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落語ー防具屋

作者: さと

新作落語台本募集に応募して落選した台本を、少しだけした改良したものです。

先輩:君が今日から入る、国家直属の新人防具職人か。

新人:はい!今日からお世話になります!政府から派遣されてきました!よろしくお願いいたします!

先輩:君は国立大学で博士課程まで進み防具作りを学んだそうだが、防具屋というのは座学だけでなんとかなる世界ではない。それはわかっているな。

新人:心得ております!これから先輩の背中を見て学び、必死に先輩のすねに食らいついていきます!

先輩:足手まといになっているじゃないか。だがいい心意気だ。そこでだ!いきなりだが君に防具を一個作ってもらおうと思う!もし良質な防具を作れた暁には、初日から君を実務の場に上げてやらんこともない。大学院で培ったノウハウを見せてもらおうじゃないか。

新人:ありがとうございます!先輩を驚かせて、ぎゃふん、いや、「ああ~~、ぼくちんのつよつよ自我が壊れちゃ~う!」といわせますよ!

先輩:驚いても言わないぞ。まあとにかくやってみろ。

新人:はい!

(防具を作る仕草)

新人:できました!

先輩:おお、どれどれ。(防具を手に取って見る仕草)

新人:純度95%のプラチナメイルです!硬さを最大まで高めるため低温状態で長時間熱し、冷やす際は特殊な技術で氷点下を超えた水温の水で一瞬で冷やしました!

先輩:おい、新人?

新人:残りの5%は表面に施したダイヤのメッキです!これのおかげで、大魔王のレーザービームも凌ぐほどの強度を実現しています!

先輩:おい、新人!ちょっと待て!

新人:極めつけはこの魔法陣!国家お雇いの大賢者が60年かけて編み出した最強の防御呪文!これで敵なし....

先輩:あのな!....ここ始まりの村なんだよ。

新人:....はい?

先輩:いやだから!この防具屋、勇者が一番最初に訪れる「始まりの村」にあるんだよ。この防具屋は、勇者が一番最初に訪れる防具屋なの!お前無一文の勇者相手にダイヤメッキのプラチナメイルが売れる訳ないだろ!しかも訳わからない呪文まで刻印して。あれでどれだけ値上がりするかってんだ。

新人:じゃあ先輩、この防具屋ではどんな防具を売ってるんですか。

先輩:わかったいま見せてやる。(防具を取り出す仕草)ほれ。

新人:なんですかこれ。

先輩:牛の革を裁断したものだ。

新人:...ほかに工程は?

先輩:ない。

新人:いやいや、そんな訳ないでしょ。熱したり冷やしたり、ノリで布同士を貼り合わせたり。防御魔法も刻印するはずでしょ!

先輩:そんなことしたら値段が上がるんだよ!いいか?よく考えてみろ。もし勇者が始まりの村で強い防具を買ったらどうなってしまうか。その防具で満足しちゃうんだよ!それ以降に訪れる村で防具を買ってもらえなくなるんだ。そうすると各地の職人から苦情が殺到しちゃうんだよ。俺たちはな、世界中のどの防具屋よりも質の悪い防具を売らなきゃいけないんだ。

新人:いやでも、こんなの防具なんて言いませんよ!俺たちは防具屋です!スライムの体当たり、恐竜の炎から勇者を守るのが仕事でしょ!

先輩:俺たちが守るのは勇者じゃない!世界中の職人の安定収入だ!

新人:そんな馬鹿な!

先輩:とにかく、うちでは限りなく質の悪い防具を限りなく安価で売ることをモットーにしている。君も、テクノロジーなんか使わず、いかに素材の味を活かすかのみ考えるんだ。

新人:....じゃあなんで大学院卒を雇ったんですか。こんなの高卒でもできるでしょ。

先輩:高卒どころじゃない。この牛革は、この前遊びに来た6歳の甥っ子が作ったものだ。ただ、君の派遣は政府が決めたことだ。君の志がなんであろうと、ここでは私にしたがってもらおう。

(ガチャッ)

役人:すいませーん

先輩:誰だ君は

役人:初めまして、今回職人を派遣させていただきました、防具庁の職員でございます。

先輩:ああ、役人さんか。なら一つ聞きたいんだが、なぜこいつをうちに派遣したんだい。始まりの村の防具屋なんか一人で十分やりくりできてるのに。

役人:実はですね、この村の隣に巨大な城が建てられまして。

先輩:ああ、あのでかい建物か。村の中からでも余裕で見えるほど大きいが、あれがどうしたんだい。

役人:実はですね、あの村にwww住んでる人がwwww(笑いをこらえてる感じで)

先輩:なんだい、そんなにおもろいやつなのかい

役人:はいwww魔王ですwwww

先輩:魔王!?魔王住んでるのあそこ!?

役人:いやでも浮いてるんですよwww

先輩:本当に浮いてるんだろ魔王は!そんなふざけた意味じゃないだろ!

役人:いやでも浮いてるんですもんwww城が

先輩:天空城かい!!とんでもない魔王がすぐ隣にいるじゃないか!

役人:どうです、面白いでしょ

先輩:この状況で笑ってるあんたが魔王だよ!ていうか、それとこの新人の何が関係あるってんだい。

役人:実はですね、魔王城が隣にできてしまった今、この村はもはや始まりの村ではありません。むしろ、勇者が決戦の直前に訪れる最後の村です。なので、これからこの防具屋では、世界中のどの防具屋よりも質の良い防具を作ってもらいます。そのため、成績優秀な彼を派遣した次第です。

先輩:そうか....そうか....

役人:この防具屋で作られた防具が魔王との戦いで使われることになります。ぜひ最強の防具を作ってください。それでは、失礼します。

(ガチャッ)

新人:先輩、聞きましたか。最強の防具ですよ!これから忙しくなりますよ!大学院で学んだことも復習しないと....

先輩:おい、新人。

新人:はい、なんでしょうか。

先輩:俺はもうだめかもしれない。

新人:なんでですか、これから二人で、最強の防具を作りましょうよ!

先輩:無理なんだ....俺はこの40年間、牛革一筋でやってきた。使った工具だって裁ちバサミぐらいしかねえ。そんな俺に、金属製の最強の防具は刺激が強すぎるんだ!

新人:何を言ってるんですか。とにかく、作り方は俺が教えますから。まずはそこでみててください。まずは、プラチナを取り出して....

先輩:ハアッ!!(電流が走ったような感じで)

新人:ダイヤとの二重構造にするか

先輩:ハアッ!!

新人:魔力のこめられたクリスタルも入れるか!

先輩:ハアアッ!おい!新人!新人!!

新人:何ですか先輩。さっきからうるさいですよ。

先輩:いっただろ。俺には刺激が強すぎる。このままだと興奮しすぎて、俺の自我が崩壊してしまうかもしれない....

新人:何をいってるんですか。いいから見ててください。まずこれを1000度の溶鉱炉で溶かします。

先輩:ハアッ!!

新人:頃合いを見て3000度に引き上げます。

先輩:アアッ!やめろ!牛革の切れ端を溶かすのに100度までしか上げたことがないのに、そんなに上げられたら....

新人:最後に10秒ほど10000度まで引き上げます。

先輩:ウワアアアア!!やめろ!俺の体力が溶けていく!!

新人:そしたらしばらく冷やして、ハンマーで形を整えていきます。

先輩:やめろ....ハンマーなんて、見てるだけで失神しそうなのに、そんなんで叩いたら....

カンッ(ハンマーでたたく音)

先輩:ハアッ!

カンッ

先輩:アアッ!

カンカンッ

先輩:アアア!!!クソ!防具屋なのに自分の自我すら守れない!!

新人:もうすぐ完成しますよ。

先輩:なあ新人、ここまでしなくても、魔王には勝てると思うぞ....

新人:何言ってるんですか。こんなの4番目ぐらいの村からやってますよ。じゃあ最後に、呪文を刻印していきますね。

先輩:....今なんて言った。

新人:いやだから、防具を強化する呪文を刻印するんですよ。

先輩:なんだお前....本当はお前が魔王じゃないのか。

新人:そんな訳ないでしょ。魔王を倒すために作ってるんですから。

先輩:いいや、こんな鬼畜の所業、魔王にしかできない!

新人:あの、大学1年で学ぶことですよこれ。とにかくいきますよ。防御魔法!

先輩:ハアッ!

新人:耐熱魔法!

先輩:ハアッ!!

新人:再生魔法!!

先輩:アアア!!!もういいやめろ!もう十分だ!

新人:最後に三連発!麻痺防御!呪い防御!呪文跳ね返しぃ!!

先輩:ウワアアアア!!もういい、お前はクビだ!こんなやつ雇ったのが間違いだった。

新人;なんでですか。先輩の教えを守って作りましたよ。

先輩:嘘つけ!あんなに魔法を刻印しおって!

新人;本当ですよ。まあでも一応確認しますか。レロレロレロレロ・・・

先輩:何やってるんだ!なんで作った防具を舐めてるんだよ!

新人:あーまずい!10族元素の味!

先輩:なんでわかるんだよ!そしてこれのどこが教えなんだよ!

<サゲ>

新人:言ったじゃないですか、素材の味を生かせって。この鎧、プラチナの味しかしないですよ。



最後まで読んでいただきありがとうございました。コメント等頂ければ幸いです。

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