1-1話 交差する運命
【ライデン神牙大陸】
2000年前、世界最強と名高い多くの戦士を輩出。
数多ある国々、それぞれの国が世界を征服する力を持つと言われていた【神に愛された雄牙たちの大陸】
かつて世界の隅々にまでその名を知らしめていたその大国たちは、現代では滅び。
勇敢な戦士たちもまた時間と共に消え去っていた。
今、この【オールドライデン神牙大陸】に残っているのは年老いた農夫と。
戦い方を知らない若者たちだけだった。
遠い日の栄光の影を微かに感じる程度の貧しい国々しか今はもう残っていないのだ…。
【オールドライデン神牙大陸】【リチャード領】
どこにでもいる村民だった現当主リチャードは、世界的にも有名な大天才【博士ローゼンシュミット】に気に入られた。
その後、リチャードはローゼンシュミットの学園に入学。
経済学や魔法考学を学び、一代にしてこの【リチャード領】を治める伯爵となったのだった。
今日、このリチャード領に足を踏み入れようとする一人の冒険者がいた。
その者は今年25歳になる男で名をジョージという。
優しい家族と平和な故郷で農作業や家の手伝いをしていた、ただの村人。
突出した戦闘能力などは無く、その他才能や経験もないまさに一般人と言える存在。
しかし、この時は誰も。そして彼自身も思っていなかったことだろう。
この普通で普遍的な青年がこの街で大事件を起こすことになろうとは。
1-1話 交差する運命
「ここがリチャード領・・・」
故郷の村を離れて4日目の昼、男はリチャード領に到着した。
リチャード領はジョージの故郷の何倍も大きかった。
町に住む人々も、故郷の何十倍にもたくさん暮しているようで、ジョージはその賑やかさに目を奪われた。
「取り合えず…ここまで手に入れた道具を売らないとかな」
カバンにはモンスターからドロップしたアイテムが詰まっていた。
旅をした4日で手に入れたドロップ品はかなりの数になっており、大きなカバンが悲鳴をあげていた。
ちなみに、カバンとは反対にジョージの財布はスカスカだ。
このままでは数日宿に泊まっただけで貨幣が尽きてしまうだろう。
ということで男は街の道具屋を探すことにした。
「ここが、そうだろうか」
程なくして、それらしき建物を見つけた。
看板には緑色のポーションの絵が描かれていて。その後ろにはローマ字でTEMUと彫られている大きな木製の看板も飾られていた。
男はドアを引いた。
美しい女性
「いらっしゃ~いませ~。あら、あなた見ない顔ね」
カウンターには美しい女性が座っていた。
絵本に出てくるような黄金の髪、美しい緑色の瞳、整った顔立ちは男を緊張させるには十分だった。
ジョージ
「あ、いえ、はい!旅先で手に入れた道具を買っていただけないかと思いまして…」
美しい女性
「ふ~ん?テムさ~ん!買取のお客さんが来たわよ~!ワタクシ分からないからお願いしても~?」
女性はカウンターの奥に大声でそう叫んだ。
カウンターからは一人の男の声が聞こえてきた。
優しそうな男の声
「あぁ~分かったよ、リンシアちゃん。それとすまないがそこに置いてある木箱を2階まで運んどいてくれないか~?」
リンシアと呼ばれた女性
「ええ~~~!?仕方ありませんわね~」
リンシアと呼ばれた女性はそう言って大きな荷物を抱えあげそのまま2階へと消えていった。
その後、店の奥から声の通り優しそうでがっしりした体格のおじさんが出てきた。
まさか先ほどの美少女の夫だったりするのだろうか。
テム
「やぁテムのアイテムバーゲナリーへようこそ!買取希望だって?どれ、品物を見せてくれるかな」
ジョージ
「はっ、はい」
まだ緊張が解けない男は、店のカウンターに旅の途中で獲得したドロップアイテムをわたわたと並べた。
この店の店主テムは、それを眺めながら
テム
「ほう、なかなかいいアイテムが多いじゃないか。ここらでこういうアイテムを落とすのは大半がラッキーキメラだと思うが、お前さんもしかしてあの小さな村から出てきたのかい?」
ジョージ
「そ、そうですけど。どうして分かるんです?」
テム
「ははは、長いことここで商いをしているからねぇ。どこにどの魔物がいてどういうアイテムを落とすのか…。自然と分かるようになってるのさ。それにしても、はは。懐かしいなぁ」
テムさんはそう言いながらドロップアイテムを丁寧に鑑定してくれた。
アイテム全てに目を通した後、慣れた手つきですらすら紙に文字を綴った。
テムさんから紙を受け取るとそこには各アイテムの値段、状態、値段の理由が丁寧に書かれていた。
男は銀貨を8枚。銅貨を9枚も手に入れることが出来た。
ちなみにテムは少しだけサービスで銅貨を増やしてくれていた。
男はテムさん感謝を伝えたあと、テムのアイテムバーゲナリーを後にした。
最初にカウンターにいた女の子は、その後2階から降りてくることはなかった。
男は宿屋で銅貨8枚を支払って、その日は久しぶりの屋根の下のベッドの上で眠りについたのだった。




