが――

アレンには“魔力の波形”がハッキリ見える。


(共振してる……

 これ、魔力炉の“鼓動”そのままじゃない?)


アレンは雷導腕輪に触れた。


次の瞬間。


スッ。


アレンの“封印”が、わずかに解かれた。


胸元から、ほとんど無音の雷が漏れ出す。


その雷が結界の波形へ触れ――

波長が一致した。


「はい、開いた」


常識では絶対に破れない帝国結界が、

音もなく“穴”を作った。


アレンはそこを通り抜ける。


(簡単だな……封印“第二段階”でも良かったかも)


子供の独り言とは思えない内容である。



●帝都潜入成功


アレンが高台に出ると、帝都の全景が広がった。


黒い魔力の煙が、街全体を覆うように漂っている。


(この魔力……

 完全に“国家レベル”の兵器開発のやつだ)


アレンは興奮と警戒が入り混じった目で街を見下ろす。


(魔力炉は……中央大塔。

 波形の発信源が完全に一致)


雷導腕輪が、ひときわ強く光る。


アレンは唇を引き締めた。


「研究開始――っと」


静かに、しかし確実に。


世界最強の魔術師は、

世界最高峰の魔導兵器の中心へ歩き出した。


封印を調整しながら。


その内側に潜む、“世界の理”を暴くために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ