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2:00 A.M.

 桜とは去年の夏、あの公園で出会った。

僕がトイレに行こうと公園に寄りかかったところに、蹲って足を手で押さえている女の子がいた。

それが桜だった。


「どうしたの?」

と声を掛けると

「滑り台で勢い余って地面に突っ込んで膝を擦りむいたんですよ」

桜はそう答えた。


僕は常日頃から持ち歩いている医療キットで桜の傷の処置をした。


僕が医療キットを持ち歩いていることに桜は引いていた。


その時、僕たちは家族旅行的な感じでこの町に来ていたから、なんか流れで家族に紹介することになり、そこからなんやかんやで桜は夏休み中僕たちの家に遊びに来ることになったりした。

それから家族ぐるみで僕たちは仲良くしている。


「おー。大分端折ったな」

狐酔酒は僕の話を聞いて、ちょっと不満そうにそう言った。

「しかも全然恋の気配がしないじゃんか」


「だから最初から色恋沙汰じゃないって言ったでしょ?」


「そうは言いつつも、やっぱ何かしら胸キュン要素があるだろうなって踏んでたんだが」


僕は肩をすくめてみせた。

「期待外れだったね。ごめんごめん。ってかみんなの方がそういう話ありそうだけどね。特に狐酔酒」


僕が探るように言うと、

「確かに確かに。狐酔酒君モテるもんね〜」

栗原も同調した。


狐酔酒はニヤリと笑って

「オレは秘密だ」

と答えた。


「えー。人の話聞いておいて。まぁ話したくないならいいけど」

「オレなんかよりむしろ妖風の方がよっぽど面白い話持ってそうじゃね? ほら、小野寺と」


妖風はブンブン首を振った。

「ないない。あいつはアタシのことからかってるだけよ」


「えー。でも好きな子にはちょっとイジワルしたくなるもんじゃん」

にやにやしながら追い詰めようとする狐酔酒に対して妖風は

「小学生の話でしょ、それ」

と言ってさらりと躱した。


「私には訊かないのかな~?」

栗原が僕や狐酔酒に拗ねたような口調で言った。


「んー。なんか栗原は未知数すぎて訊くのが怖い。恐ろしい答えが返ってきそう」

僕が素直に思ったことを言うと、栗原は噴き出した。


「なにそれ~。私ってそんなにミステリアスガール?」


「ミステリアスってより、オッドガールって感じだけど」

「オッドガールは言い過ぎじゃないですかい?」

栗原は、けらけら笑った。


「オッドってなんて意味だっけ?」

狐酔酒が訊いてくる。


栗原が楽しそうに答えた。

「奇妙な、風変わりな、とかそんな感じー」


「あー。確かに栗原はちょっと不思議な雰囲気あるよな」


「うん。彼氏が妖怪とか言っても驚かない」

僕が冗談めかして言うと、栗原は

「流石に妖怪と付き合ったことは無いな~。宇宙人の友達ならいるけど」

と答えた。


表情からはジョークなのかマジなのか読み取れなかった。

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