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天災扱いの天才、封印される  作者: モッサン
ロスアの影

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第13話 ロスア帝都潜入

アレンが淡々と作戦を口にしてから数分後。


王都ラグナの作戦室は、凍りついたように静まり返っていた。


誰もが理解していた。

――ロスア帝国の中央魔力炉を“落とす”という行為は、

 一瞬で帝国全軍を無力化する、国家破壊級の作戦だと。


しかし同時に、

――それを実行できるのは世界でひとりだけ。

という事実も。


ヴァルデール師団長が重い口を開く。


「……アレン。帝都はロスアの軍事中枢だ。

 警備は厳重、魔力探知網も層が厚い。

 いくらお前でも、無傷で行ける保障は――」


アレンは小首を傾げる。


「無傷じゃなくてもいいよ?

 研究って、ちょっとはリスク必要だから」


「研究かよ……!」


ヴァルデールが心底呆れた声を出す。


アレンは続ける。


「ただ、僕だけじゃ足りないところもある。

 “情報面”は特にね」


「情報……?」


その時、扉がノックされた。


入ってきたのは、異様に派手な衣装をまとい、

口元に作り笑いを貼りつけた男だった。


「いやぁ〜ラグナの皆さん、どうもどうも!

 ジャパ商国よりご挨拶に参りましたぁ!」


ヴァルデール

「……ジャパ、だと?」


重臣A

「なぜこんな時に……!」


ジャパ商国――

“商売のためなら国どころか世界すら売る男たち”と噂される国。


その使者は、にやにやとアレンを見る。


「アレン君、我が国はぁ……

 君の価値を“理解”しておりますよ」


「理解……?」


「ロスアの中央魔力炉の構造。

 我々、ジャパは“内部資料を少々”持っておりましてね……」


王と重臣たちは凍りついた。


アレンは目を輝かせる。


「内部資料……!

 じゃあ、帝都の魔力炉はどの形式?

 分散型? 中央集中型?

 基礎理論は旧世代魔導式?」


商国使者は満面の笑みを浮かべる。


「全部お教えしますよ。

 ただし――交換条件があります」


王リドール

「……出たな、商人の本性が」


「いえいえ、そんな。

 我々はただ、“未来への投資”をしたいだけです。

 君の力をね。

 ――世界を動かす力を」


アレンは首を傾げる。


「僕に何を求めるの?」


「簡単ですよ。

 ジャパの“魔導産業”に、少しだけ協力していただく。

 あなたの知識を、商品価値に変えるお手伝いを……」


ヴァルデールが目を剥いた。


「てめぇ! アレンを金儲けに使う気か!」


だがアレンは一歩前に出た。


「いいよ」


「ア、アレン!?」


アレンは落ち着いた声で続けた。


「協力するってほどじゃない。

 ただ……情報の対価を払うだけでしょ?

 不当じゃない」


商国使者

「話の早い少年でありがたい!」


アレン

「その代わり“全情報”出してね。

 中央魔力炉の心核、冷却路、補助炉の配置。

 あと――帝都の魔力探知網の周波数」


商国使者

「もちろんですとも」


アレンは微笑む。


「ありがとう。

 じゃあこれで、ロスア帝都への潜入ルートが完成した」


王も、師団長も、重臣たちも言葉を失っていた。


アレン唯一人が、

“国家の中枢を攻略する”という前代未聞の作戦を

まるで昼の散歩のように組み立てている。


その瞬間――

重々しい扉が再び開かれた。


入ってきたのは、黒いマントをまとった人物。


その額には微かな紋章。

魔国の紋章。


魔族の王直属の使者だった。


「……ラグナ王国に通達する。

 魔国は――アレンを英雄として認定する。

 そして支援を申し出る」


全員「!!」


使者はアレンを見据える。


「我が国は見た。

 ロスアの一万を“雷で消し飛ばした”あの瞬間を。

 君は……魔族が千年求め続けた“真の魔術師”だ」


アレンはぽかんとした顔で言う。


「なんで?」


魔国使者

「理由はひとつ――

 “君の力は、世界の均衡を変えられる”」


会議室の空気が膨れ上がる。


王は震える声で言った。


「ジャパに魔国……アレン、お前は……

 本当に世界を動かしているのか……?」


アレンは静かに答える。


「僕はただ、魔術を研究したいだけだよ」


だが、その言葉を否定するように――

外の空気が震えた。


遠くの空に、黒煙の柱が立ち昇る。


重臣A

「な、何事だ!?」


偵察兵が駆け込んできた。


「報告!

 ロスア帝国“先遣隊”が国境線に出現!

 帝都からの増援も……“動いています!!”」


王リドール

「第一波が来たか……!」


アレンは窓の外を見つめた。


「――時間切れだね」


杖も持たず、ただ外套を羽織る。


「じゃ、帝都行ってくる」


ヴァルデール

「アレン!! 本気でひとりで行く気か!!」


アレンは振り返らずに言った。


「ひとりじゃないよ。

 ジャパのデータもある。

 魔国の支援もある。

 ドワルゴも……もう動いてる」


「ドワルゴ……?」


アレンは微笑む。


「さっき、地下から聞こえてたよ。

 “鍛冶音”。

 彼らは僕が使う装備を作ってる」


本気で世界が動き始めている。


アレンという“ひとりの少年”を中心に。


そして彼は――

ロスア帝都を目指して歩き出す。


世界最強の軍事国家の心臓部を、たったひとりで破壊するために。


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