第10話 表彰式/各国の反応編
赤炎が静かに消え、雷光も沈んだアリーナ。
歓声が割れるように響き渡る。
「勝った……!」
「魔国に勝ったぞ!!」
「小国の天才じゃねぇ……怪物だ!!」
バロルは膝をつきながらも、笑みを浮かべた。
「見事だ……アレン=ラグナ。お前は、種族の壁を越えている……」
アレンは淡々と答える。
「あなたの魔力……本当に“美しかった”よ」
だが、アレンの心は歓喜や誇りに染まっているわけではない。
戦いを通して、彼の中には新たな理解が生まれていた。
(……こうすれば、魔族の魔圧も制御できる)
(攻撃と防御の間合い、魔力の流れ、渦の中心……
戦うことで、すべてが“見えた”)
戦いの余韻の中で、アレンは静かに拳を握る。
“強さ”を実感するのではなく、あくまで研究結果として理解できたのだ。
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●各国の思惑
表彰式が終わり、観客の熱気が収まる頃。
アリーナ外では、五大国の代表者たちがひそやかに顔を合わせていた。
魔国代表
「人間が……災害級の戦力を持つとはな」
ジャパ代表
「小国の少年の力、見逃せない。奪う必要がある」
ドワルゴ代表
「戦術理解度も異常だ……研究者としての才覚がある」
ロスア代表
「ラグナ国ごと潰せば、彼も取り込める……いや、消すしかないかもしれん」
五大国の目が、静かにラグナ王国に向けられる。
勝者アレンを自国のものにするか――
その力を恐れ、利用するか――
あるいは排除するか――
世界が、次の局面に向けて動き始めていた。
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●ラグナ王国の動揺
王宮。大臣たちが急報を受ける。
「……五大国が、アレンを奪いにくる、ですと?」
「小国ごと潰す計画もあると……」
王は震えながらも決意を固める。
「我が国の未来は、この少年にかかっている。
守らねば――国も、民も、彼も!」
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●アレンの視点
表彰式を終え、アレンは雷の残光を背に立ち、観客席を見渡す。
歓声の中に、冷たい視線が潜んでいるのを感じる。
(……やっぱり世界は、静かじゃない)
(でも、ここまでの戦いで、少しはデータが取れた)
(魔族の魔圧も、攻撃の強度も、流れも……次に戦うための材料だ)
小国の少年は、勝利を喜ぶでも、強さを誇るでもなく、戦いを通して得られた研究結果として次を見据えていた。
世界が注目する中、守るべきものを守るため――
アレンの戦いは、まだ始まったばかりだった。




