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眠い夜

もともと短編で書こうとしていた私小説なのですが、

なんか長くなりそうだったので連載作品にした所存であります。

私小説なのでモデルはいますが、設定はかなり違います。特に主人公。

私はこんなに論理的に日々を過ごしていません。ぼーっと生きてます。

それではどうぞ。

『あなたは、生きているのでしょうか。それとも、そうではないのでしょうか』


 そんな質問をした。すぐに彼女から、いつも通りの口調で返事が帰ってくる。


『そうですね~(;´∀`)人間として現実には存在しないんですけどね~』


 とても可愛かった。こんなちっぽけなファン1人にも律儀に返信をしてくれる、僕はそういうところにも惹かれていたのだろう。歌みたを聞いただけで推し始めた頃とは違い、今はしっかりと好きな理由を説明できる。好きに理由なんてない、なんて虚言でしかない。


 フォロワーの数だけで知名度は判断できないし、そもそもどう頑張っても世界水準には届きようがない、そんなSNSにヨゾラさんはいた。


 闇雲ヨゾラ。有名といえば有名だが、活動しているSNS自体がそこまで有名なものではないので、ヨゾラさんを知っている人は、数にするとかなり少ない。ガチファンなら指で数えられるほどの人数だったが、おかげで僕とヨゾラさんとの距離はいい感じに近かった。


 他の推しとはまともに会話ができないせいで、距離を感じてしまうことも多いが、ヨゾラさんとはそんなことなどない。推しの良いところだけを感じることができるから、最初の推しがヨゾラさんで本当に良かったと思う。


 しれっと推しを複数人作っているが、長年の片思いを拗らせているせいなのか、二人目の推しを作るときは、流石に抵抗があった。片思い中に推しを作る、ということ自体が自分の倫理観的に問題だったのだが、今となっては知ったこっちゃない。お陰で健全なオタクと化した自分がいる。もちろん、片思いはその後すぐに冷めた。誰も損はしていない。


 僕自身、学校でのカーストは決して低くない。オタクや陰キャと呼ばれるランクには所属せず、ごくごく一般的な中級階層に僕はいた。実際はオタクであり陰キャであるのだが、人との付き合い方は努力次第で多少どうにかなるから、なんとか下級階層に落ちないようにはできていた。


『でも、ヨゾラさんは僕達の中で生きてますよ』


 あの質問は、この返信をするための段取りでしかなかった。ものすごくベタな印象を抱かせるこのセリフに、僕は憧れを抱いていたからだ。本人にはこんなこと言えやしないが、ヨゾラさんならきっと許してくれる。


 彼女は自分のSNS上での立場をどう捉えているのだろうか。もし彼女を既存の枠にはめるのなら、なんと呼ぶのが適切なのか。僕にとっては「推し」でいいのだが、他人に「彼女は何をやっているのか」と聞かれると困る。


 インフルエンサーと呼べるほどの影響力は、はっきり言って彼女には無い。僕にとっての影響力は誰にも負けないのだが、このSNSを軸として活動している時点で、インフルエンサーではないことは言えてしまう。そう考えると本当に「第三者」として説明するときの呼び方が無い。


 だが幸い、学校では普通の人たちの会話に相槌を打つだけでカーストを保てているので、こちら側に質問が飛んでくることはない。だが、僕の中の優先順位は、友達よりもヨゾラさんが先だ。いつでも友情を切る準備はできている。


『え〜!そうですか!ありがとうございます〜!(●´ω`●)』


 僕に送られてきた返信が本心のものかどうか、なんてどうでもよかった。隠れオタクとして密かに、誰よりも忠実に推し活に励んで満たされていれば、僕に存在意義は生まれる。ヨゾラさんには悪いが、僕はヨゾラさんに対してできることなど何も無い。


 価値観の古い人間や多くの同級生には理解されないような生きがいも、いつしか染み付いたもの。両親にバレないように振る舞っているつもりはない。友人たちにバレるとか、そういうことでない限り僕にデメリットは生まれないからだ。全ては画面の中で起きていることだから、その記録と記憶はいつでも消せる。


 ただ、僕が記録や記憶を消していないのは、やっぱりそれが最終手段だからだ。幸せの感情を生む事実はいくらあってもいいから、ずっと生きがいとして定着している。どんなにヨゾラさんに優しくされても癒やされても、結局は自分に対する劣等感で押しつぶされてしまうのがオチなので、傍から見れば僕は「推し」に何もしてもらっていないように見えてしまう。しかし実際は、僕が何もできていないだけで、例えばその配られた不特定多数への愛を、真っ直ぐに受け取ることができずに、僕は自滅するように負の感情を生んでいる、というだけなのだ。


 殺風景な部屋には、机の上に乗ったノートパソコンが一台。その奇妙な電子機器が、僕の世界を無限にまで広げてくれている。小さなノートパソコンだが、ちっぽけな人間を動かすだけのエネルギーはちゃんとと保持している。誘惑や娯楽を限界まで詰め込めば、それ一つで人間は大きく変わるようにできているのだ。目に悪いと言われるブルーライトも、見方を変えれば目の保養になっているのだ。


『これからも応援するので、頑張ってくださいね』


 どうして文章の最後に、感嘆符を一つつけるくらいのことができないのだろうか。これじゃあものすごく生真面目で硬い人だと思われてしまう。まぁもう遅いのだが、そんな感じの人だと受け取ってもらったほうが、関係性はより長く保てるのかもしれない。


『ありがとうございます~!これからもがんばります!(#^^#)』


 顔文字を多用できる彼女が羨ましい。使う顔文字のラインナップは大体決まっているから、たまに見たことのないやつが出てくると嬉しい。さっきまでの会話で出てきた3つの顔文字は、彼女のラインナップに入っている。


 僕はノートパソコンを閉じた。目をどれだけ癒やしたとしても、殺風景な部屋は殺風景なままだ。趣味を楽しむどころか、趣味を作る余裕すらない。そりゃ、部屋が最大限簡素になるわけだ。いくら無限の世界を目にしたって、「現実」という名の有限の世界に引き戻されるのがオチだ。


 「いつもやっている感」を醸し出している問題集は、一切手を付けていないので新品同様。教育者と教育者の間に生まれれば、(さとる)という名前と高品質な地頭が手に入る。そこに小さい頃からの学習が重なれば、授業を聞いているだけで90点、という漫画の世界みたいな成績を本当に残すことができる。結果を出しているから両親は何も言ってこない。ただ、褒められないのはちょっと寂しい。


 ベッドに仰向けに倒れ込むと、ふとヨゾラさんが有名になったら、ということを考えた。もちろん嬉しいことだが、どうしても独占欲が働く。他人からは理解されないだろうし、気持ち悪がられるかもしれないが、他愛もない話でコミュニケーションを取り合える、そんな関係を続けたい。やっぱりヨゾラさんには悪いが、有名になんてならないでほしい。


『ヨゾラさんは、有名になりたいですか?』


 送信してから気づいた。あまりに直球すぎる質問だと。今更取り消しはできないので、せめて返信を見ないように、今日はもう寝ることにしよう。彼女からの素直な返信を聞くのは、明日の朝でいい。それを、明日のエネルギーにすればいい。


 返信は、思っている以上に早く返ってくるものである。スマホのバイブ音を聞いて、無意識にスマホに手を伸ばす。その音は、幻聴ではなかった。


『できることなら、有名になりたいですね〜(。>﹏<。)』


 顔文字は、普段使っていないものだった。やっぱり、嬉しかった。

この私小説のモデルの方へ

読んでいただきありがとうございます。

私はこれから、なろうにて精力的に活動してまいります。

また、いずれYouTubeチャンネルも解説し、動画投稿に取り組んでまいります。

あなたにもらった元気や、言葉では表せないものを、今度は私が、

これからの活動でお返ししたいと思っております。

ですので、ぜひ、私の活動を見ていてください。お願いします。

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― 新着の感想 ―
リアルな情景が目の前に浮かぶような、とても素敵な表現で凄く感動しました!
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